せっかく音源を出すならひとひねりあってもいい
──それだけ内容が盛りだくさんのカセット音源なので、ライブ会場限定販売にしておくのは惜しいですね。
猪股:一般の流通に乗らない音源を扱う店って言うか、地元のパンク・アイテムを売ってるような店にゆくゆくは置けたらいいなとは思うんですけどね。俺が高校生だった頃、地元の横須賀にバンドのデモテープが売ってる店があったんですよ。
高橋:「FAN」ね。チケットも売ってたな。
小石:服とか売ってたよね。何屋なのか分からなかったけど。
猪股:あと、横浜の「マウントポジション」とかね。ああいう個人経営っぽい地元の店でも売れればいいなと思ってるんですけど、その辺は未定です。
──聴くのに手間がかかるカセット音源をあえて出すことで楽曲を聴くことに集中させたり、限定販売がゆえにライブ会場まで足を運ばせたりするのは、五感をフル稼働させて自分たちの音楽と向き合って欲しいという狙いもありますか。
猪股:そこは意識してますね。せっかくCDじゃないものを作るんだったら、何かしらの付加価値を与えたいので。これを7インチで出しても良かったんだけど、俺はそんなに7インチに思い入れがないし、カセットのほうがしっくり来たんですよ。
小石:7インチで出しても、俺はどっちみち聴けないけど。
猪股:それはお前の話だろ(笑)。今はレコードを日常的に聴ける環境も整ってるし、SEVENTEEN AGAiNってバンドはカセットテープでシングルを出してましたからね。
星野:「I HATE SMOKE TAPES」っていうカセットテープのレーベルを立ち上げたんだよね。
猪股:そうそう。そうやってあえてカセットやソノシートで音源を出すバンドも増えてきてるし、その面白い流れが持続して広がっていけばいいなと思いますね。CDという媒体がちょっと古めかしいものになりつつあるし、音源を出すならひとひねりあってもいいんじゃないかって感じになってきてるんじゃないですかね。俺自身、こういうフォーマットで出したら面白いんじゃない? って発想だし、カセットテープの音源は好きなバンドなら自分も持っていたいですからね。7インチもカセットテープも、音を聴く楽しさ以外に所有感を満たしてくれるし。
──そんなカセットEPを引っ提げて東名阪のワンマンが開催されますが、東京でのライブは新宿ロフトを選んでいただいて。
猪股:ワンマン自体、今年の2月にシェルターでやったのが初めてだったんですよ。ワンマンって、打ち上げが寂しいじゃないですか。だから極力避けてきたんですけど、ちょっと頑張ってやってみようかと思って。
高橋:シェルターのワンマンは、ワンマンならではのミラクルが起こるかな? と思ってるうちに終わっちゃったので、個人的には消化不良なところがあったんですよ。だからロフトのワンマンでそのリベンジがしたいですね。
猪股:でも、ロフトは広いですからねぇ。大きさを半分にして欲しいくらいです。いっそのこと、バー・ステージでライブをやるとか(笑)。
高橋:メイン・ステージはどうするの?
小石:あっちは休憩室でいいじゃん(笑)。
──せっかく架空のラジオ・プログラムを音源化したことだし、バー・ステージをラジオ・コーナーにして、「じゃあここで1曲聴いていただきましょう」って紹介した後にメイン・ステージへ走って移動して演奏するみたいな進行はどうですか?(笑)
猪股:ああ、それは面白いかもしれない(笑)。
高橋:でも、それを1曲ごとにやるのはしんどいよ(笑)。
──ところで、今年は何気に結成10周年でしたけど、アニバーサリー的な催しは特になかったですよね。
猪股:10周年ではあるんですけど、メンバーも変わったし、パートも入れ替わったし、今の編成になったのは2009年の暮れなんですよ。作品で言えば『さよならティーンエイジ』(2010年6月発表)以降。バンドの名前は10年続いてますけど、最初と比べて中身は全然違うし、初期の曲も今のライブで全然やってないし、10周年と言われても他人事みたいなんですよ。
──じゃあ、あと5年経てば今の編成で10周年だから、その頃には多少、誇りが持てているかもしれないと?
猪股:俺は飽きやすい性格なんで、たいていのことは5年で飽きちゃうし、先のことは分かりませんね。その頃にまたパートが替わってるかもしれないし、バンドをやめて4MCのヒップホップ・ユニットになってるかもしれないし(笑)。