工場や巨大建造物が持つ力強さや、朽ちてゆく廃墟の怪しさ。地下空間が持つ非日常。そんなフェティシズムをそそる、甘美な写真の数々を収める写真家、小林哲朗。彼が主催するイベント『工場ディスカバリーナイト!! vol.2』が大好評につき、11月9日(日)にロフトプラスワン ウエストにて開催決定! イベント開催を前に、特殊な写真の世界を語ってもらった。(interview:松本尚紀/LOFT PLUSONE WEST)
ノウハウなし、保育士から写真家へ
──写真家になったきっかけから教えて下さい。
小林:僕は廃墟に興味を持ったのと、カメラを買った時期が一緒やったんです。小さいコンパクト・デジタルカメラを買って、廃墟を撮りに行ってて。気づいたらハマってましたね。その時はまだ保育士として働きながら写真を撮ってたんですけど、写真集を出したりもしてて。それがきっかけで、一回きりの人生やし、写真家としてやってみようと思いました。
──保育士をやりながら、写真集を出版してたんですね。子どもの頃からカメラや写真が好きだったのですか?
小林:それが全くなかったんです(笑)。保育士として働き出してからなんで、ノウハウとかがないまま独学でやってきました。趣味で写真を撮り出して、それをブログに掲載して、写真集を発売して今に至るという感じで、ステップアップしてきましたね。
──ロフトプラスワン ウエストでイベントをやるようになったきっかけは?
小林:僕とロフトプラスワン ウエストの店長の小林タクオ君は、高校の同級生なんです。タクオ君が僕の『廃墟ディスカバリー』という写真集をたまたま買ってくれてて。そこから小林哲朗とは誰だ!? となって名前を調べてくれて、そしたら僕が出てきて、あ!!! ってなったみたいです(笑)。それからFacebookで連絡をくれて、「ロフトプラスワン ウエストでイベントをやろうよ」って言ってくれたんです。
──凄い偶然ですね(笑)。
日常に潜む異世界
──8月にイベント『工場ディスカバリーナイト!!』をやってみてどうでしたか?
小林:凄く楽しかったです。
──3時間、1人で映像や写真も取り入れながら話をされていて、楽しい講義のような印象を受けました。
小林:そうですね。保育士をやってたから、人前で喋ることには慣れていたんです。普段はもう少しお堅い講演もやってるんですけど、ロフトプラスワン ウエストでは全部解放して、いろんなことを喋れましたね(笑)。
──カメラのレクチャーもされてましたね。
小林:撮り方は、みんなが疑問に思ってるところなんでね。
──工場見学ツアーもされてますよね。
小林:そうですね。関西が中心なんですけど、12月13日〜14日に、1泊2日で広島の大竹市へ行くツアーがあります。夜は写真を撮るんで、晩御飯なしですけどね(笑)。
──各自で済ませるんですね(笑)。なぜ、大竹市なんですか?
小林:大竹市は工場夜景を観光として推してるんです。だから写真を撮るスポットも、大勢で撮れる所が多くて、ツアーで行ったら絶対面白いなって思ってたんです。
──海外のスポットには興味がないんですか?
小林:海外は興味がないんです。
──どうしてですか?
小林:それは自分なりに自己分析したんですけど、僕は身近な異世界がどうやら好きなようで。日本の廃墟って僕らの生活の中にあって、生々しいんです。海外は、その土地だけで異世界なんですよ。だから僕らの生活から離れてて、廃墟や工場に生々しさがないんです。そういう生々しさと言うか、エロティックさがいいんです。
地方に潜む、廃墟天国!?
──写真を撮りに行って、まずいモノを見つけてしまったことはありますか?
小林:浮浪者が住んでた跡とかはありますね。とあるゴミ処理場に浮浪者が住んでたみたいで、焚き火の跡を見つけました(笑)。あとは床を踏み抜いたり、自分が行った廃墟から数ヶ月後に、白骨死体が見つかったりとかですね。
──怖いですね。撮影に行く場所はどうやって選ぶんですか?
小林:ネットで探すのが基本なんですけど。昔は車を走らせて、たまたま見つけた廃墟に飛び入りで入ったりもしてましたね。
──ご出身である尼崎のスポットはどうですか?
小林:尼崎には『南部再生』というフリーペーパーがあって、そこで「尼崎ディスカバリー」という連載をしてるんですけど。尼崎の変わった所とか風景を掲載してて、やっぱり尼崎は、掘り出せばたくさんありますね。
──今回、出版された『工場ディスカバリーZ』は前回の『工場ディスカバリー』と違う点などがありますか?
小林:『工場ディスカバリー』は西日本で撮った写真が中心なんですけど、今回の『工場ディスカバリーZ』は日本全国の写真を掲載してます。廃墟はやっぱり人が多い地域より、地方に多いんですよ。
──おすすめの地域はありますか?
小林:岡山県は廃墟天国ですね。工場もあって、熱いですよ!!
11・9お宝満載! ファン必見の夜!
──11月9日のイベントに関して、聞かせて下さい。
小林:工場や廃墟に加えて、地下空間も多く見せたいと思ってます。大阪の寝屋川市という所は、洪水が多い地域なんです。だからその洪水を防ぐために、地下に河があって、雨水を溜めるための巨大なタンクもたくさんあるんですよ。僕は何回か写真を撮ってるんですけど、大阪の人はあまり知らないし。地元の人ですら知らないので、そういうのを知ってもらえたらなと思いますね。
──地下にあり得ない異世界が広がってるんですね。
小林:コンクリート・ジャングルがドン! とあります。地下鉄も、昔の駅がそのまま残ってたりしてて。あとは閉演した遊園地とかもいいですよ。奈良ドリームランドや宝塚ファミリーランドなど、関西は宝庫ですね。
──イベントを一緒にやりたい方はいますか?
小林:小島健一さんですね。東京のロフトプラスワンでもイベントをやってる方で、僕に「工場を撮ってみたら?」と言ってくれた方なんですけど。僕が『廃墟ディスカバリー』っていうブログを始めた頃は、まだ廃墟でブログを出してる人があまりいなかったんです。そんな中、小島さんが廃墟のブログを匿名でやってて。写真集を出してたり、いろいろと共通点があったので、僕と一緒にいろんな廃墟を回ったりしてたんです。だから、小島さんと一緒にイベントをしたいですね。