前作『froM』をリリースしてから1年3ヶ月振りの新作『バトルズ』。精力的にライブハウスやフェス等でライブを着実に重ねていく中、葛藤や壁にぶつかりながらも新たな一面を引き出し、リスナーとの距離をよりグッと縮めたようだ。
世代や性別を超え、明日への活力と繋ぐ応援ソング『MAKEINU SONG』を含む新作は、とてもエネルギッシュな作品だ。新たな武器を備えたTHE NAMPA BOYSに新作とライブについて話を訊いた。（interview：やまだともこ＋構成：樋口寛子／新宿ロフト）
自分との戦いもあったし、バンドメンバーとの戦いもあったし、ライブハウスに対してもありました
── 『バトルズ』をリリースして、お客さんの反応はどうでしたか？
小林聡里(Vo&G)：Twitter等で良い反応があったり、バージョンアップしたねと言ってもらえたりして嬉しいです。
── 前作のリリースから1年以上が経ちましたが、その間にはまわりのバンドが音源を精力的にリリースしたり、わかりやすく人気になっているバンドを見かけて焦りなどはなかったですか？
小林：焦りよりも自分に対して、もう少し出来たらなと感じていました。「今日のライブはしっかりやろう！」と言い聞かせて着実に積み重ねて。悔しいなとは思ったけど言っても仕方がないので、流れに身を任せるのではなく自分を見失わないように「かっこいい事をやっていこう！」と。ライブを見ると着実に人気が出てきているバンドは、やはり理由があるのでそれは真摯に受け止めて。でも最近は、自分達のライブも盛り上がって来ていると感じますね。それにTHE NAMPA BOYSは、着実に自分達の力で盛り上がってレベルアップをしていく方が良いなと思っています。
── となると、今回の新譜のタイトルは『バトルズ』とありますが、自分との戦いという意味も含まれていますか？
小林：まずはそこから始まりました。前作の焼きましになるような作品を出す事はないなと思って。その状態でリリースして「良いバンドだね」と終わってしまう事が嫌で。CDを出す事によってちゃんと意味を持たせていきたいなと思っています。そうして今の状況を何とかして打ち破りたいと思っている中、『MAKEINU SONG』が出来ました。ずっと自分達のクールな面を見せる事がかっこいいと思っていたけど、みんなが望んでいる事はそういった部分じゃなく、自分達のダサイ所やかっこ悪い所を全部さらけ出したら、その先に何かあるのではと思いました。そこでまず自分を「負け犬」と呼ぼうと。自分との戦いもあったし、バンドメンバーとの戦いもあったし、ライブハウスに対してもありました。
自分の曲を一緒に楽しんで欲しいと自然に思えた
── バンドを組んでからそれなりの年数は経っているけど、なぜ今の時点で「負け犬」と名乗ってしまうのですか？
小林：やっぱり悔しかったんだと思います（笑）。目に見える分かりやすい結果が出せなかったり、しっかりしたライブが出来なかったり。今まではそれを認めたくなかったけど、それを認めて初めて先が見えるのかなって。この曲が出来た事で、自分の曲を一緒に楽しんで欲しいと自然に思えたので、それが先に繋がったのかなと思います。
── 今までモヤモヤしていたものが吹っ切れて、良いきっかけでもあり転機となりえる曲ですよね。
小林：曲に対しての向き合い方は前作と違いました。出来る事も随分と増えてきたし。前は自分ひとりで抱え込んでいた部分も、バンドでどうやるかを考えるようになっていて、バンドらしい1枚になったと思います。
田中悠貴（Ba）：個人的には焦りもありましが、聡里自身がヤル気になっていたので良かったです。
澤柳昌孝（Gt）：最終的に聴く人の為に何をするかをやっと考えられるようになった感じですかね。
小林：前作は自分達がかっこいいと思うものを突き詰めて「THE NAMPA BOYSはこんなバンドです」と提示していたのですが、他のバンドを見に来たお客さんが自分達のライブを見てくれた時に、歌が伝わっていないという現実にぶつかって。その時に本音を隠して、それとなく歌う自分の美学が崩れたんです。ライブバンドとしてTHE NAMPA BOYSが１つ進んでいく為にもとても大事な歌になりました。見せ方も変わっていきましたし、良いきっかけではありました。
── かっこつけたい年齢なのに、そこを振りきった事はバンドの強みですよね。でも、今までライブで演奏してきた曲だからこそ、ライブに来てくれたお客さんと一緒に作った曲の様にも感じます。
小林：自分が自信を持って歌わなければいけないなと思いました。お客さんと一緒に作ったというのはありますね。
── また、最後に収録されている『Forward』は、以前ライブで歌っていた時とは一部歌詞が変ったと聞いたのですが、元々はどんなイメージで作った曲なのですか？
小林：愛しい人がいて、力が無いかもしれないけど、それでも前を向いて歩いていくという歌ですね。凄くメロが良かったので、あんまりきつく言いたくないなというのがあって（笑）。しっかり手をとって歩いていくラブソングとして捉えたいなというのがあったんです。
── そこからもうちょっと地に足を付けて歌いたかった感じですか？
小林：出来た時は「良い曲出来たな」と思ったけど、お客さんに対してこの表現は伝わるのかな？ と考えながら作っていったので、言葉を変える事に勇気がいりましたが、それが広がって行く事なのかなって。
── この曲は、前作を作っていた時には出来ていた曲なんですか？
小林：はい。自分達が１番良いなという時期に入れたくて。まだかな？ と思いましたけど、自分が悩んでいる時でも『Forward』という曲があるから大丈夫って言えるなと思えるぐらい、戦いに寄り添ってくれた曲なので収録することにしたんです。
THE NAMPA BOYSの新たなカラーが見えた
── 今回『MAKEINU SONG』では、いしわたり淳治さんが歌詞プロデュースとして参加されていますね。いしわたりさんから言われて、印象に残っている言葉はありましたか？
小林：完全に自分が笑われていることをわかりやすく表現するには、自分の経験とはちょっとニュアンスが変わったとしても、伝わりやすい言葉を選んだほうが良いとおっしゃってました。ストレートに歌うというのは、自分が経験した事をただ歌うのではなくて、それをストーリーとしてしっかり伝わりやすく歌うのが良いんだと。それは自分の中でセンセーショナルな事でした。
── 歌詞のやりとりで聞いた話を受けて、今後生まれてくる言葉も変わりそうですね。
小林：そこは頑張らないといけない部分ですね。THE NAMPA BOYSの歌詞が良くなったねと言ってもらいたいし。次なる課題ですね。
後藤 駿（Dr）：いしわたりさんとメンバー全員で歌詞の話をした時に、今まで聡里が隠していた本心の部分をそのまま歌ってみても良いのではないかとなった後に出来上がった曲はとても入りやすかったんです。わかりやすい歌詞が出てきて、THE NAMPA BOYSの新たなカラーとして見えて良かったです。
小林：言葉の使い方ひとつで聴いてる人に曲を染み渡らせることが出来るなら、それは歌詞を書く人がやらねばならないなって改めて思いましたね。
── では、新譜のタイトルが『バトルズ』なので、皆さんがそれぞれ戦っているものを教えてください。
後藤：演奏時間やスタジオの時間も増えてきたので、体力と集中力を日々鍛えています。
小林：僕は大学です。単位を取る戦いです（笑）。それぞれ戦っているものってあると思いますけど、THE NAMPA BOYSを聞いて「頑張ろう！」と、生活の糧になってくれたら1番嬉しいですね。自分が魅了された音楽に憧れてずっと音楽をやっていたから、生活の中に僕らの音楽があったら楽しいよというのを伝えていきたいです。
上京してからの目標の1つがロフトでワンマンをすること
── 12月18日に控えているロフト公演に関してお伺いしたいのですが、どんなライブにしたいですか？
澤柳：上京してからの目標の1つに、ロフトでワンマンをすると言っていましたから。
小林：ずっとロフトでワンマンがやりたいと言いながら4〜5年が経ちました。楽しみ8割、ちょっと頑張らなきゃなが2割（笑）。THE NAMPA BOYSを見るためだけにロフトに人が集まる光景を想像すると、鳥肌がたってしまいますね。
── 皆さんの世代では、少しずつ会場を大きくしてステップアップしていく様は最近は珍しく感じます。動員が全然なかった事を思うとロフトでワンマンを飾る事は夢があっていいですね。
小林：初めて出演した時は動員3人でしたからね（笑）。3人のうち身内が2人とか。
── ロフトでのワンマン以降のビジョンはイメージしていますか？
小林：早いスパンでもう1枚出せたらなと思います。それと『バトルズ』で形が出来た所を踏まえてさらに新しい所を見せていけたらなって。来年の年末には大きな場所でライブが出来るように、着実にステップアップしていきたいですね。
