横浜を代表するバンドの1つに成長したNUBOが、3枚目となるフルアルバム『Human hymns』をリリース。Tommy(Vo)とWakai(Gt)に、このアルバムについてや、41本にも及ぶツアーについて、旧知の仲であるSHELTER店長が訊いた。(interview:義村 智秋/下北沢SHELTER店長/構成:平野 風)
リリースツアー
── いつもツアーは地元のF.A.D始まりという流れが多い中でSHELTERをツアー初日に選んでくれたというのは…やっぱり自分がいたからですか(笑)?
Wakai(Gt):まあ…それ以外の理由が思い当たらない…ですね(笑)。
Tommy(Vo):あまり深い意図とか理由はなくてですね、F.A.Dからスタートするという流れを少し変えたツアーにしてみたかったんですよ。ファイナルも東京ですし。
Wakai:地元が横浜というのでずっとやってきたし、これからもここでやっていくんだろうけど、初日を横浜でしか味わえないというのもなぁと。あと、SHELTERが好きなんで(笑)。
── ではリリースツアーなので、ニューアルバム『Human hymns』のことについて聞かせてもらいます。『Human hymns』というタイトルが初めにあってこのアルバムは作られたのですか?
Tommy:いや、タイトルは全部録ってからですね。昔からWakaiが曲を聴いてくれるお客さんやライブに遊びに来てくれる人を肯定してあげられるような音楽をやりたいと言っていて、僕の頭の中には常にそれが残っていたんです。ズバリこのタイトルというのをつけるのはいつも難しいですが、今回は人を讃えてあげられる歌をたくさん作れたんじゃないかなぁと思って。そのイメージから「人間賛歌」っていう言葉を考え付いてそれを英語にしたんです。これはメンバーからも支持されましたね。
── 聴いてて凄くしっくりくるタイトルだなと思っていました。「もっと頑張ろう」とか「限界まで」とかではなくて「そのままでいいんだよ」というような今の自分を肯定してくれる気がして凄く励みになりましたよ。
ニューアルバム『Human hymns』
── 基本的に曲と詞はどっちから作るんですか?
Tommy:9割8分は曲から作るのですが、シングルにも入っていた『風の伜』という曲は歌詞から作りました。作ったのは俺じゃなくてサブ(Drums)だけど(笑)。
── ちょっと攻撃的で侠気ある曲ですよね?
Wakai:歌詞から作ることは前からやりたくて、最終的に音源化させたのはこの1曲なんですけど、ちょっとずつ自分たちの中で変わってきている傾向の一つですね。
── Wakaiさんは作曲のジャンルというかアレンジの幅が広いですよね?
Wakai:ミクスチャー世代だからですかね。比較的ジャンルとかに捉われない考え方を持っているバンドなんだと思います。あとはもちろんバンドが好きなんだけど、映画が好きだったり他にも色々なことに興味を持っていて多方向に広がってきているのかもしれないです。だからこそ自分たちが今どういうことが出来るか知りたいし、やってみようという気持ちの表れなんだと思います。曲を作る上ではツアーだったり、お客さんと話している中でインスピレーションをもらって作ったりしているので。
── 自然とコールアンドレスポンスしてってことですね。でもそれが出来てるのがNUBOだと思ってますよ。
Tommy:まとめてくるね(笑)!
── 歌詞についてですが、3rdミニアルバム(『Paint Box』)のリリースは震災があった直前でしたが、その次にリリースした『Warmth』を経てTommyさんが描く歌詞にも変化があったりしましたか?
Tommy:歌詞を描く人にとって、震災のことは無意識にでも頭の中に入ってきていることだと思っています。特に最近では前よりも東北に行く機会が増えて、そこに対しての想いが自然と歌詞に出てくるようになりましたね。今回のアルバムではサブが歌詞を描いてくれた『三陸へ』と『風の伜』は原発についてを謳った曲で、サブはそれを描きたい人間だし、自分はそれが自然と出てくる方だったんです。『Warmth』のツアーが終わったあたりで僕の中でバンドが白紙になったというか、バンドをどうしたらいいんだろうと思った時期があって、それを正直にメンバーと話した時に「一番大事なのは5人で続けていくことだよね」って再確認した時期でもありました。その経験から開き直ったところもあり、ライブでも、描く歌詞でも「もっと人のことを信じていい、メンバーもバンドも、好きって正直に言っていい」という感じで強がらなくなって、「無理やりのポジティブ」ではなくなったと思っています。
── そういうところは『ナイモノバカリ』(M-4)という曲でもよく伝わってきます。ところで、前回のアルバムの『Blisters on my foot』(靴ずれ)や今回のアルバムの『Scabs of ONE』(かさぶた)もそうですけど、他の人があまり歌詞にしないような言葉を使うことが多いですよね。
Tommy:多分足回りが好きなんでしょうね(笑)。『Scabs of ONE』は一成が出してきた表現で凄く彼らしいし、僕ららしくもあり、他の人はまず「かさぶた」のことは歌詞にしないだろうと(笑)。でも、そういうしみったれた部分が、僕がこのバンドを凄く好きな理由の一つですね。
── 人間味のある部分が出てきていますよね。
Tommy:四畳半感が凄く出てますよね(笑)。
── 今回のお薦めの曲とか聞きどころってありますか?
Tommy:あまりそういうことを考えていませんでしたが、僕は『セーフティードライバー』(M-10)が歌詞としては一番しっくりきた感じがしますね。ツアーの移動中に思いついて書き始めたんですが、僕らのこれからとかこうありたいという想いが募っています。
Wakai:俺も一番好きな曲かもしれないです。歌詞と曲の絡み方が一番相性が良い気がして好きですね。
── 今回のCDのジャケットも『セーフティードライバー』という曲を意識してるんですか?
Tommy:そういうニュアンスも含みもありますが、この間ようやく役目を果たした2代目NUBO号の傷など割とリアルに再現してもらった俺らから見るとまさにそのものなんですね。
Wakai:自分らの活動の象徴というか。これはサブのアイデアなんです。
Tommy:今の自分たちを写真と同じで閉じ込めておけるそのものだと思ったので、その時に1番愛着のあるもの。機材車ってツアーバンドのことを象徴してるアイテムの一つだと思うんです。そこで寝泊まりする人や全てが詰まっている部分もあるから凄く良いアイデアだと。
半年かけてのツアー
── ツアーの話に戻りますが、相変わらず41本ものライブが盛り込まれていますね。
Tommy:まあ、良く見ると来年の3月まであるので半年かけてですね。
Wakai:前に比べれば全然。
Tommy:この本数を3か月くらいでやってたからね(笑)。やっぱり時間をかけても行きたい場所には行きたいなというのは強くあったので。やりたいことをやりたいバランスで考えたらこうなりました。
── 主要都市だけで回るやり方もある中で、細かいところも回るNUBOの意図も感じます。
Wakai:改めて考えると、やはり一度行って好きになった場所はもう一度行きたくなるし、それが増えるとおのずと本数は増えていくし。まだCDを出す前からライブをやっている小さなライブハウスでは今も行くし、今でもそれをやっている。数は減るかもしれないけれど、そこに行かないというのは違うというか、活動の拠点だと思っているんです。
Tommy:そこで教えてもらって学んだこともとても多かったし、人との繋がりは増えていますし、僕たちがお世話になった人に会いに行くにはライブをするという方法しかなくて、行かなくなるとその人たちに会えなくなっちゃうんですよね。それを無くそうとはこれからもきっと思わないと思うんです。
地元に対しての愛着
── シェルターでの対バンはUNLIMITSですね。わりと地元の繋がりのバンドを大切にしている感じが伝わってくるのですが。
Tommy:UNLIMITSはイベントで顔を合わせることは多かったのですが、凄く仲が良いわりにはガッツリした対バンは少なくて。何年か前に、UNLIMITSのツアー初日に2マンで呼んでもらったことあって、自分たちの初日にはそれをやりたいと思っていました。
── 今回のツアーに対しての目標はありますか?
Wakai:自分たちがやっている期間も長いですし、行って帰ってくるだけにならないように今回作った音源を元に自分たちも一緒に成長して行けるようなツアーをしたいです。たくさんの人に出会いながらそれを続けていきたいです。単純にライブハウスでもワイワイしたいですね!
── それではルーフトップの読者にメッセージをお願いします。
Wakai:ルーフトップ然りですけど、フリーペーパーはバンドマンのちょっとした癒しなんで、そういう気持ちが他の人にも伝わってくれれば嬉しいですね。
Tommy:ルーフトップは基本全面カラーでうれしいです。ありがとうございます!
Wakai:それ、編集部に向けてでしょ(笑)!!
── それじゃ、横浜の魅力について最後に語ってもらいましょう。
Tommy:ラーメン(笑)? いや、バンドですね。僕は横浜のバンドを誇りに思ってます。
── 打ち上げがラーメンで終わるってのがいいですね。
Wakai:あれ食わないと終わった感じがしないんですよね(笑)。
── ラーメン屋が閉まるから打ち上げもスパッと終わってね。
Tommy:もう閉店だから行かなきゃって誰かが言い出すのを待つという。そんな感じでツアーもがんばります!