映画業界とHIPHOP
── まずはHIPHOP映画と一言で言ってもいろいろあると思うんですが、どんなものがあるんですか? というところについてお聞きします。
K:HIPHOP映画は大きく分けて今回の『アート・オブ・ラップ』のようなドキュメンタリータイプと、劇映画、ギャングスタータイプのものがあって。『110番街交差点』とか『フォクシー・ブラウン』とかのブラックスプロイテーションっていう流れが70年代にあって、映画業界はHIPHOPを第二次ブラックスプロイテーション的な流れで考えていたんだと思う。
──最初に観たHIPHOP映画は?
K:『クラッシュグルーブ』。RUN DMCとBeastie BoysとFat Boysがメインのアーティストでラッセル・シモンズ恋物語みたいなのがサブストーリー。「詩がイイ!」とイチャイチャしたりとかする内容(笑)。その後ちょっとさかのぼって『ビートストリート』は観てたのかなぁ。んー、でもあんまり頭に入ってなかった。『ワイルドスタイル』はその後。それからビデオで、コメディでクリス・ロック主演の『CB4』。いわゆる【スタジオ・ギャングスター】って言われる、スタジオではギャングだけど実際はギャングじゃないようなラッパーもいっぱいいたんで、それを揶揄するような映画だった。あとは『カラーズ 天使の消えた街』っていうL.Aのいわゆるカラーギャングについての映画でショーン・ペンとロバート・デュヴァルが出てて、アイス-Tは出演はしてないんだけどサントラで参加してた。アメリカって常に「今こんなことが起きてるよ」という紹介をするじゃん? スケボー、ダイビング、ドラムラインとかちょっとしたサブカルチャーをひとつの映画にするから。多分その一環としてHIPHOP映画をやったら意外に外国で売れるし、国内でもニューヨークだけじゃねぇんだっていう反応があってどんどん投資するようになったんじゃないかな。サントラも売れるし。
——同時期に先ほどの『カラーズ 〜』のようなギャング文化が良くも悪くもすごく広がっていって、社会現象化していったと。
K:あとそういう基盤を使ってHIPHOP映画を作りやすくなった理由としては、エディ・マーフィーの大ブレイク。黒人のスラングを使った汚い言葉がウケるっていうのがみんな面白いんじゃないかなって。金になるって思ったんじゃない?
——いわゆるお調子黒人って感じですか。『48時間』、『ビバリーヒルズコップ』とか。
K:そうそう(笑)。『ブーメラン』とかもあったよね? あとはサントラを売るために黒人映画を一個作って、合わせて映画の挿入歌として全体的に売るみたいな。90年代の中盤からそういうのが増えてきた。最近はHIPHOP映画っていうよりも黒人映画になっちゃって、HIPHOPだけを餌にしなくてもみんな黒人の生活においてのテーマを映画から探すようになったんじゃないかな。で、サントラとか役者にラッパーが入ってくる。大作にも色々出ているよね。『アメリカン・ギャングスター』にコモンとT.I.が出ていたりね。
——それくらい馴染んだと。
K:ラップはもうメインストリームでPOPミュージックの一つですよ。40年代、50年代がジャズとかがメインストリームだったように、今はHIPHOPがメインストリームだね。
——『8マイル』も大ヒットしましたね。
K:結局エミネムは白人だからっていうところも強いけどね。エミネムはスウェーデンとかポーランドとかでも売れちゃうから。そういうところはImmortal Techniqueとか誰も知らないと思うんだよね。ヨルダンのHIPHOPとか聞いても2pac、Biggie以降。その前のRUN DMCとオールド・スクールとかについて聞いてみても全然ピンと来てない。DJ PremierがGuruがって言ってもピンと来てない。2pac、Dr.Dreとかその辺には反応するけどね。それはやっぱりアメリカの中でPOPカルチャーになって以降のものなんだよ。
表現方法として誰でも自分たちの言語さえ持ってれば、有効に使えるって言うことが大事なんじゃないかな。歌と一緒だったり踊るのと一緒で、ラップっていうのは全く新しいものじゃないから。
——一般の映画とHIPHOP映画は観方が違いますか?
K:別物として思ってるかもなぁ。さすがにスパイク・リーがデンゼル・ワシントンでやってるような映画と、アイス・キューブが主演の映画はやっぱりちょっと感覚的に分けて観てるね。デンゼル・ワシントンはオスカー俳優だからね。お芝居を見てなんぼだから。映画はストーリーとかアクションとかよりも俳優の演技力や存在感を見る。演技力のすごさに心を打たれる事が多いね。もちろん、ストーリーや脚本がしっかりしてるからだろうけど。
——アーティストのステージアクトと劇映画の役者のアクトは違う?
K:ステージも舞台の上だから。舞台の上で感情移入して全く違う自分を表現するっていう意味では意外に近いと思う。
——今回の『アート・オブ・ラップ』の監督で、役者として映画の仕事をしているアイス-Tは本業のステージアクトでも演技的な部分もあった?
K:まぁ、常に強面に見せるっていうはやっぱりある種、演技的だよ。下ネタ大好きだけどナメた奴はぶっ殺すってところはある意味、芝居がかってるじゃん。芝居やっててもラップやってても他の事やってても、個性が強いから。ハリウッドはそういう存在感の強い人を使いたい。 あとは肌の色が薄いっていうのも関係あると思う。色が薄くてLAに住んでたっていうのがハリウッドで使われやすかった理由のひとつだと思うな。おじいちゃんがドイツ系?だったかな。ただアメリカではさ、ちょっとでも黒人の血が入ってる時点で「ニガ」だからね。でもアメリカの人種分布はもう白人なんて56%ぐらいで後40何%はマイノリティだから。それも2016年には入れ替わるって言われてる。だから「歩み寄んないと俺らやばい事になっちゃうよ、いびられちゃうよ」とか思って歩み寄ってる白人もいっぱいいるんじゃん?
『アート・オブ・ラップ』
——今回の『アート・オブ・ラップ』に登場する47人の中でこの人のここを見てくれっていうところは?
K:ラキムの発言。楽譜みたいなものをイメージしながら自分で歌詞をはめていったっていう部分。いわゆるジャズでいうリズムセクションの中で鳴ってるソロのトランペットみたいなものをイメージして作ったらしい。クインシー・ジョーンズが後々「HIPHOPは現代のビーバップだ」って全く同じ事を言ってた。ラキムは、ラッパーとして俺が崇拝している師匠の中の師匠だと思っているからね。アイス-Tが「普通の奴だったら話を聞いてもよくわかんないや」って最後に言ってたくらい複雑な事をHIPHOPに込めようとしてたんだ。
——最後のスタッフロールが○◯○(※1)から始まるのにはグッときました。
K:HIPHOPっていうのは、ある系譜をみんなで広げて来た音楽で、自分たちだけがやっているものじゃなくてひとつの文化であって伝統があって、先駆者たちをリスペクトするっていうのが実は一番重要だったんじゃないかな。
(劇中で)ダグ・E・フレッシュがMC3人のリリックを全部暗唱して、それを『もうヤバイよね!』って。先駆者をリスペクトしてそれに自分に何が加えられるか、この歴史に自分がどんなページを加えられるかっていうのをやってきてる。もっと職人的な技術論を聞いてもらいたかった。
——これは良かったっていう最近の一般映画は何かありました?
K:『ライフオブパイ』かな。あと月並だけど『レ・ミゼラブル』も。基本的に俺は「革命」っていう概念が何よりも好きだから、自由を手に入れるために民衆が戦うものには、もうガードが下がっちゃうんだよね。
観に行ったときは両隣がリピーターの女性の割と年配の人で、ここだっていう手前ぐらいの所から、ハンカチを目に当て始めてて超盛り上がってた。
——『アート・オブ・ラップ』も劇場のお客さんが面白そうですよね。
K:音、結構すごいよね。デカイし。HIPHOP好きな奴は観ながら首を揺らしていると思う。まさにHIPHOPを好きで、やってる人とか言葉を使う仕事の人にはすごいタメになる映画。
——今回のイベントはHIPHOP映画の近代史というテーマですが、Kダブさんにとって、HIPHOP映画の定義は?
K:スラングのパーセンテージかな(笑)。
——『スカーフェイス』はHIPHOP映画だっていう人もいますしね。
K:ただねぇ、俺も人づてに聞いた話で全く納得いってないんだけど『華麗なるギャツビー』ってあるでしょ? 挿入歌がジェイ・Zでカニエ・ウェストが入ってるんだって! 時代考証とか考えてくれよって。原作がアメリカのフィッツジェラルドっていうヘミングウェイみたいな人だからさ。
——今回のイベントで共演される翻訳の桑原あつしさんは「ラッパーが関係していたらもうHIPHOP映画だ」って言っていたんで、『華麗なるギャツビー』もHIPHOP映画だっていう括りみたいですよ。
K:要するにハッスルの瞬間でしょ(笑)。白人も黒人もアジア人もメキシカンもHIPHOP精神に溢れているんだよ。でも最近はグラミー賞とかではカントリーを盛り上げてきてるよね。なくなっちゃ困るんだよね。
——なるほど、保護の観点から(笑)。
K:でもテイラー・スウィフトなんて全然カントリーじゃないじゃん。昔別れた男ともう付き合わないわ、なんて。TLCみたいだよね。
ロフト系トークライブとの交差
——ロフト系列のトークライブに一番最初に出て頂いたのが「第三会議室」の公開収録で2006年…。
K:その前に「TVの国からキラキラ…」かなんかに出たかも。
——あっその前にも出ていただいていたんですね。その後『斬る!K DUB SHINE_自主規制なし2012_』では制服向上委員会とマキタ・スポーツさんと共演されていまして、『斬る!K DUB SHINE_Vol.2』で、BentheAceさんと、フィフィさん、若野さんと。
K:ちょっと収集つかなかったね。
——その後も杉作さんと吉田豪さんのイベントに出てもらったり本当に色々出て頂いてて。
K:豪ちゃんがところどころで呼んでくれるんだよ。あとロフトプラスワンから今度、論客を集めて俺にやらしたいって言ってくれてるから、期待に応えたいなあとは思っているけどね。
——Kダブさんは時事的な、政治的なお話もされたりしていますよね。
K:外交オタクなんですよ。領土問題だったりとか冷戦の時から米ソの対立を追っかけてる。最近の外務官僚のシャラップみたいな発言とか、その程度の英語力でいいんなら俺にその仕事やらせろよって思うからね。俺の方がうまく監修するよ(笑)。
——出馬ですか!?
K:それはないよ。法令遵守の精神はない。いざ表に出たらすごい昔の犯罪歴とか出てきちゃうから無理。叩けば埃どころか竜巻が出る。オクラホマ級の竜巻(笑)。岩上安身さんとか上杉隆さんとか一水会の木村三浩さんとか宮台真司さんなら友達付き合いが少し出来ているから何かやれるかなと。
——今上げて下さった方々はコメンテーターの仕事をしてらっしゃいますが、そういうスタンスでメディアに出演する事はありえますか?
K:ラッパーとして、一応社会派として世の中に暴言を吐き続けている人っていう紹介のされ方なら問題ないけど、社会派=清廉潔白みたいな部分はゼロだから扱いに困るんだろうね。だから宇多丸の方に全部、話がいっちゃう。行儀良さそうだし、ギャラクシー賞とってるから。
──(笑)。最後に、ロフト系トークライブハウスの印象って何かありますか?
K:ギャラが安い。
── 何も言えないですね(笑)。今日はありがとうございました!
※1ネタバレになるので伏せました。ぜひ劇場でお確かめ下さい!!
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ゼロから全てを創造する—
ヒップホップシーンのトップラッパー達や伝説的な創始者まで、世界的に活躍する47人のアーティストから語られる“What is HIPHOP?”音楽シーンで一大センセーションを巻き起こした話題作がついに登場!
監督:アイス-T
出演:エミネム、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、カニエ・ウェスト、Run DMC、ナズ他
2012年/アメリカ/112分/ビスタ/5.1ch/原題:Something from Nothing: The Art of Rap
配給:角川書店 2012 (c) The Art Of Rap Films Ltd
公式HP:kadokawa-sound.jp/art-of-rap
7月27日(土)よりシネマライズ他にてロードショー















