
男性向けAVしかなかった昨今、最近では女性向けAVが話題に。
今回はその女性向けAVの仕掛け人と言っても過言ではない、SILK LABO(女性向けAVメーカー)プロデューサーのマキノエリさんにインタビューを決行! SILK LABOの誕生秘話や撮影の裏話などあらゆる角度から斬り込んでみた!! 今月11日(土)にはエロメンたちによるロフトプラスワンでのイベントも決定し、勢いは留まることを知らない!!!(interview:小林タクオ/ロフトプラスワン)
AV業界に携わるようになるまで
──マキノさんがこの仕事をやろうと思ったきっかけって何だったんですか?
「もともと映像関係の学校に通っていて、フジテレビの月9が好きだったんですよ(笑)。『東京ラブストーリー』の名シーンを友達とマネして遊んだりとか、くだらないことばかりしていて。で、就活の時期になって、テレビの制作会社とかを見て回ったんですけど、あまりの賃金の安さに“これはやっていけないな”と思ってウダウダしていたんです。そんな頃にたまたまソフト・オン・デマンドのサイトを興味本位で見てみたんですよ。そしたら新卒採用募集中っていうバナーがあって、どうやら説明会があるらしいと。AV会社の説明会って、男の人が全裸で運ばれてきて、担当者が大事な所を指さしながら『さて、これは何という部分でしょう?』って訊くのかな? って思ったんですよ(笑)。それを期待して、将来のネタ作りと言うか、自分の芸の肥やしじゃないですけど、説明会に行ってみることにしたんです。そしたら思いのほかすごくマジメで、会社の偉い人もけっこう堅い感じで、すごいスケベなことを大真面目に話していたんですよ。そのギャップが面白かったんですね。あと、その時お土産にお米をくれたんです。当時、高橋がなりさんがAVを引退して農業に移行している時期だったので、がなりさんが育てた米を新卒に配っていたんですね。それを見て、“この会社に入ったら食うに困らないな”と思って(笑)。それがそもそものきっかけです。もともとスケベなものはキライじゃなかったし、興味もあったので」
──それまでAVをご覧になったことは?
「彼氏がAVを見るじゃないですか。それが悔しかったんですよ、だいたいみんな巨乳だから(笑)。その彼氏が若菜瀬奈さんっていう女優をすごく推してたんですよね。97年ぐらいの東スポAV女優大賞を受賞した女優さんなんですけど、彼女の作品で『人間廃業』シリーズっていうけっこうエグイのがあって。最初は気持ち悪いなと思いつつ彼氏に言われるがままに見たんですけど、見てるうちに感動しちゃったんですね。とにかく回数も多ければすごい行為もいっぱいあるんですけど、すごいけなげに頑張ってるんですよ。それを見て、“この子いい子だな”って純粋に思って(笑)。そういうのもあって、AVに対してあまり変なイメージがなかったんですよ」
──SILK LABOの作品にも、さっき言ってた月9の要素が盛り込まれてますよね。
「はい、完全に月9を意識してます」
──月9的なストーリーの中に本番がちょっと長めに入っている感じですもんね。女性目線のAVを作ろうと思ったきっかけっていうのは?
「入社して1年ぐらい経ってからですね。最初私はADで入って、ナンパ隊だったんです。でもそこで一度挫折があって、宣伝部に移動したんですよ。その頃に女性だけでやってるアダルト・グッズの店とか外部の接触が増えて、店の方と会っていろいろと話をすると、女性でもけっこうAVを買ってるんですね。ただ、すごいクレームが多いんです。『なんで顔に掛けるんだ?』とか『男優さんにもっとまともなのはいないのか?』とか。自分も日々AVを制作している上で疑問に思うことがたくさんあったんですよ。パフォーマンスみたいな強引な行為をしなくたってこっちは気持ち良くなれるし、一般男性がAVのマネをしたところで、それは女性の側からするとかなり迷惑な話で。そういう不満が女性にはいっぱいあるし、その辺を踏まえて女性目線のAVを作ったら面白いんじゃないですか? と社長に話したら、『おお、いいじゃん、いいじゃん。500万やるから好きなように作れよ』って唐突に言われたんです。いきなりそんなこと言われても、当時の私はADと宣伝部の経験しかなくて、実質的な制作はやったことがなかったんですよ。で、困ったから、女子社員を集めて『こんなAVを作ろうと思うんですけど…』って相談したら『面白そうじゃん!』ってことで協力してくれることになって、どうにかこうにか1年ぐらい掛けてようやくリリースに漕ぎ着けたんです。2009年に1作目をリリースしたんですけど、実際に動き出したのは2008年ぐらいで、意外と歴史が長いんですよね」
女性向けAVは直接のオカズにならない
──1作目から台本も監督もマキノさんが?
「当時はつのだ(まいこ)さんが監督で、私はプロデューサーという立場でした。ああだこうだ言って、それをつのださんが形にしていくっていう。最初はみんなで『ここのセリフはもっとこうしたほうがいいんじゃない?』とかブーブー言い合いながらやってましたね」
──最初からヒットしたんですか?
「お陰様で最初から調子は良かったです。一番最初は、与えられた500万円でハウツーものとドラマものの2本を撮ったんですよ。残ったお金で『an・an』のセックス特集の付録DVDの制作をしたんですけど、やっぱりエロのメディアとしては一番大きいので、波及効果もすごくあったんですよね。だから割と幸先のいいスタートが切れて、私も最初はポカーンとしました。こんなもんなのかしら? って(笑)」
──予想以上にトントン拍子だったと。
「でも、それから一度セールスが落ちたんですよ。調子に乗りすぎた時期があったんですけど、背伸びしすぎるとダメなのがよく分かりました。あくまでもAVはAVなんだよっていうのがあった上での作り込みじゃないとダメですね。無理なことをするとろくなことがない」
──でも、それだけの需要があったというのが驚きですよね。
「そうですね。男の人のAVの感想って、『ここがエロくて良かった』とか『ここが抜けた』とか、直接的なオカズに利用した感想が多いじゃないですか。でも、女の人だと『仕事が終わってクタクタになって帰宅して見たら癒されました』とか、男の人とはちょっと違う反応なんですよ。オカズに使ってるっていう女の人はあんまりいなくて、AVってカテゴリーで出してはいるんですけど、AV=オカズっていうふうには当てはまってないんじゃないか、って言うか」
──ある種、環境ビデオ的な感じなんですかね?
「どうなんだろう。まぁ、不思議な感じですよ。ファンのみなさんもホントに普通の人たちですからね。最初に自分たちでトークライブをやろうとした時は相当ドキドキだったんですよ。“マイクロビキニを着たスケベなお姉さんがいっぱい来たらどうしよう?”とか思って(笑)。AV女優さんのイベントに来る人って、みんな何が入ってるんだか分からないでっかいリュックとカメラを持って、挙動不審にしている人が多いじゃないですか(笑)。私たちのトークライブもそれと同じなのかな? と思ったら、OLさんだったり、人妻さんだったり、綺麗な方が多かったんですよ。身なりはそんな普通の人たちでも、やっぱり鬱憤があるんだなって思いましたね」
──物語にマキノさんの実体験を折り込んでいるのも、SILK LABOの作品が同性から支持されている一因なのでは?
「ただ、実体験を折り込みだしたのは最近なんですよ。それまでは妄想の世界と言うか、少女漫画にありがちな要素をけっこう入れていたんです。で、ある時から自分の実体験を入れてみたら思いのほかウケが良くて、売上もちょっと良かったんですよ。“怨念シリーズ”っていう私の怨念を入れた作品があるんですけど、それも評判が良くて。もちろん“怨念シリーズ”なんて表向きには言ってないですけどね(笑)」
──男性の中にもマキノさんの作るAVが好きって人がいるんじゃないですか。
「最近増えてきたんです。最初から一定数いたのはおじいちゃん層ですね。にっかつのロマンポルノとかが好きだった世代の人たちは、やっぱりちゃんとしたストーリーがあったほうがいいみたいで。ウチの購入者の割合は、9割が女性で1割が男性なんです。その1割は、相当年齢が高いかすごい若いかのどちらかですね。今どきの草食男子と呼ばれる若い人たちの中にも好きだと言ってくれる人がいますよ。『普通のAVだとハードすぎて次元が違う』とか『ムラムラ来ないんだよね』って。それはそれでどうなんだ!? とワタシは危惧しますけどね(笑)」
ついにテレビがAVのマネをした!
──制作にあたって、実用的な作りにするという考えは念頭にあるんですか。
「そういう考えはないですね。男の人のAVは見ながらオナニーするという使いやすさを考えてますけど、ウチは一度見た時は特に何もなくて、あとは各々持ち帰って頂いて、後日妄想のネタの引き出しにしてもらうみたいな感じです。男の人のユーザーさんにもそういう話を直接聞いたことがあるんですよ。『ぶっちゃけ、ウチのAVでしこったことあるんですか?』って。そしたら、見ながらはないって。後で思い出してっていうのはあるって。確かにムラムラするけど、パコパコしたいという欲求よりは、誰かとくっつきたいみたいな欲求のほうが高まるって。だから男の人はSILK LABOの作品を女の人に見せたら口説ける率が上がるかもしれない(笑)。ウチのロケに毎回手伝いに来てくれる男のAD君がいるんですよ。彼も毎回ロケ現場を見ながら“これは一体何なんだろう!?”って思ってたらしいんです。こんなにくっさいセリフ並べて、甘い言葉を連発して、“女の人ってホントにこんなんが好きなんだろうか!?”って日々疑問を抱いていたらしいんですけど、イベントとかの話を聞いて、“そんなに女の人が食いつくんだったらマネしたほうがいいんじゃないか!?”と思い直したみたいで。で、ある日を境に自分の恥じらいを捨てて、エロメンの一徹さんみたいな言動を実践したらしいんです。そしたら『すごい打率が上がった』って言ってましたよ。『女の人ってホント好きなんですね! SILK LABO見たほうがいいですよ!』って。まぁ、それは全然違う使い方かもしれないけど(笑)」
──5月11日のイベントの見どころみたいなものがあれば聞かせて下さい。
「今までのイベントではファンの人の質問やリクエストに応えるというのが多かったんですけど、今回はウチのエロメンたちに一芸を披露してもらう時間を設けようと思ってます。そろそろ彼らも芸のひとつやふたつ持ってないと、このご時世なかなか生き残れないんじゃないかと思うし、本人たちが意外とそういうのをやってみたいということで」
──事前に伝えずに当日いきなりみたいな?
「いや、各々練習はしてもらおうと思ってます。何かしらのテーマを決めて。それがまだ決まってないんですけど、なるべく普段やらないことをやってみてもらうのもいいのかなと。彼らって見た目はホント普通のお兄さんたちじゃないですか。でもある種の特殊技能の持ち主と言うか、ただ格好いいだけの人は世の中にいっぱいいるんでしょうけど、スケベOKで格好いいっていうのが彼らの一番の売りだと思うんですよ。そんな彼らを通して、一般の女性がせめてこのイベントの時間だけは周りの目を気にせずにスケベを楽しめる空間なので、日々の鬱憤が溜まってる女性は憂さ晴らしをしに来てもらえたら(笑)」
──今後のSILK LABOの事業展開は?
「今まで4年ぐらいやってるんですけど、まだSILK LABOの存在を知らない人もけっこう多いんです。ただ、『an・an』でセックス特集をやるたびに新たにファンが増えているのは事実なので、もっとSILK LABOを身近に知ってもらえるきっかけが作れたらなと思いますね。あと、今ちょっとテレビ業界がスケベになってきてることにムカついてるんですよ」
──どういうことですか?
「フジテレビで『ラスト・シンデレラ』という篠原涼子さんや飯島直子さんが出てるドラマがあるんですけど、それが完全にスケベを意識した作りで、何なの!? って思って。三浦春馬君にそれをやられたら…! っていう。ウチはドラマの内容のもっと先を見せられる良い部分もあるんですけど、今まではAV業界がテレビドラマをマネするほうが多かったんですよ。ウチが月9を意識したみたいに。でも最近は状況が変わってきたんですよね。日テレで米倉涼子さんが主演の『35歳の女子高生』というドラマをやってるじゃないですか。あれ、あまりにそっくりなタイトルのAVがソフト・オン・デマンドであったんですよ。北条麻妃さんの『35歳の高校2年生』という作品なんですけど、もう完全にパクリなんじゃないのか!? っていうほど設定が似ていて、ウチの業界内では『ついにテレビがAVのマネをした!』ってもっぱらの噂なんです(笑)。まぁ、そうやって業界全体が盛り上がっていくのは純粋にいいことですけどね。ここまで来たら、三浦春馬君がウチの作品に出てくれたらなとか思いますよ。ものすごく無理のある希望ですけど(笑)。あと、今年ぐらいからけっこう女性向けのメーカーが増えるという話もチラホラ出ているので、ウチはそれにビビらず焦らず、頑張っていきたいですね」