今の私たちは自分の思った事とか私はこうですよというのを言うので精一杯
── そんなBARBARSの皆さんが作った渾身の1枚『OPEN!!!』について聞きたいと思います。今回『OPEN!!!』を制作するにあたって、3人の中でどんなアルバムにしようと思っていましたか?
田中:ライブ感は大事にしようとアルバムを作る前に話しました。
── 確かにライブ感をすごく感じ、ライブの画が浮かびました。
湊:たくさん音が入っているとこれ誰が弾いてるんだろうとなるのが嫌だったし、最小限の音しかないライブ感重視で作りました。
── シンプルであり、どっしりとしている作品の印象を受けました。
影山: CDを聴いてライブに行きたくなる。ライブを見たらCDを聴いてみたくなるのが嬉しいです。
湊:ライブとCDが全くイコールだったらライブを録音してライブCDにしちゃえば良いと思うし、音色とかちょっとした事にもこだわったので、そういう意味では、レコーディングでアイディアを出しあって制作しました。
── 今回のタイトルは『OPEN!!!』となってますが、なんでこのタイトルにしたんですか?
湊:あんまりメッセージ性のある文章にしたくなくて。小学生でもわかるような簡単なものにしたいなと思っていました。
田中 :オープンマインド的な。
影山:デビューっぽいじゃないですか。初めての感じが出てるかなと思って。
湊:開放しちゃえみたいな。
──基本的には作曲が3人の連名で、作詞が女性陣2人がそれぞれやっているんですが、各楽曲を作詞した人がどんな感じで作ったのか聞かせてください。1曲目からお願いします。
湊:『Ambulance Song』は、誰に何を言われても好きなことをやろうよみたいな。就職しないでバンドをやると決めたぐらいの時に作った曲です。当時、バンドの道を選ぶなんてバカじゃないのっていろんな人に言われていて。同い年の子とかは好きなことをやるってかっこいいって言いながら定職に就くっていう(笑)。
影山:男と女は違うのか、俺はあまりそうは言われなかったですよ。やればいいじゃんって。
湊:だから救急車に乗っていたら赤信号無視できちゃうから、それぐらいの勢いで進んじゃえっていう意味を持たせています。
── 2曲目『Make No Systems』は?
湊:“みて みて”っていうフレーズがずっと頭の中にあって、曲が出来て母親に聴かせたら、「あんた昔から口癖だったもんね」って(笑)。意味は街を歩いていてもみんな同じ人に見えちゃったというところからです。同じかっこうしてるし、同じようなことで同調しているし、そこに違和感があって…。雑誌もテレビも全部見させられてる感じがして、自分で見てるものなんてないんじゃないかと思った。それに私は気付いているけど、気付いていないあなた達はハダカで歩いているのを気付いていないようなものなんだよって、わざと皮肉っぽく書きました。
──では3曲目の『サブリナ』は?
田中:サブリナっていう象徴があって、憧れて入った大学でまさかバンドをやるとも思ってなかったし、でもバンドを始めて楽しかったし、バンドをやっていれば悩みを一瞬でも忘れられる。デビューも決まり、ここからっていう感じだけど、怖いと思う反面、ビビッてても始まらないなという思いもあって、そのまま勝負するぞみたいな、意気込み的な曲です。
── 4曲目『おやすみなさいおつきさま』は?
湊:いつも曲が最初にある事が多くて、この曲も曲とメロディーは出来ていたんですけど、歌詞は相当悩みました。これだけはちょっと想像も入っているんですけど、私の性格が深く話し合いをしたりケンカをして絆を深めることがあまりなくて、でも今日なら出来るかもしれないっていう気持ちを歌っています。男の人を想像して書いた感じになっているんですけど、1人の人と向き合うことを考えて書いた曲です。恋愛の曲だと思ってもらっても良いし、友達の歌ととってもらっても良いし、どちらにも当てはまります。
── 5曲目の『Good Shandygaff Night』は?
田中:これは一番古い曲で、何回か歌詞が変わっているんですけど、Bメロの“ハローサブマリン”の部分だけ変えずに残したくて、物語みたいにして作りました。きっかけはバンドをやっていてもそうだけど、私がパッと見でイメージを付けられる事がよくあって、本当の自分を知って欲しいなと思ったことがあってその気持ちからですね。
湊:この曲が出来るまでもっとメタル寄りの音楽をやっていて、ここからちょっと変えてみようと、レギュラーチューニングにしてリフを持ってきてセッションで作り始めて、やったらすごく楽しくて、こういう方がいいんじゃない?となって、バンドの音楽性を変えるきっかけになった曲です。ここからだいぶ作る曲が変わっていって、こんなこともやっていいんじゃないかと、どんどん広がっていった曲です。
── 6曲目の『脳みそグルメ』は?
田中:これもけっこう古くて、歌詞的には心のままに生きたいという思いからです。
湊:楽曲的には、セッション一発だったのかなとは思います。
影山:ベースリフから考えがあって。
湊:ライブのはじまりのような、大袈裟なオープニングの曲をやってみたいとなって。
── じゃあ、7曲目『Dance Dance』は?
田中:当時やっていたバイト中にイメージがバーッと出てきた曲です。バイト先の友達に気配りがよく出来る子がいて、うらやましいなというのもあったけど、マネしてもしょうがないから自分なりに一生懸命やっていくしかないみたいな。飾り立てる必要なんてないな、自分が成長出来ればいいなというか。
── 心の中ではモヤモヤしているけど、タイトルはポップだよね(笑)。
田中:パーティー感はありました。パーティー感が欲しくて。
── 8曲目『地下鉄の猫』は?
湊:これは、リフがあった時に絵本のイメージがあって、これを言葉にしたいって思ったんです。そこで地下鉄にペルシャ猫っていう地下鉄と相容れないものを入れてみようと思ったんです。自分を信じるということも頭にあったので、この曲のイメージとどう絡ませていこうかなと思って考えた曲です。
──話を聞いていると自分に向けて歌っていながら、第三者にも伝わるようになっている曲ですね。
湊:本当は誰かに向けて書けたらなと思うんですよ。これからどんどん人間的に成長して他の人を助けてあげられるような歌詞が書けるかもしれないけど、今の私たちは自分の思った事とか私はこうですよというのを言うので精一杯なので、今回は少しずつそこをオープンした感じはありますよね。
──その時の心情だったりがすごく含まれていて良いと思うし、例え自分に向けて歌った曲でもそれが励ましだったり、ちょっと背中を押してあげられるかもしれないしね。9曲目『nanana』はナナナって読むの?
湊:はい。完全に自分に向けて作った曲。ウジウジ難しい事を考えて、それじゃだめだよって解っていてもまたそれを繰り返して、でもそれでもいいんじゃない?っていう(笑)。
── 最後『三振ピエロ』は?
湊:ピエロってニコニコしているのと怖いイメージと両方あって。怖いって何でかなと調べたら、愛し過ぎちゃって殺しちゃうみたいで、怖いイメージがついちゃっているみたいで、そこまで過激じゃないけど自分と重なるところがあって、人と深く付き合いたいのだけど付き合えないというか…。最終的にはいつかもうちょっと深くまで入り込んでいくよというところで終わっているのですが、ピエロの残念さとかわいさや、人になかなか辿り着けないもどかしさみたいなものを出したくて、タイトルはなるべくキャッチーで残念というか、空振りみたいな感じは出したかった曲です。
── 影山くんは作詞はしないの?
影山:客観的に文章を書くのは得意なんですが、感情をさらけ出して書く事が全然出来ないんです。2人は感情がストレートに書けているし、自分が出た言葉を歌ったほうが絶対に伝わると思うので、今のところはないですね。
── 曲順はすんなり決まりましたか?
湊:わりとすんなり決まりましたね。
── 今回この作品を作るに当たってプレイヤーとして意識していた事はありますか?
湊:レコーディングする時は、とにかく一生懸命歌おうと思いました。
田中:曲に命を吹き込むというか、聴いて生きているかどうか、生命が感じられるかどうかをチェックしていました。
影山:基本的には自分が一番気持ち良く乗れて楽しくできたテイクが選びました。あと気合い一発みたいなのはありました。そこは気持ちの部分が大きかったですね。わからないなりに気合いで乗り切ろうって(笑)。
田中:かっこよく聴こえればいいなっていう。3ピースで音が寂しく聞こえていたら、その原因はベースだと思っているんです。ベースがちゃんと支えられれば寂しくは聴こえないと思うし、音の面でも主張していかないとギターが寂しくなっちゃうし…。あとドラムと気持ちを合わせるとういか、3人でひとつになってやるというのは意識していました。
── ギターは?
湊:気合いは気合いなんですけど、間違えたりリズムに乗れていないところがあっても1曲の中でここの2秒だけ聴かせればこのギターで引き込めるところを絶対に作っておこうと思っていました。リフじゃなくてもバッキングとかでもいいと思うんですけど、ここすごいでしょっていう盛り上がりみたいなのを作って、かっこよくできるようにはどうしたら良いのかという事だけを考えていました。演奏的にまずいところはあるのですが、ダメなところを充分補えるぐらいの必殺ポイントが全部の曲に入っているからそれでいいじゃないかと(笑)。
田中: 3人がそれぞれ目立つようにはしたい。
湊:リードドラム、リードベースって、リードギターって。