1981年5月結成。1985年3月2日解散。奇形児、G.I.S.M、あぶらだこ、といった過激なライブパフォーマンスを主としたバンドが出現した当時でも特に異彩を放ち、未だに熱狂的ファンの多い伝説のパンクロックバンド「MASTURBATION」。あれから約12年の歳月を経た今、奇跡の音源リリースがYOUTH INC.から決定した。
1999年3月30日、OKレコードから発売され、現在廃盤となっている幻のスタジオ音源ベスト盤が、内容を変え、未収録ライブ音源を2曲追加し、リマスタリング+[紙ジャケ仕様]で新たに蘇る事となった。その名も『被害妄想〜人間の底辺に蠢く』。ライナーノーツにはSS、CONTINENTAL KIDSメンバー、しのやん氏が参加している。そしてなんと、今作にはなんと! 遠藤ミチロウ氏から震えるコメントを頂いた。
「アタマかち割って、くだらない脳ミソさっさとぶち撒けて、ボクはスッキリしたいんだ。精液よりも欲望そのものを。全身性器のマスターベーション。誰にも知られず独りで死ねるか?」
遠藤ミチロウ
今回のリリースに携われた事は、私自身の中でも大きな事件だった。そもそもMASTURBATIONが結成されたのは、私が産まれる前の出来事である。この事実にまず驚きを隠せなかったが、逆に興味しか沸かなくなり益々、昔のパンクの真髄を奥深くまで知りたくなった。
活動初期、ギターヴォーカル卑龍氏は自らの体をカミソリで切り刻むというショッキングなライブを行っていたというのだ…。卑龍氏本人からも直接、当時の話を聞いたので間違いない。想像するだけで鳥肌がたつ。最高だ!!
以前、私はタワーレコード渋谷店のJ-PUNKバイヤーというポジションで4年間、幅広く多くのパンクの音源を聞いてきたのだが、MASTURBATIONのことは正直名前だけしか知らなく、音源を一度も聞いた事がなかった。
…ヤバイぞ、こいつぁ!! なんだこりゃあ!! 再生ボタンを押した瞬間、これでもかと言わんばかりのドス黒い音の塊が爆音で攻めてくる。まさに、「衝撃」・「地獄」・「暗黒」という3つの言葉が浮かび上がる。今までに体験した事のない感覚を覚えたのだ。緊張しながらも(怯えながらも)、リリースに向け、メンバー(主に卑龍氏・TATSUSHI氏)と密に連絡を取り合い、新たに生まれ変わる作品について何度も話をした。
田村「お…お疲れ様です」
卑龍氏「そういえば、田村くん」
田村「はい!!」
卑龍氏「話変わるんだけど、どの曲好き?」
田村「ぼ、ぼく個人的には『GO BACK』(アルバム収録曲)が好きです」
卑龍氏「若い子はああいう曲が好きなんだな。当時人気あった曲なんだよ」
と電話で世間話も多く挟みながらの制作進行だった。常に緊張していたとても貴重な経験。感動と感謝の気持ちでいっぱいだ。
さらに、卑龍氏が中心となって活動していた、奇形児やMASTURBATIONのメンバーから成る、伝説のバンド「TRANSFORMER」も忘れてはいけない。1987年にbaLcony recordからリリースされた、TRANSFORMER唯一の作品でもあるLP『MANOEUVRE』が再マスタリングされ、24年の歳月を経て初のCD化が決定した。TRANSFORMER初の映像作品となる当時の貴重なライブ映像が収録されたDVD付2枚組仕様の超激レア保存盤『MANOEUVRE』(CD+DVD)。こちらの作品は2011年3月9日にYOUTH INC.からリリースされた。勿論要チェックである。
J-PUNKバイヤーという経験を経て、今このように自分が産まれる前の80’sパンクのリリースに携われているという事実は、なかなか経験できない事だと思っている。MASTURBATION、TRANSFORMERとの出会いは一生忘れる事のできない大きな事件となった。再び素晴らしい形で産まれた、今もなお受け継がれるべき80’sパンク・ハードコア永遠の名盤を改めて爆音で体感して頂きたい。そして、まさに今の若い世代のパンクスに是非!! 聴いて頂きたい作品である。
(文・YOUTH INC. 田村建治)