超人気プロレス団体「DDT」の実況・解説コンビ、村田晴郎&鈴木健.txtによる「神実況ドラマティック・ドリーム・トークライブ」。これまでのイベントは全て超満員札止めを記録。決して有名タレントではない2人が、なぜ超満員記録を続けられるのか。「神実況」イベントを通じてプロレスの魅力と、プロレスファン以外にもその魅力を届けようとしているお二人にお話を伺った。(聞き手:ロフトプラスワン石崎)
Birh of 神実況
──毎回、超満員札止めの「神実況」イベントが1周年を迎えますが、まずはイベントをやり始めたキッカケから教えて下さい。
鈴木健.txt 企画を持ちかけたのは僕からですね。「週刊プロレス」を去年退社しまして、自分のやりたいことが出来るようになった時に、プロレス関連のイベントをやってみたいというのが漠然とありまして……。で、以前からロフトさんには花見の度に「何かやりましょうよ」って誘ってもらってたんですけど(笑)、まぁ、何かやるにあたって、2年前から「DDT」が「キャンプ場プロレス」というものをやっていて、その観戦バスツアーに同乗した僕と村田さんがバスから見える風景に実況・解説を付けていくということをやっていたんですよ(※その模様がこちら⇒http://www.nicovideo.jp/watch/sm5210153)。それを膨らまして、お客さんの前でイベントとしてやれば、それなりの形になるんじゃないかなって考えたのがおおもとのスタートですね。だから始めから村田さんとやるのは頭にありました。
村田晴郎 まぁ、我々のネームバリューじゃ勝負にならないので、健さんがおっしゃったようにバスの中でのトークが好評を頂いたので、ファンの方々にきっちりとした「イベント」としてお見せ出来れば面白いかなと。
鈴木健.txt バスでのように行き当たりばったりだと、お金を払ってもらうのは申し訳ないので、とりあえずお金を払って頂いた分は楽しんで頂けるように、きっちりと作ろうというのはありましたね。
村田晴郎 バスの中で、「村田さんは何にでも実況を付けられますよね」みたいな話が出たんですけど、それがいつの間にか広がって、僕のウィキペディアに「どんなものでも実況という体を取ることが出来ると豪語する」みたいなことが書いてあって(笑)。それが神実況のコンセプトにもなってしまって……最初、健さんからお話を頂いた時は、ゲストありきのイベントじゃなかったんですよね。我々がプロレス以外のものでも実況・解説を加えられたら面白いんじゃないかと。そういう映像を用意してその場で実況・解説を付けていく、まさに「実況芸」というものをイベントで見せて行こうって話になったんですよ。で、それ用に素材を沢山、集めたんですよ。で、最終的に残ったのが「ガチムチレスリング」で第一回目のゲスト、男色ディーノさんと共に、ガチムチの男たちがパンツを脱がし合う映像に実況・解説を付けるという(笑)。
鈴木健.txt そこから派生したのが、第二回でやった透明人間対決の実況ですね。透明人間対透明人間だからその場に誰もいないんだけど、実況・解説をつけることでプロレスの試合の体をなして、その場のお客さんも「おおーっ!」とかいって盛り上がるという。あれは「実況芸」だったと思います。ただ、ディーノ選手が言ってたんですけど、「面白い映像に実況・解説を付けてもそのままだろう」と。そこから構成の仕方が変わりましたね。映像に頼らず、ゲストをフィーチャリングしていく形になっていきました。
Histrory of 神実況
──これまでのイベントをちょっと振り返って頂きたいんですけど、第一弾('09.11.12)は男色ディーノ選手さんをゲストにお迎えして、いきなり超満員札止めでしたね。
村田晴郎 一回目は正直、男色先生のネームバリューに頼った感じでしたね。男色先生の今まで語られなかったゲイとしての生い立ちとかをトークで語ってもらえればと思ったんですけど、まさか最後のオークションであんなに盛り上がるとはね(笑)。
──男色先生の尻をお客さんが顔で受けた、いわゆる「男色ナイトメア事件」ですよね(笑)。
鈴木健.txt あれで一気にハードルが上がったんですよ(笑)。だから第二弾は全然違うものをと考えたんです。「神実況」イベントってなんなの?って聞かれると、実は一番困るというか(苦笑)、毎回まったく違うものをやって形が決まってないので僕らも説明しづらいんですよね。なので、僕は器を作って売っているという感覚なんです。「マッスル」も、器じゃないですか。事前に対戦カードも何をやるかも発表されないのに後楽園ホールが満員になるのは、みんな「マッスル」という器を買いに来てるんですよ。そういうのを見てきているからなんでしょうね。
──第二弾('10.2.25)のゲストは、アントニーオ本多選手と、サプライズゲストにディック東郷選手でした。
村田晴郎 本多選手は僕のリクエストだったんですけど、非常にギャップのある方で、リング上では激しいんですけど、普段は物静かな方でその「寡黙」な部分の方に興味があったんですよね。狂気を感じるというか。その部分をファンの方は見たことがないだろうと思って、じゃあイベントで見せてしまおうと。そのリクエストを健さんに伝えて、形にしてもらったんですよね。
鈴木健.txt 第一弾はプロレス的「楽しさ」は伝えられたと思うんですけど、次はプロレスならではの「感動」を伝えられないかなと。その時に本多選手の「寡黙」な部分も知る、師匠のディック東郷選手の存在が浮かんできたんですよ。
──最後に東郷選手から、本多選手への想いを手紙にして読む下りは感動的でしたね。
村田晴郎 あれは健さんが週プロで培ってきたものでしたよね。僕には感動を与えるって発想がないから出来ない(笑)。
鈴木健.txt プロレスの良さを伝えたいという思いが東郷選手にも伝わったんだと思います。これまでこういうイベントには出なかった東郷選手にOKして頂いたのは本当、感謝ですよね。そして第三弾('10.5.27)は、プロレスとは違う方向に行くことで、プロレスの要素を発信できないかと思いまして、「マッスル」の鶴見亜門こと役者である双数姉妹の今林久弥さんをゲストにお迎えして「演劇」に挑戦したんですよ。
村田晴郎 あれはもう、ドラスティックに変えましたよね〜。まさかロフトで演劇をやらせられるとは思わなかったし。
鈴木健.txt 役者である今林さんをフィーチャリングするなら、単にトークで生い立ちを語ってもらうより演劇でそれを描いた方がいいと思って。それで僕が脚本を書いて、村田さんと僕も演技の稽古をして3人で舞台をやったんです。あれも事前にやることは言っていなかったですから、お客さんに向けてのサプライズでした。それで、ちょうどこの辺から、twitterにハッシュタグを付けて、会場に居ない方もタイムラインで情報を追える文化が出来つつあったんですよ。タイムラインさえ見れば、「何か面白そうなことをやっている」というのが拡がる楽しさがあって、プロレスファンに楽しんでもらうことは大前提ですけど、ファンの方以外にもプロレスを広めていく。そうすることで、どんなものにも「プロレス的な楽しみ方」が出来るということを伝えていきたい、その一発目が今林さんとのプロレスを題材とした「演劇」でしたね。
──そんな中、「その翌日('10.5.28)が空いたんで、何かやりませんか?」と僕が連絡したんですよね。ほんとすみませんでした!
鈴木健.txt いえいえ、逆に良かったんですよ(笑)。あれがキッカケで、僕らがやっているウェブラジオ「DX‐R」の公開収録イベントが立ち上がったわけですし。ほんと流れ的に恵まれてましたね。プラスワンさんで2日間やるということ自体、そんなにないと聞いてチャレンジしなければと思ったし、お話をいただいた時点で前日の「神実況」イベントをツーデイズでやるという発想はなかったですね。まったく別のことをやらなければならない…じゃあ、ラジオの公開収録をやろうと。
村田晴郎 本当に皆さんのお力があってこそ。これだけの予算でよく回ってますよ(笑)。で、第四弾('10.8.26)のゲストは三田佐代子さんだったんですが、あの時はもうお客さんも三田さんも出来上がってましたね〜(笑)。まぁ、その三田さんをどう転がすかというのがテーマでもあったんですけど。
──三田さんに初めてプロレス実況をしてもらうというのも新鮮でしたね。
村田晴郎 あれは健さんだから出来たんですよ。僕はあんなことお願い出来ません。僕が言ったら「お前、私のこと潰す気だろ」って思われますよ(笑)。
鈴木健.txt まぁ、とにかく本人が不安がってたので、本人の気持ちを乗せるためにビデオレターを用意したり、色々な企画を立てて、その上でやってもらったという感じですね。で、最後に「バラモン兄弟」のテーマ曲を掛けて、「ユニゾン兄弟」(キャンプ場プロレスを主催する双子)が出てくるというサプライズも仕掛けたり(笑)。