Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー曽根 功 3P3B代表 a.k.a. OZK × 渡邊 忍 ASPARAGUS/ex.CAPTAIN HEDGE HOG('09年6月号)

十年一剣を磨き続けたインディーズ・レーベルの良心、3P3Bの軌跡

2009.06.01

 インディーズ・シーンきっての良心として常に鮮度とクオリティの高いポップ・ミュージックを発信し続けているレーベル、3P3Bが今年めでたく設立10周年を迎えた。その10周年記念事業の一環として、今年3月には下北沢シェルターにて10回目となる"3P3B MEETING"の開催、そして"九人の侍 complete"の敢行によりキャプテン・ヘッジ・ホッグ、ショート・サーキット、サムがまさかの一斉復活を果たすという往年のファンには狂喜のハプニングが巻き起こっているが、ここへ来て映像作品『3P3B VIDEO 0408』とオムニバス・アルバム『CARRY THAT WEIGHT II』という10周年記念アイテムが同時リリースされることが決定。3P3Bオールスターズとも言うべき所属バンドが一堂に会した両作品の発売を祝して、3P3B総帥の"OZK"(オジキ)こと曽根 功、レーベル発足前からOZKとは盟友関係にある渡邊 忍(現アスパラガス)のふたりにこの10年の歩みを洗いざらい語り尽くしてもらった。(interview:椎名宗之)

いつの間にか"至っちゃった"感覚

──3P3B設立5周年の座談会(本誌2004年2月号掲載)からもう5年経ったことを考えると、歳月の経つ早さを改めて痛感しますよね。

曽根:そう、ホントにあっちゅう間ですよ。

渡邊:(テーブルに置かれた編集部の録音機材を見ながら)何せテレコがデータになっちゃう時代ですからねぇ。僕らも持ってますよ、そのエディロール。

──まぁ、心許ないのでテレコも一緒に回してますけどね(笑)。

渡邊:保険でね(笑)。そういうアナログな部分が残ってるのはいいですよね。

──そんな記録メディアも移り変わった10年ということで(笑)。率直なところどうですか、3P3Bを立ち上げてめでたく10周年を迎えたわけですけれども。

曽根:一言で言えばあっと言う間ですよね。ああ、もうそんなに経つんだなぁ...っていう。まぁ、10年っていう時間の重みは感じますけど、レーベル自体の動きはそんなに大したもんじゃなかったかなとは思いますね(笑)。

──ははは。この10年、引っ越しも頻繁にされてきましたよね。

曽根:そうですね。最初は横浜の自宅で、渋谷に4年居た後に下北沢へ移って。

渡邊:本多劇場の上にあるマンションですね。

曽根:そのマンション内でも引っ越しがあって、今年の4月に自由が丘駅と九品仏駅から徒歩数分の一軒家へ移って今に至ると。だから、自宅を入れるとここで5軒目になりますね。

渡邊:下北が一番長いよね?

曽根:うん。5年以上居たからね。

──忍さんもあっと言う間の10年間という感じですか。

渡邊:そうですね。僕自身、キャプヘジからアスパラガスへとバンドも変わってるし、その2つのバンド以外にもいろんなことをやってきたし。ただ、5周年の座談会以降の5年間はかなり短かった気がしますね。

曽根:確かに。最初の5年よりは後の5年のほうが短く感じるよね。

渡邊:まぁ、歳を取れば取るほど1年が短く感じるっていうのもあるのかもしれないですけどね(笑)。10年の間にいろんなことがあって今に至るのは確かなんですけど、何と言うか、"至っちゃった"みたいな感覚なんですよ。よく今まで持ったなぁ...っていう気もするし。OZKもそうだと思うんですけど。毎日毎日、目の前のことに向き合ってたら10年経っちゃったし、いろんなことが積み重なったんだなぁ...っていう。振り返ってみるとそんな感じですけど、やってる最中は目の前のことに取り組むのに必死なんですよね。OZKは社長のくせに余り先のことを読めないし(笑)。OZKにとって"先のこと"と言えば、せいぜい「今夜のメシはどうしよう?」くらいのことですからね(笑)。

──ははは。でも確かに、配信限定のシングル・リリース(アスパラガスの『CLOSED LOVE』)という試みも去年の話でしたしね(笑)。

渡邊:そうですよね(笑)。そういう試みは遅いんですよ。レーベルにしてもバンドにしても、"先へ行ってやろう"みたいに目新しいことをどんどんやっていく感じでもないですから。

──私見ですが、3P3Bは良質な作品だけを精選して発表するスタンスを一貫して崩さないレーベルという印象が強いんですよね。時勢にとらわれることなく、質実剛健な姿勢を貫いていると言うか。

曽根:そう言ってもらえるのは有り難いですね。そういうことにしておきましょうか(笑)。

渡邊:まぁ、単純にリリースが遅いってだけの話ですね(笑)。僕は今日の取材にも遅れちゃいましたし(笑)。いつもホントにギリギリで、アクセルをベタ踏みなんですよ。

キャプヘジの解散が一番の衝撃だった

──今回発表される『CARRY THAT WEIGHT II』の品番が"3P3B-60"ですから、この10年間で60アイテムをリリースしてきたわけじゃないですか。少数精鋭のスタッフでこれだけのアイテムを世に送り出せたのは、かなり理想的なペースだと言えませんか。

曽根:作ったのは60アイテムってことになるんですけど、売ってるものだけじゃなくて、無料だったものもあるんですよ。

渡邊:無料配布のカセットとかね。ニッチリのライヴCDもそうだし。

曽根:100枚だけ作ってお客さんに配ったヤツね。そういうのを含めて10年間で60アイテムだし、10で割ると1年に6枚っていうペースですよね。つまり2ヶ月に1枚のリリースってことだから、理想的って感じでもないような気がしますけど...どうなんだろう?

渡邊:どうなんでしょうねぇ。何もしてないっていう感じではないですよね。

曽根:ただ、1年に1枚もアルバムを出せなかったこともあったしね。シングルだけしか出せなかった年もあるんですよ。偶然の産物みたいなのもあって、昔は割とコンスタントに出せてたんですよね。ライヴ盤とか。

──基本的にはいいバンドと巡り会えたのを前提としたリリースでしょうから、のべつ幕なしに出すわけではないですよね。

曽根:そうですね。そういう意味では、無理にバンドを探し出さずにやってこれたと言うか(笑)。

──この10年で最も衝撃的な出来事を挙げるとすると...?

曽根:やっぱり、キャプヘジの解散(2002年7月)ですかね。それに尽きますよ。"バンドって解散するんだ..."ってくらいの衝撃でしたから。それ以降の解散は慣れましたけど(笑)。

渡邊:フラれ慣れたみたいなね(笑)。

曽根:最初に忍から言われた時はもうねぇ...ガックリ来ちゃいましたよね。

──レーベル存続の危機に瀕したと言っても過言ではなかったと?

曽根:いや、レーベルのことはさておき、とにかくショックだったんですよ。それまで結構いい感じで来てたので、余計に辛かったですね。もうライヴが観れないっていう。

渡邊:まぁ、いろんなことが重なって、たまたまそういう時期だったんでしょうね。解散をせずに続けようと思えば続いたのかもしれないけど、今はあれで良かったんじゃないかと思ってます。バンドが嫌いで解散したわけじゃないし、次の段階へ行くための前向きな選択だったんですよ。だから後悔はしてないですね。...なんて言いながら、今年はキャプヘジを復活させたりしてるんですけど(笑)。

曽根:この10年での大きな出来事、他に何かあるかなぁ...。

渡邊:細々とはあるんですけどね。要するに、それだけ大きなチャレンジをしてこなかったってことですよ(笑)。チャレンジをしてこなかったから大きな失敗もなかったし、大きな成功も収めなかったんじゃないかなと。

曽根:山もなければ谷もないっていうね(笑)。たとえば武道館でライヴをやるとか、そういうことをしてきたわけじゃないから。

渡邊:ただ、基本的に山も谷も作らないようにしてると思うんですよ。リスクが高いばかりにレーベルやバンドの存続が危ぶまれるのはイヤじゃないですか。そこで無理して頑張って潰れてしまうよりも、少しでも長く続けたいという感覚でずっとやってきたんですよね。


OZK、久し振りにやる気モードか!?

──キャプヘジの話題が出てきたので伺いたいのですが、今回の公式な復活は渋谷GIG-ANTICの閉店がきっかけだったんですよね?

渡邊:それもきっかけではあるんですけど、3P3Bの10周年をひとつの節目として、思いきってやってみてもいいんじゃないかと思って。

曽根:仕掛けたのは僕じゃないんです。忍から言ってきたんですよ。

──それは凄く意外ですね。もう何年も前から"ぼちぼちやってみてもいいかな?"という感じだったんですか。

渡邊:"またやってみたいな"と思うことはちょいちょいありましたよ。それをやるには、この10周年というタイミングが一番良かったんです。10周年なら許されるかな? っていう。当時好きだった人はもちろんライヴを見に来てくれるでしょうけど、解散してからもう7年経つし、アスパラから入った若い人たちも結構いると思うんですよ。

──1月に渋谷GIG-ANTICで行なわれた復活ライヴ、3月にシェルターで行なわれた"九人の侍complete"でキャプヘジとしてステージに立って、手応えは如何でしたか。

渡邊:"ああ、こんなだったな"みたいな感じですね。やっぱり凄く楽しいですよね。バンドがイヤになってやめたわけじゃないし、メンバーは今でも仲がいいし、純粋に楽しいですよ。当たり前ですけどアスパラとはまた違った面白さがあるんだなと思ったし、復活ライヴをやって当時の感覚がすぐに蘇ってきましたね。"九人の侍 complete"はDVDの発売にかこつけて(笑)、キャプヘジ、ショーサキ、サムの3組が一気に復活したんですけど。

曽根:キャプヘジに関しては、ちゃんとツアーをやりたいという話だったんですよ。去年の夏くらいにそんな話になって、"九人の侍"もまたやろうと。ギグアンはその後に決まったんですよね。

渡邊:だから、ギグアンの発信じゃないんですよ。ギグアンがなくなるってことで「キャプヘジでやりませんか?」と打診を受けて、どうせやる予定だし、やろうと。

──SHIBUYA-AXでLAST GIGを行なったキャプヘジが、7年の歳月を経てまた同じ場所でライヴを行なうというのは美しい流れですよね。

曽根:ちょっといやらしいですけど、LAST GIGと同じ場所、同じ日(7月4日)にあえて設定したんですよ。売れ切れたら最高なんですけどねぇ...。

渡邊:女性は家庭に入ってる人も多いだろうし、当時のお客さんも高齢化が進んでますからね(笑)。

──レーベル設立10周年を記念して発表される『CARRY THAT WEIGHT II』について伺いたいんですけれども、5周年を祝して発表されたコンピレーションの第2弾となる本作、新進気鋭のバンド3組の楽曲を頭に並べたところに"攻め"の姿勢を感じたんですよね。久方振りにOZKのやる気を感じたと言うか(笑)。

曽根:久方振りにね(笑)。10周年だし、"攻め"のフリで行きたいなと(笑)。

──叙情的な日本語詞と哀愁に溢れたメロディが溶け合ったベッド、荒削りながらも確かなメロディ・センスを持ち合わせたクイック、昂揚感に満ちたサウンドが大きな持ち味のスリーデイズ・フィルムと、今後の活躍がとても楽しみなバンドばかりですね。

曽根:この3組に共通して言えるのは、ギターが鳴ってる感じですよね。僕の好きな鳴りをしていると言うか。あと、ベッドは歌詞が凄くいいんです。日本語っていうのもあるのかもしれないけど。

"自分の好み"がリリースの基準

──日本語詞のバンドというのも、3P3Bでは珍しいですよね。

曽根:ニッチリも日本語詞だけど、まぁあれはあれで(笑)。今後単独作品としてリリースするとしたら初めてってことになりますね。クイックは函館在住のメロコア・バンドで、なにぶんまだライヴの場数が少ないので時間も掛かると思いますけど、これからきっと伸びていくんじゃないかなと。

──OZKがメロコア!? っていう意外性は正直感じましたけどね。

曽根:確かに、メロコアのデモテープは一度聴けば"もういいや"と大抵思うのに、クイックは何故か何度もリピートして聴いたんです。なので、このバンドにはきっと何かがあるに違いないと思って。実際にライヴを見に行った時も、もう一度見たいなと純粋に思いましたからね。

──スリーデイズ・フィルムは、プーリーのサポート・ギターであるマシタケントさんが在籍するバンドだそうですね。

曽根:緻密なツイン・ギターとシンプルな楽曲が僕の好みなんですよ。繊細で澄んだヴォーカルも好きですね。この新人3組に関しては、今後個別に作品を出していこうと思ってます。まぁ、時間は掛かるかもしれませんけどね、ウチはそんなバンドばかりなんで(笑)。...なんて言って、これでどのバンドも単独作を出さなかったら笑えますよね(笑)。

渡邊:あのコンピも単なる頭数だったのかよ!? っていう(笑)。

──今さらなんですけど、3P3Bから発表される作品の基準というのは、さっきOZKが言った"ギターが鳴ってる感じ"ということなんでしょうか。

曽根:単純にそれが僕の好みだと思います。普段から好きでよく聴く音楽もそういった感じなんですよね。だから好きじゃないとできないんだと思います。それとメンバーのキャラは重要ですね(笑)。

──なるほど(笑)。『CARRY THAT WEIGHT II』に参加しているのはライヴでその本領を発揮しているバンドばかりですしね。しかも、皆こぞってクオリティの高い楽曲を持ち寄っているのが素晴らしい。収録曲を追って見ていくと、まずビーフの『DIRECT CONNECTION』は骨太な音作りのエモーショナルな逸品で、今後単独作にも収録しないともったいない出来ですよね。

渡邊:確かに、気合いが入ってる感じですね。

曽根:そうだね。(岡田)洋介、頑張ったと思いますよ。

──そして、唇にジェラシーズ。BOφWYに対する深すぎる憧憬の念に改めて感服しました(笑)。

曽根:ウチの忘年会ライヴでお馴染みですね。BOφWYのコピー・バンドから始まって、遂にここまで来たかっていう(笑)。

──ヴォーカルのエコーが過剰なことも含めて(笑)、あの時代の雰囲気がよく出ていますよね。

曽根:音も彼らなりのオマージュなんですよ。ドラムも(高橋)まことさんのプレイやサウンドを意識してますからね。アー写もわざわざメイクしてるし(笑)。どうせやるならとことんやってくれと。

──ちゃんと二の線で行けるバンドと宴会御用達バンドが一緒くたになっているのが3P3Bの大きな強みのひとつと言えますね(笑)。

曽根:まぁ、そういう器用なことをやれる連中なので(笑)。

──フリーキーフロッグも、ファイン・ラインズも、プーリーも、それぞれの持ち味がよく出た楽曲で聴き応え充分ですね。

渡邊:そうですね。でも、その後のニッチリでまた宴会モードに突入しちゃうんですけど(笑)。

曽根:『エコテロリスト』ね。これは出来すぎですよ(笑)。

渡邊 忍、若干19歳の貴重なデモ音源

──"青春時代のメモリー消去、弥生時代は竪穴住居"ですからね。こんなにヒドいライム、今まで聴いたことがなかったですよ(笑)。この『エコテロリスト』も、とある大ヒット曲へオマージュが捧げられている部分がありますよね?(笑)

渡邊:ああ、判りました?(笑)

曽根:僕は最初、全然判らなかったんですよね。言われてみて、ああそうかと。

──だって、"まるで火だるまでした"ですよ? 火だるまだけに、遂に焼きが回ったのかなっていう(笑)。

渡邊:まぁ、今の世相を反映しているわけですよ。100年に一度の経済危機を迎えて火だるまになっているという(笑)。時代の空気を集約して、軽いタッチで歌詞にしたらこうなったと言うか。重苦しい歌詞にすると、物申す的な歌になっちゃうので。

──ニッチリは3P3Bきっての社会派バンドでもあったわけですね(笑)。

渡邊:何気にそうなんですよ。ニッチリはライヴでも時事ネタを採り入れてますからね。まぁ、"竪穴住居"に時事性は全くありませんけど(笑)。

──アスパラの『Volt-Ampere』は、よくぞ納期に間に合ってくれましたと言うか...(笑)。

渡邊:今回もまたベタ踏みでしたね(笑)。しかも、この曲は自分たちで録ることにしたんですよ。パソコンを使って、ミックスまで全部自分たちでやったんです。そんな初めての経験もあったので、余計に時間が掛かっちゃったところもあるんですよね。でも、このチャレンジが今後に繋がればいいなと思って。

──楽曲の完成度は折り紙付きですよね。如何にもアスパラらしい流麗なメロディに彩られた名曲だと思いますし。

渡邊:そう言ってもらえると嬉しいです。確かに、自分たちの色が出た曲だと思いますね。自分でも"こういうのがアスパラっぽいんだろうな"っていうのを聴いてて感じたし、きっと何かあるんでしょうね。

──タイトルだけは先に決まっていたと伺いましたけど。

渡邊:そうなんですよ。『Volt-Ampere』の頭文字を抜き出すと"V.A."になるじゃないですか(笑)。それを最初に決めて、後から電気系と言うか理系の歌詞を付けたんですよ。

曽根:理系にはなってねぇだろ(笑)。

──5年前の『CARRY THAT WEIGHT』にはキャプヘジのお蔵入りになった曲(『MONMAYDOSCOY』)が最後に収録されていましたけど、今回はシノブ・ナインティーンの『ALL NEW』なる曲で有終の美を飾るという趣向が凝らされていますね。

渡邊:ノーザン19と間違えられたら面白いと思って(笑)。あれ、3P3Bに移籍したの!? っていう(笑)。

──ははは。何でも、忍さんが19歳の時にカナダのスタジオでドラム、ベース、ギターを自ら演奏して録ったデモ音源ということなんですが。

渡邊:どんどん自分の恥ずかしい部分が晒されてる感じですよね(笑)。カナダに僕のいとこが住んでいて、そこへ遊びに行った時にたまたま録った曲なんですよ。そのいとこもバンドをやっていて、家にレコーディング機材やドラムとかがあったんです。まぁ、遊びで録っちゃおうと言うか、ノリですよね。カナダへ遊びに行った土産代わりとして、当時付き合ってた彼女に"こんなの録っちゃったぜ"ってプチ自慢するくらいの感覚だったんです。カナダで曲を書き下ろして...って、そんな大それたもんじゃないですけど、4曲録った中の1曲なんですよ。

重きを置いている部分は変わらない

──この曲をあえて収録したのは、OZKに請われてですか?

渡邊:そうです。単純に恥ずかしいですけど、好きでやったことだから、まぁいいかなと。

曽根:もう随分前に、その4曲が入ったCD-Rを忍からもらったんですよ。それをずっと事務所の押し入れの奥にしまっておいたのを思い出して、その中の音源を入れるのはアリなんじゃないかと思ったんです。それに、『ALL NEW』は僕自身昔からずっと好きな曲なんですよね。モリヤスナイトとかでたまにDJをやらされる時に、内緒でこの『ALL NEW』を掛けちゃったりしてたんですよ。

渡邊:エッ、そんなことしてた?

曽根:してたんだよ、実は。でも、みんな酔っ払ってるから気づかないんだよね(笑)。そんな思い入れのある曲だから、入れたいなと思って。ホントは隠しトラックで入れたかったんですけどね、オマケみたいな感じで。

渡邊:でも、今はパソコンに入れると曲のタイトルが表示されちゃうから、だったら最初から入れちゃえと思って。

──曲の頭に「OK、テイク7」という声が聞こえますけど、これは?

渡邊:あれはいとこの声なんです。

──ということは、当時のデモ音源に何も手を加えていないんですか?

曽根:そうです。マスタリングはしてますけど、当時録った音源をそのまま入れてあるんですよ。

──潔いですねぇ。こういうのって、大抵後から何かしらの音を付け足すものじゃないですか。

渡邊:しなかったですねぇ。音を付け足すのも面倒くさいし(笑)。まぁ、裸同然の曲だから、あえて手を加える必要もないと思うし、無理に作り込んだりしないのが3P3Bらしい部分なのかなと。

曽根:キャプヘジの『MONMAYDOSCOY』もそうだったんですよ。あれもカセットテープをスタジオに持って行ってマスタリングしただけですから。

──『ALL NEW』には後のキャプヘジやアスパラにも通ずるポップさがあるし、忍さんのメロディ・メーカーとしての才能がこの時すでに開花していたのがよく窺えますよね。若干、ビート・パンクの匂いも感じますけど。

渡邊:ありますねぇ。当時の時代背景もあるでしょうし。ただ、基本的に好きなツボみたいなものは余り変わってないんですよね。今だったらこうするかな? っていう部分もいっぱいあるんですけど、メロディとか重きを置いている部分は14年経ってもそんなに変わってない気がする。

──強いて変わった点を挙げるとすれば、『ALL NEW』は今と違って日本語詞で唄われていますね。

渡邊:そうですね。まぁ、今はそれほど強く英詞にこだわっているわけでもないんですけどね。ハスキンのカヴァー(『ロバの口真似』)とかでも日本語で唄ってますし。曲の雰囲気が格好良く聴こえるから今のところ英詞で唄ってますけど、いつかまた日本語詞でやってみたいとも思ってるんですよ。

──3P3Bオールスターズ名義で、『ALL NEW』のようなプライヴェート音源を1枚にまとめた作品があっても面白いんじゃないかと思うんですが。

曽根:それこそ、キャプヘジが解散した時にそういう音源を出したかったんですよ。未発表の日本語の曲が結構あって、当時カセットテープでしょっちゅう聴いてたんです。まぁ、忍は本気でイヤがると思うけど(笑)。

渡邊:凄いタイトルの曲がありますからね。『人間の剥製』とか(笑)。それは日本語詞なんですけど。

10周年を機に打ち上げも爆発します

──是非聴いてみたいですね(笑)。眠らせておくのはもったいないですよ。

渡邊:いやぁ、眠ったままでずっと起きないでくれ! って感じですよ(笑)。ホントは火葬にしたいのに、土葬のままなんですよね。だからいつか起きてきそうで怖いんです(笑)。

曽根:そう言えば、『チョイナチョイナ』っていう曲もあったよな(笑)。

渡邊:ああ、あったあった(笑)。当時としてはちょっとハードめな曲でね。ヘンなタイトルはそれくらいだよね?

曽根:『LEMON』みたいにちゃんとしたタイトルもあったし。

渡邊:まぁ、お蔵入りした曲のことはもういいでしょう。いよいよレーベルが潰れるって時にまとめて出しましょうよ(笑)。

──『CARRY THAT WEIGHT II』のレコ発ツアーが東名阪で行なわれますけど、また打ち上げがカオスになることは必至でしょうね。

曽根:東京はロフトで、忘年会バンドを除く8バンドが出るから間違いなくそうなるでしょうね。今から楽しみです(笑)。

──ちなみに、シノブ・ナインティーンがステージに立つことはないんですか?(笑)

渡邊:ないですね(笑)。当時付き合ってた彼女のことを思い出したりしそうなので(笑)。

──ここ最近、皆さんのようにビールのピッチャーを次から次へと消費する豪快な打ち上げをやるバンドが減ってきたので寂しい限りなんですよね。

渡邊:よくそう言いますよね。僕らよりちょっと若いバンドは技術的に巧い人たちが多いし、きっと打ち上げをやらないぶん練習に費やしてるんじゃないですかね? 僕らの世代は呑んだり遊んだりしてる時間がムダに長いですから(笑)。僕なんて今もたまにやっちゃうんですけど、次の日からライヴが2連チャンだっていうのに前の日の打ち上げで朝まで呑んじゃうんですよ。そうすると当然の如く、ライヴの出来にも響きますよね。まして僕は歌を唄ってるっていうのに。でもやっぱり...たまにやらかしちゃうんですよね(笑)。

曽根:その点、今の若いバンドはちゃんとケアしてるよね。

渡邊:そう、だからプロ意識が強いんですよ。打ち上げが減るのは確かに寂しいけど、それだけいいライヴが望めるという意味で、お客さんにとってはいい状況なんじゃないですかね。

──この10年間で最も派手に打ち上げをしていたのはどの時期ですか。

曽根:やっぱり"九人の侍"とか、あの頃かなぁ。

渡邊:僕がキャプヘジをやってた頃はヒドかったですね。ヴァイオレンス系じゃないんですけど、ヒドいにも程があった(笑)。

曽根:みんなでワッショイしてる感じだよね。

──ああ、裸族系ですか?(笑)

渡邊:そういうニュアンスもありましたね(笑)。基本は凄く楽しい感じなんですけど。

曽根:キャプヘジの3人はとにかく呑ませるのが上手いんですよ。特にベースのカズオが。あれはある種の才能だよね。

渡邊:僕らは打ち上げでワイワイやるから、それでいろんなバンドのツアーに呼んでもらってた部分もあるのかもしれないですね。

曽根:今でも「アスパラの打ち上げはスゲェ!」って言われることが多いんですよ。要するにそれだけヒドい打ち上げをアスパラがしてるんだろうなと思って。

渡邊:でも、最近の僕らは地味になりましたよ。意図的に地味にしてたところがあるので、そろそろ爆発させてもいい頃かなと。今度のツアーは10周年の節目ですからね。

どんどん開いていく締切のゲート

──その後にはキャプヘジの"LAWRENCE TOUR"も控えていますね。

渡邊:『CARRY THAT WEIGHT II』のツアーは名古屋、大阪と連チャンなんですけど、キャプヘジは名古屋と大阪の間に1日空けてあるんです。

曽根:キャプヘジも最初は連チャンだったんですけど、急遽変更しました(笑)。

渡邊:やっぱり、打ち上げをガッチリやりたいので。あと、キャプヘジは本数も少ないからちゃんとライヴをやりたいんですよ。でも呑みたいっていう。呑まなきゃいいのに(笑)。

──キャプヘジの再結成は今年限定なんですか。

渡邊:そうですね。過去にもちゃんとした仕込みのない状態でやったことはあったんですけど。

曽根:ちゃんと告知してやるのは今回が最後ですね。

渡邊:でも、判らないですよね。こういうことをやると、「せっかくだから」ってまだしばらく続くことがよくあるじゃないですか。まぁ、今のところその予定はないですけどね。

──ツアーをやって、キャプヘジとして新たな創作意欲が湧くなんていうことは...?

渡邊:どうなんでしょうねぇ...。なさそうですね(笑)。やってみないことには判らないですけど。創作意欲自体、僕には基本的にないですから(笑)。それこそシノブ・ナインティーンの頃くらいじゃないですか、特に締切があるわけじゃないのに自発的に曲を書き上げたのは。ここ何年も締切がないと曲作りができないんですよ。

──OZKが締切を煽ることもなさそうですしね。

曽根:そういうことは全くしませんね。最初から間に合わないと踏んでますから(笑)。

渡邊:OZKが仮に決めた締切には、ゲートがいくつかあるんです。間に合わないとそのゲートがどんどん開いていくんですよ(笑)。それでかなり奥のほうまで行ってしまうという。『Volt-Ampere』も最後のゲートでようやく完成に至ったんですよね。

曽根:それもツアーがなかったらもっとゲートがあったでしょうね。ツアー前に『CARRY THAT WEIGHT II』も店頭に並ばないかもなと思ったし、最悪の場合はライヴ会場で売るしかないと覚悟してましたから。結果ギリギリでしたね。まぁ、昔のほうがリリースのズレはヒドかったですけどね。ライヴのMCで「アルバム出します」なんて散々言っときながら全然出せなかったし(笑)。

渡邊:宣言しといて平気で1年くらい遅れたりして(笑)。ショーサキもそうだったしね。

──アスパラも『KAPPA』の後はだいぶ開きましたよね。

渡邊:開きましたね。『MONT BLANC』まで3年半掛かりましたから。だから次のアルバムはもうちょっと早く出したいと思ってるんですよ。

曽根:そんなこと言って、もう1年半経ってますからねぇ...。

渡邊:まぁ、来年までには出したいですね。

曽根:来年まで!? リリース目標は来年の頭だろ? ホントは年末だったのが、すでに来年の頭になってるんですよ(笑)。

渡邊:最初は今年の夏くらいに出すつもりだったんですけどね(笑)。今年の夏、年末、来年の頭と、もうそこまでゲートを開いちゃってますから(笑)。

──となると、来年の頭もかなり怪しいものですね(笑)。

曽根:今のところ来年の頭にアルバムを出して、春からツアーってことになってますから。まぁ、この調子で行くと、これからもゲートが開きっぱなしな気もしますね(笑)。

長く続けた成果は必ず後からやって来る

──それじゃ困りますけどね(笑)。月並みですが、この先の10年はどんなものにしたいですか。

渡邊:勝負に出るとか、そういうのは相変わらずなさそうですね。

曽根:僕やメンバーの性格がそういう感じじゃないですからね。ガツガツするなんてまずあり得ないじゃないですか(笑)。

渡邊:やっぱり良くないですよね、喰うか喰われるかの弱肉強食の時代にそんなことじゃ。僕も結構いろんな所を喰いちぎられてると思いますよ、アキレス腱とか(笑)。

曽根:まぁ、新しいバンド次第ではまた違った展開になるのかもしれませんけどね。実際、ちょっと変化していくだろうなっていう予感もあるんですよ。

渡邊:うん、ちょっとは変わっていきそうな気がしますね。ただ、基本的には大きく変わることはないだろうし、変わらないでいて欲しいなって言うか。3P3Bなりのカラーみたいなものが確立されたと思うし、なかなかありそうでないレーベルだったりもするし。

曽根:10年間このスタイルでやってきたから、今さら大きな方向転換はできませんよね。

渡邊:バンドもそうなんですけど、勝負に出すぎて短命に終わるのは避けたいですからね。僕も一度キャプヘジを解散させたので、これでまたバンドが解散するなんて考えたくないんですよ。余りに短命だとバンドの重みもなくなるし、バンドにせよレーベルにせよ、長く続けた成果は必ず後からやって来ますからね。

──まさに継続は力なり、ですね。

曽根:あと、周りの人たちがレーベルのイメージをいい方向に解釈してくれるのも助かってますね。僕らは全く戦略的にやってこなかったですから。

──おふたりの考える"3P3Bらしさ"とはどんなところでしょう。

曽根:いろいろありますよねぇ...真剣なユルさとか(笑)。

渡邊:いい意味でのB級感じゃないですかね。B級ホラーの最高傑作、B級のプロフェッショナルみたいな感じかな。

──"最高傑作はネクスト・ワン"という姿勢が3P3B所属のバンドには共通してある気がするんですよ。発表されるのはどれも良質な作品ばかりなんだけど、次作はもっと期待してもいいという信頼感があると言うか。

渡邊:僕自身もそれは思ってます。まだまだ落ち着いてる感じはないし、もっといい作品ができるはずだと信じてやってますから。まぁ、それはどのバンドも同じ気持ちなんでしょうけど。

──この10周年を機に新規事業に取り組むとかは? 呑み屋を開いてみるとか(笑)。

曽根:うーん、客のグチを聞くのも面倒だし、呑みに行くほうが気楽でいいですよ(笑)。でもやっちゃおうかな(笑)。

渡邊:配信リリースも遅かったレーベルだから、このご時世にまさかのダーツ・バーとかやっちゃいますか?(笑)

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CARRY THAT WEIGHT II

3P3B-60
2,300yen (tax in)
2009.6.03 IN STORES

amazonで購入

01. bed / マンデイトーキング
02. Quick / Day dream
03. threedays film / Oct. note
04. BEEF / DIRECT CONNECTION
05. 唇にジェラシーズ / メトロポリスジャーニー
06. FREAKYFROG / BELIEVE
07. FINE LINES / Subway
08. puli / Without fail
09. ANITA CHILI PEPPERS / エコテロリスト
10. ASPARAGUS / Volt-Ampere
11. SHINOBU NINETEEN / ALL NEW


3P3B VIDEO 0408

3P3B-59
14MVS+BONUS/約93分(BONUS含む)
3,150yen (tax in)
2009.6.03 IN STORES

amazonで購入

2004から2008年にリリースされた楽曲のPV集。BONUSには過去のライヴ映像を収録。
収録バンド:ASPARAGUS, puli, BEEF, SHORT CIRCUIT, NUDGE'M ALL, etc...

LIVE INFOライブ情報

3P3B Ltd. 10th ANNIVERSARY CARRY THAT WEIGHT II TOUR
6月6日(土)名古屋:池下 CLUB UPSET
出演:ASPARAGUS, puli, BEEF, bed, threedays film
OPEN 17:30 / START 18:00
adv. ¥2,500 / door.¥3,000(共にDRINK代別)
info.:CLUB UPSET 052-763-5439

6月7日(日)大阪:梅田 Shangri-La
出演:ASPARAGUS, puli, BEEF, bed, threedays film
OPEN 17:00 / START 18:00
adv. ¥2,500 / door.¥3,000(共にDRINK代別)
info.:Shangri-La:06-6343-8601

6月13日(土)東京:新宿 LOFT
出演:ASPARAGUS, puli, BEEF, FINE LINES, FREAKYFROG, bed, threedays film, Quick
OPEN 16:00 / START 17:00
adv. ¥2,500 / door.¥3,000(共にDRINK代別)
info.:LOFT 03-5272-0382

3P3B Ltd. 10th ANNIVERSARY
CAPTAIN HEDGE HOG LAWRENCE TOUR
6月21日(日)東京:下北沢 SHELTER
6月26日(金)名古屋:今池 HUCK FINN
6月28日(日)大阪:十三 FANDANGO
7月4日(土)東京:SHIBUYA-AX

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