Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューopening('09年2月号)

言葉ではなく、心で感じるものがここにある

2009.02.02

 2007年1月25日に、新宿ロフトでの初ライブで幕を開けたピアノエモ・インストゥルメンタルバンドopeningから、待望の1st.アルバム『黙』がリリースされる。ピアノが核となる彼らのサウンドは、激情と寂寞が共鳴し、聴く者の聴覚だけでなく視覚までも刺激する。言葉は無くても、伝えたいことがしっかりと伝わってくるこの作品は、日本人独特の繊細な旋律に和のテイストを随所に散りばめ、日本だけでなく海外でも受け入れられる可能性を持つ。言葉ではなく、心で通じ合える瞬間を感じることができるだろう。
 今回は多くの人の心を揺さぶるであろう楽曲に至るまでの経緯も含め、openingがどんなバンドなのかをまず知ってもらいたい。(interview:やまだともこ)

最初は歌ものの予定だった

──openingは最初からインストのバンドをやろうと結成されたんですか?

佐藤統(Piano):最初は歌を入れるつもりだったんです。僕がベースで、ギターが山さん(山ノ口裕二)で、もう1人ギターがいて、鳴瀬くんがドラム。ギターの1人が辞めた時にピアノを入れたいって思い始めて、僕がピアノをずっとやっていたのでベースを弾きながらピアノを弾こうと思ったんですが、それは無理だと言うことに気づきベースを置いてピアノを弾くことに決めたんです。

──佐藤さんがピアノを持ち、ベースがいないから探して...。

佐藤:初ライブの1ヶ月前にメン募で福田くんと知り合いました。この時もまだ歌を入れるつもりで、山さんが歌っていたんですが、曲はいいのに歌が全然乗らなかったんです。ライブの1週間前に本格的にこれではダメだと思い、インストにしてアレンジもガラッと変えたんです。最初は歌があればいいのにって厳しい意見をよくもらいました。だから、まずは歌を入れればいいのにって言われなくなるところまでを目指しました。

──どんな努力が必要だったんですか?

佐藤:アレンジです。歌があれば歌を聴きますけど、歌がないから、そこ以外の聴き所を考えたんです。

鳴瀬慎也(Dr):最初はピアノが歌もののバック伴奏をそのままやってるみたいと言われたので、そこから。

──ライブの立ち位置は、昔からピアノの佐藤さんがセンターで後ろ向きに座り、ギターの山ノ口さんは佐藤さんの方を向くという形だったんですか?

佐藤:一番最初のライブは福田くんが真ん中でした(笑)。よく考えると、ステージではみんな内側を向いて演奏してますね(笑)。

──まず、ステージの音とか空気感とか4人で合わせたものを外に発していくという感じなんですか?

佐藤:それでも壁ができちゃったら意味がないので、うまいこと外に発していこうというのは今後も課題です。

──インストのバンドで影響を受けてるバンドっています?

佐藤:いないです。インストはあんまり聴かないですし。インストが好きでインストにしたわけじゃないから(笑)。メロディーを付ける作業では、歌を入れるような感じでやってます。

──ピアノがボーカルの役目を担っているみたいな?

佐藤:そうそう。まさにそれです。

──最初は歌ものを目指していたとおっしゃってましたので、インストに方向転換するには4人の意識を変えないとならないと思うんですが、その辺はスムーズに行きました?

佐藤:インストでやりながらも、次は歌を入れてみようとは言ってましたから。でも、やっぱりしっくり来なくて、そういう意見が出る度にやんわりと聞き流すようにしてました(笑)。初めはインストは目指していなかったけれども、今は全員が目指すところは決まってきたというか、形になってきたという感じですね。

福田健人(Ba):今だから言いますけど、僕が入った時はサビだけ歌があったんです。でも、歌違うなって思ってました(笑)。バックの演奏はかっこよかったので、違う感じにやったらいいんじゃないかと思っていたんですけど。

佐藤:そういうのが重なって、インストにしようって。

──歌を入れるという部分では、今後もあまり考えてはいないですか?

佐藤:astrcoastのひゅーいくんやDURGAのあきゆきくんに、即興で歌を付けてもらってやったことが何回かあるんです。今後もゲストボーカルを迎えることがあるかもしれないですけど、今のメンバーの誰かが歌うっていうのはないかもしれないです。

──ところで、バンド名のopeningはどんな意味を持っているんですか?

佐藤:「襖を開けて自然が一番綺麗に見える幅が掛け軸の幅だ」と宮本亜門さんが言っているのを聞いて、それに感動して、openingはその景色を見せられるバンドという意味を持たせました。ロゴの"O"も書体がちょっとだけ違うんですけど、これは京都にある源光庵(京都にある曹洞宗の寺院 )の丸い窓をイメージしてます。

それぞれの思い出と合わせながら聴いて欲しい

──そして1st. アルバム『黙』がリリースされますが、その前はサンプルのCD-Rを頑張って配ってましたね。

佐藤:鳴瀬くんが一生懸命焼いたんです。1年半ぐらいで約1300枚配布しました。

──Rock on the Rock '08ではライブ終了後に、ステージにお客さんが殺到したと伺っていますが。

佐藤:曽我部恵一さんのライブが終わってお客さんが帰りはじめていて誰も見ていないところでやるのかなと思いながらも、サウンドチェックでキメの『成層圏〜the stratosphere〜』の大サビをサやったら人が集まりだして。デモCDを200枚持って行っていたので、もしかしたらもらってくれるかなっていう淡い期待を抱いてライブ中にボソッと「デモCD200枚持ってきているので」って言ったら、ステージ前の柵がミシミシいうぐらいお客さんが押し寄せてきたんです。その時がきっかけで『黙』がリリースできたんです。

──2年間で環境の変化を感じた事ってありますか?

福田:ライブに知らない人が見に来てくれるようになったのは、自信に繋がりますよ。

佐藤:周りの人がうまいこと助けてくれて今があるので、やっていれば誰かが見てくれているんだなって思いました。

──アルバムタイトルの『黙』は"黙して語らず"みたいなところからですか?

佐藤:以心伝心的な意味です。黙っていても伝わることもある。曲を聴いて感じ取ってもらいんですよ。

──タイトルの文字は、佐藤さんのお父様が書かれているんですよね?

佐藤:父親が日展(日本美術展覧会)で入選した時に見に行ったことがあって、そこで字の持つパワーにエネルギーを感じたんです。それでお願いしました。

──なるほど。曲は、どうやって作られていきますか?

佐藤:イメージが最初に浮かぶんです。

鳴瀬:断片的にあったりするんだよね。

佐藤:そこから曲を作っていきます。何曲かがギュッとなった曲もありますし、すんなりいった曲もありますし。

──インストって、1曲が長いイメージなんですけど、openingの曲はほとんどが5分以内で綺麗に収まってますよね。

鳴瀬:ジャムから作るっていう感じでもないですからね。

佐藤:ジャムらない。こういう感じっていうフレーズがあって、みんながそこに重ねていく。

福田:わかりづらいやつとか好きじゃないんですよ。誰でも聴けるものを目指しています。

佐藤:耳に残って欲しいんです。

──曲作りで意識していることは?

佐藤:聴き所ですかね。今回のレコーディングでは、エンジニアさんに音のことでいろいろ言ってもらって気づいたところもありますし、だからこそもう一歩アレンジに進めた。

──エンジニアさんにはどんなことをアドバイスしてもらいました?

佐藤:キメとか聴き所とか。ドラムが前に出た方がいいとか、ピアノの音だとか。俺らがオッケーでも、もうちょい行ける!って言われて。

鳴瀬:ピアノとベースがお互い細かいことをやっていても意味がないよとか。どんどん明確にできていった感じです。

佐藤:夜中の作業だったので、レッドブルでエナジーチャージしながらね(笑)。

──前からできていたものをこのアルバムに入れていったという感じですか?

佐藤:レコーディングするからって直前ぐらいにできあがった曲もありますけど、前から貯めていた曲がほとんどです。

──曲を作るに当たって、"らしさ"っていうのは自分達の中でありますか?

佐藤:展開ですかね。クライマックスみたいな盛り上がりを。感情爆発ですよ。

──感情爆発といえば『成層圏〜the stratosphere〜』はダイナミックな曲でしたね。

佐藤:これは一番初めにできていた曲です。『男たちの大和/YAMATO』が上映されていた時期に作ったので、実は特攻隊の歌なんです。これに歌詞があって、歌詞も曲もすごく良いのができたんですけど、歌が乗らなくて(苦笑)。でも、戦争反対とか言いたいわけじゃなくて、この曲を聴いてくれる人にもいろんな思いがあって、いろんな生活がありますよね? 詞を乗せて意味を限定したくないというのはありました。音楽を聴いて、歌詞と関係ないけど何かを思い出して泣けてくることってあるじゃないですか。そういう感覚でいいんですよ、聴いて何かを思い出してくれたら。

──他に詞があった曲ってあるんですか?

佐藤:『遠くへ〜beyond〜』ですね。『ホオズキ〜recall〜』は歌詞があったわけではないんですけど、イメージはお盆。終戦記念日もありますし、大事だけど毎日は考えないようなことを思い出してみるという意味合いを持っています。

音を聴いて感じてくれ!

──タイトルが日本語と英語ですけど、これは聴き手のイメージを膨らませやすくするために?

佐藤:日本人に向けて作っているわけではないですし、直訳でもないんですよね。ニュアンスが同じものを並べてみました。

──いつか海外にも進出したいという思いは?

佐藤:あります。外国でライブをやりたいです。

──日本人らしい繊細さが音に出ているから、海外にも進出して聴いてもらいたいって思いましたよ。

佐藤:ジャケットを漢字にしたことで、より和っぽくなりましたよね。

──これからはライブも増えていきますし、自主企画もありますしね。

佐藤:3月にレコ発ツアーが東名阪であるんですが、大阪はライブで初めて行く場所なのですごく楽しみですよ。「私の街にも来て下さい」っていうメールがあれば1人のためでも行きますよ。見てくれる人数が問題じゃないですから。

──『黙』をリリースして、ようやくスタートラインに立った感じですか?

佐藤:まだまだこれからです。

鳴瀬:でも、今まではちゃんとした音源がなくて、相手にもしてもらえないことが多かったので、やっとですよ。

佐藤:ようやく形に残せるものができあがりました。全曲がopeningの100%を詰め込んでいるので、どれがシングルカットされても良い曲ばかりです。

──となると、今年はより大きな活躍をされそうな気がします。では、最後にRooftopの読者のみなさんに一言ずつお願いできますか。

佐藤:Rooftopを読んで、僕らのことを少しでも頭の片隅に置いておいてもらって、聴く機会があったら聴いてもらいたいです。それで、何かを感じたらライブに来てください。ライブを見に来てくれたら、openingの音楽を聴いて忘れかけていた大切なことを思い出すきっかけになると思います。

鳴瀬:今年はあちこちいろんな場所に行って、会う人も多くなると思うので、ライブが終わったら一言声をかけてもらいたいです。

佐藤:「スモークで見えづらいんだよ!」って言ってやって下さい(笑)。

福田:俺と鳴瀬さんは基本的には見えづらいですからね(苦笑)。でも、本当にまずはライブを見に来て欲しいです。CDも良いですけど、ライブのほうがよりいいと思うので、openingの音を直に感じて欲しいですね。泣かせるぐらいのライブができるようになれたらと思っています。

佐藤:見るとか聴くじゃなくて、感じに来て欲しいですね。


opening

IDBT-0004 / 1,800yen(tax in)
2.04 IN STORES

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LIVE INFOライブ情報

2.21(Sat)新宿LOFT

Release tour
3.16(Mon)名古屋CLUB ROCK'N'ROLL
3.17(Tue)大阪 十三FANDANGO
3.31(Tue)東京 新宿LOFT

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