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INTERVIEW

トップインタビューRYOJI & THE LAST CHORDS('08年11月号)

「これが人生最後の作品になるかもしれない」と思って作ってますから

2008.11.01

初期パンク、モッズ、パワーポップ......様々なジャンルを取り込み、ルーツ音楽の空気感を放ちながらも、キッチリとゼロ年代のロックへと昇華させた楽曲を次々に生み出しているRYOJI & THE LAST CHORDSがセカンドアルバム『TRUE CHORD IS HERE!』を完成させた。この夏に新メンバーとして、RYOJIの古くからの盟友YOSHITO(平井義人 REVERSLOW/ex.POTSOHT /ex.YOUNG PUNCH /ex.PENPALS)を迎えて制作された今作は、後にRYOJI&THE LAST CHORDSのターニングポイントとして語られるべき超重要作となっている。「人生最高傑作と言えるアルバムになった!」と語るRYOJIに話を訊いた。(interview : 北村ヂン)

一回、ストレスフリーで音楽をやってみたい

──今回のレコーディングはかなりギリギリのスケジュールだったらしいですね。

RYOJI:はい、今回はさすがに自分でもヤバイと思いました。「本当に間に合わないかも!」って(笑)。

──RYOJIさんはずっとレーベルもやってるし、バンドとしてのキャリアも長いから、作業は慣れてるんじゃないですか?

RYOJI:そこに油断が......「俺は出来る!」みたいな慢心があったんでしょうね(笑)、気付いたらギリギリだったんですよ。「この日に入稿しないと発売日が遅れる!」っていう日の2日前にマスタリングして、その次の日にマスターを入稿したんですが、「あー、これで全部オッケー!」と思って、さすがに疲れて寝ていたら、電話がかかってきて「ご入稿頂いたマスターのデータが読み込めません」って......。その日中になんとかすれば発売日に間に合うということだったんで、マスタリングのエンジニアさんに電話して新しいマスターを作ってもらったんですが、もう......倒れるかと思いましたね。

──何が原因でそんなにスケジュールが押したんですか?

RYOJI:メンバーチェンジが......。

──あ、メンバーチェンジは予定外だったんですね。

RYOJI:前任のベーシストでもお互いにやれなくもなかったんですけど「決断するなら今だ」っていう感じだったんですよね。前任の朱雀くんはもともとNANANINEのリーダーだったので、基本的には自分でやりたい人なんですよ。たまたま声をかけた時はフリーだったのでやってくれることになったんですが、いつかは自分のバンドをやりたいっていうのが彼の中にもあって。前のベースが辞めて、困っている時に助けてもらって感謝してるのですが、新しいバンドがはじまったら彼にはそっちがメインだし、このままお互い気を遣ってやって行く事になるのもよくないかなと思って。それなら、ここで違う道を進むタイミングだかと思って、バンドリーダーでギターの熊くんに話しをしてもらって。

──そこからメンバーを探して......。

RYOJI:というか泣きついて(笑)。友達リストのベーシストの欄が意外と少なかったんで、まあモトサヤでお願いしまして(笑)。YOSHITOは、当時のPOTSHOTのゆるい感じがイヤで自分から辞めて行ったんで12年ぶりに一緒にやる事になったんですけど、すっかり大人になって、俺のやりたい感じがわかっているからやり易いですね。

──無理矢理同じメンバーで続けるというよりは、自分の理想とした音を出せるメンバーを揃えたいという感じなんですか。

RYOJI:もともと、限りなくソロに近いバンドだけど手伝ってと、まず始めにメンバーにも言っちゃってるですけどね。基本的に曲は全部自分が書いて、その曲を一緒にプレイすることが面白いと思ってくれる間はいて下さい、でも他に面白いことを見つけたらそれは引き留めないですよって、そういう約束の下にやってるんです。まだ、みんなと平等に同じ曲数を持ってきて、わきあいあいとアルバム作ろうなんて気持ちにはなれなくて。だったらはじめにやりたいことを言っておいて、それに付き合ってくれる人とやった方が俺は楽しいんです。そこでひょっとしたらバンド・ミラクルみたいな可能性を排除しちゃってるのかもしれないですけど。でも一回、ストレスフリーで音楽をやってみたいっていうのがあったんですよね。

──そこには逆にプレッシャーもありますよね。売れても売れなくても自分の責任っていう。

RYOJI:まあ、バンド名からして責任の所在は明確ですから。大変ですけど、その方が考え方としては楽なんですよね。今のメンバーは他にも曲を書ける人がいるので、その人を納得させるだけの曲を書かないと付いてきてくれないじゃないですか。そういうプレッシャーは逆に刺激になりますね。

LAST CHORDSを辞める時はバンドを辞める時だ

──そこを納得させた上で、自分が100%やりたいという音楽が今回のアルバムには入っているということでしょうか。

RYOJI:まさに今やりたいことをやり切りましたね。こんなにやり切ったことはないかもしれないです。もちろん今までも一生懸命作ってたんですけど、今回は心身ともにより注ぎ込んだかなっていうのはありますね。もう歳も歳なんで、作品を作る度に毎回「ひょっとしたらこれが人生最後の作品になるかもしれない」と思ってますから。だから、100%パーフェクトなものってこの世にはないと思いますけど、限りなくそこに近づけておきたいんですよ。「俺はこのアルバムを作ったからもういいや」くらいのものを目指さないと。今回、予算も期間も少なかったんですけど、その中でかなりベストを尽くせたんじゃないかなと思います。

──歌詞からもそういう「終末感」みたいな物を感じますね。

RYOJI:それは出ちゃってるんでしょうね。歌詞の基本的な核になる部分っていうのは日記の延長なんで、日常で思いついたものを膨らませていくっていうパターンが多いんですよ。普通に生活してて、TV見てたりして、イヤなニュースがすごく多いじゃないですか。だから多分、そういう終末感が歌詞にも出てるんだと思います。

──今回は「この状況から抜け出したい」みたいな歌詞も多いですよね。

RYOJI:今は自分が最高だと思える音をプレイできれば幸せだなって、単純にプレイできる喜びみたいなものをすごく感じながらバンドをやれているんですけど、とはいえ動員がもっとあって、セールスももうちょっとあった方がもっと楽しくやれるのかなとも思うので。もっと良い環境があるのであれば、そこは目指したいと思いますからね。あとは、この格差社会を何とかせにゃアカンという気持ちもありまして。これで本当にいいのかっていう! 勝ち組、負け組とか誰が決めたんだっていうね。そんな状況なのに投票率は相変わらず低い、みたいな。「少しでも変化するために、何でその武器を使わないの?」って思いますもん。だから、ワーキングクラスに対する応援歌というか、「こんなにがんばってるんだからもっと優遇されても良いはずだよ、俺たち」っていう思いも込められています。

──RYOJI & THE LAST CHORDSというバンド名もそうですが、今回のアルバムにも『THE LAST PARTY』『THE LAST SCENE』と"LAST"が入った曲が2曲も収録されていますが、"LAST"という言葉に対して何か特別な思いがあるんでしょうか。

RYOJI:そもそもバンド名を決めようという時に"LAST"っていう単語を使ってバンド名を決めようという漠然としたテーマがあったんですよ。何でかというと、POTSHOTを組んだ時点で「このバンドを一生やれればいいね」みたいなのを掲げてやっていて、自分でもずっとやるもんだと思っていたんですが、それが10年目に「ちょっと無理だな」って辞めるという決断をして、応援してくれてた人たちをある意味裏切ってしまったんですよ。そのPOTSHOTの次にやるバンドなんだから、応援してくれてた人たちに筋が通るようなものにしたいなって、今度こそ最後まで続けるバンドという意味での"LAST"だし、もしこれでダメなら、もうバンドはやらないだろうなっていう両方の意味での"LAST"ですね。だからその辺も含めてこのバンドの「終末感」っていうのは一貫しているのかもしれないですね。......縁起悪いですけど(笑)。今日のライブは今日しかないし、今日来てくれているお客さんも、これが最後かもしれないじゃないですか。だから持てるものを今、全部出してやっておきたい。後悔のないように今を生きようって思ってますから。"LAST"と言いつつ、ちょっとポジティブな意味もあるんですよ。

──最後までやり切りたい、という意味での"LAST"ということでしょうか。

RYOJI:LAST CHORDSはなるべく一生モンのバンドにしていきたいっていうのはありますけど、バンドを辞めるんだったらこれが最後でもいいやっていうくらい、今、心身を注ぎ込んでやってはいますね。LAST CHORDSを辞める時はバンドを辞める時だと......そう言えるだけのメンバーも揃いましたしね。現時点では、このバンドはどんなにペースを落としてもやり続けていきたいとは思っていますけど。

──逆に、POTSHOTではやり切れなかったことがあるからこそLAST CHORDSをはじめたんだと思いますが、そのやり切れなかったことって何なんですか。

RYOJI:ほぼはじめて組んだバンドがPOTSHOTだったんですけど、実はやりたかったことってほとんど実現してるんですよ。バンド組んで、お客さんがいる前でやれたらいいね、7インチを1枚でも出せたらいいね、アルバムを出せたらいいね、海外ツアー出来たらいいね......ってほとんど達成出来たんで。達成していないのは、「楽しんで長く続ける」っていうことと「東京ドームで解散ライブをやる」っていうことなんです。このふたつは矛盾するんですけど、「どっちかを達成するまでは、まだ音楽辞められねー!」みたいな気持ちはありますね。でもバンドを続けるって大変ですからね。みんなすごいなって思いますよ。いっぱい先輩がいらっしゃいますけど、「よくやってるなー」って勇気をもらいますよね。弱気になった時でも、「ロティカ兄さんがんばってるしな」って思って。みんな色々大変なのに、ステージではあんなにロックしてて、打ち上げとかでは未だに朝まで飲んでるし(笑)。そういう先輩がいるうちは、自分も辞められないですよね。

LAST CHORDSはLAST CHORDSでいいんだ

──今、やりたいことをやり切ったという今回のアルバムですけど、またツアーとかを廻っていくと、さらにやりたいことが出てくるんじゃないですか。

RYOJI:そうですね。ファーストを出した時も「やり切ったな」って思ってましたけど、それからツアーをしたことによって改めて気持ちの整理が付いたこととかが結構ありましたからね。

──整理が付いたこととは?

RYOJI:POTSHOTとの決別というか......ファーストを出した頃って、今にして思うとまだPOTSHOTの呪縛があったと思うんですよ。無理矢理「POTSHOTとは違う、新しいことをしなくちゃならない」みたいな力みがどこかにあったんでしょうね。逆にPOTSHOTから引き続き来てくれているお客さんも結構いたので、そういう人をがっかりさせちゃいけないなっていう、ある意味ビビッてる部分もあって、「POTSHOTが好きだった人ならこういう曲調を喜んでくれるんじゃないかな」とか考えて曲をやったりもしてたんですが、意外とそういう曲が空回ってそんなにウケなかったりとか、POTSHOTとはかけ離れてるLAST CHORDSの曲で意外に盛り上がってくれたりして。「ああ、LAST CHORDSはLAST CHORDSでいいんだ」って。勝手にこっちが気にしてただけなんですよね。そういうことに気付かされて。そこで逆に「元POTSHOTのRYOJI」っていうのはずっとつきまとうっていうことも自然に受け入れることが出来ましたね。

──POTSHOTの曲のカバーも、初期の頃だったらやろうとは思わなかったんじゃないですか。

RYOJI:初期のツアーでもPOTSHOTのカバーをやってはいたんですけど、それはLAST CHORDSとしてやれるような曲調の曲を選んでたんですね。今思うと、その中途半端感が逆に失礼だったかなって。最近、フランスのパンクバンドとの対バンがあったんですが、そのメンバーがPOTSHOTのことをすごい好きだってことなので、じゃあPOTSHOTの曲をやろうと、YOSHITOがいた頃のモロにスカパンクな曲をやったんですが、全然自然にやれたんですよ。ファーストの頃の自分だったら絶対に選ばなかった曲だと思うんですけど、「ああ、やれるんだ」って。無理矢理そこを埋める必要はないんですよね。それが今回のアルバムにもつながってると思いますが、色々な余計なことを取っ払って、今はファーストの頃よりもLAST CHORDSとしての完成度が高まったかなって思ってます。

──それでは、今回のツアーはどんなことになりそうですか?

RYOJI:もう自由にやりたいですねー! LAST CHORDSをはじめた当初は「俺は新しいことをやってて自由だー!」とか言いつつも、すごい色んなことを気にしてたと思うんですよ。今はそれがなくなったから、やりたい曲をプレイするし、リクエストがあれば昔の曲もやれる。だからすごいことになると思いますよ、ツアーファイナルのSHELTERは! 完全ワンマンでやるのは1年ぶりくらいだから、普段やってないような曲とかもたっぷりやりたいなって思ってます。

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TRUE CHORD IS HERE!

TV-099 / 2,100yen(tax in)
TV-FREAK RECORDS
11.05 IN STORES

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LIVE INFOライブ情報

11.08(Sat) 高円寺HIGH
12.13(Sat) 下北沢Cave-Be(※ALL NIGHT)

“『TRUE CHORD IS HERE!』 RELEASE PARTY TOUR!”
11.15(Sat) 松山SALON KITTY
11.16(Sun) 高知X-pt.
11.18(Tue) 小倉FUSE
11.19(Wed) 福岡DRUM SON
11.21(Fri) 神戸STAR CLUB
11.22(Sat) 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
11.23(Sun) 京都MUSE
11.24(Mon) 名古屋SONSET STRIP
11.30(Sun) 下北沢SHELTER (ファイナル/ワンマン)

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