昨年の夏にリリースされたコンセプトアルバム『Live in HAWAII』から約1年。ザ・ガールハントのニューシングル『ドレミ=ファンダメンタルズ』がリリース!! 今作では、挿入されている全曲が千葉&増沢による共作となり、これまでのへたれロックというイメージを一新!! とまではいかないが、より音楽と向き合うことで出来上がった作品。ただひたすら真剣に音楽と向かい合ったザ・ガールハントの姿を窺うことができる。とは言っても、それだけでは収まるはずがないのが彼ら。CDではシリアスに、そしてエモーショナルな一面を覗かせているものの、DVDに入っているMC集では"ライブ・パフォーマンスが売り"のガールハントならでは、日頃のライブでもMCで爆笑の渦に導くという、あのMCが30分にも渡って収録。収録場所は各ライブ会場。会場の空気をそのままにパッケージし、後世にまで残る問題作となること間違いなし!!
今回は作詞・作曲を手がける2人、千葉剛久(vo.g)と増沢弘行(vo.g)にお話を訊いた。(interview:やまだともこ)
立ち位置の提示
──『ドレミ=ファンダメンタルズ』は、初めて全曲千葉さんと増沢さんによる共作になるんですね。
増沢:今まではアルバムの中で2曲とかで、全部共作っていうのはやってないですね。今回は全4曲をA面シングルにしたかったんです。どうしたらイメージ的にそうなるかなって思ったら、いつも推し曲だったりPVになるものは共作だったので、全部共作にしたら面白いんじゃないかってやってみたんです。『ドレミファソラシド』は AメロとBメロを僕が作ってサビがひさえさん(千葉)。『ファンダメンタル』は逆。『108』と『ハローハロー』は各自骨組みを作って、お互いが色を足すという感じ。
──歌の振り分けは、自分が書いたところを歌うという感じ?
千葉:『ドレミファソラシド』と『ファンダメンタル』はだいたい半々になるように。相手が作ったところを歌うこともありましたよ。自分が作ってるのに、違う人が歌ってるのも面白いですから。作詞作曲が2人いるというのは、ガールハントの持ち味でもありますからね。
──『ドレミファソラシド』って、音楽をやってる人にとったら基本的なものじゃないですか。この作品から、何か決意をしたものがあったのかなって感じたんです。スタートラインに戻したとも取れますし、"現実に嘘をつかない"みたいな雰囲気も持ってますし。
増沢:今回、シークレットトラックも入ってないじゃない? 今まで以上に真剣に音楽を大事にやっている部分を出したかったんですよ。そういうふうにやりたいというよりは、自然の流れみたいなものでしたね。周りの状況とか、自分が日頃思っていることを歌いたい、と。それは音楽に関することだけではなくて、世の中にも目を向けてますね。うまくいかないのはわかるけど、一生懸命やろうぜって。今までも真面目な部分はあったけど、オブラートに包んだり、裏側にしまって面白い部分だけをフィーチャーしていたんです。でも、今回は真面目にやってみようと思ったんですよね。
──世の中のこととなると、ニュースを見たりとか、そういうことですか?
増沢:世間のムードはもちろんありますけど、一番感じているのは音楽業界とかインディー業界のムード。いつになっても明るい兆しは見えないなっていうところですかね。僕らみたいに、インディーながらもCDを出せてインタビューしてもらえるような人たちがしっかりしないと、若い人たちに夢を与えられなくなってしまいますからね。
──千葉さんもバンドを何個もやっていたり、ライブハウスの経営(新高円寺クラブライナー)をして、音楽業界の風はモロに感じていると思いますが。
千葉:...音楽業界よりも、まず相撲協会のほうが気になりますけど。
増沢:なるほどね。
──ということは、今回は相撲の話をメインテーマに 曲を肉付けをしていったと。
千葉:相撲だけにね(笑)。
──うまいですね。ってそういう話じゃないですよ(笑)。
千葉:責任はあるかなと思いますよ。バンドの立ち位置もそうだし、ライナーもありますからね。何かしらやらないとなって感じてます。でも、音楽業界全体としては、考え方をもう少し変えないといけないのかもしれませんね。
──この歌詞にある"魂はいくらでも売るが どうしてもインストバンドになれやしないだろう"はとても強烈な言葉でしたね。音楽の世界にはいろんなカテゴリーのバンドがいますからね。こう来たか! と思いましたよ。
増沢:インストバンドを批判しているわけではなくて、僕が音楽をやっていく上で、ここだというのを提示したかったんです。インストバンドとかポストロックをやっていると、ギターロックよりも音楽的センスが優れていると思われがちじゃないですか。それを打破していきたいという気持ちは込めてますよ。
──今回はギターも今まで以上に鳴ってますしね。
増沢:この曲のギターソロは今までのガールハントではやらないようなものをやってみたんです。けっこうがんばっているんですよ。
役割をはっきりとさせる
──その中でも今までのガールハントというか、『ハローハロー』のような切ないラブソングもあり。
増沢:『ドレミファソラシド』と『ファンダメンタル』で僕が作った部分は、明らかにラブソングじゃないんですよね。昔リリースした『文句は言わない』という曲の中に「ラブソングしか歌わない」っていう歌詞があって、その時はこのバンドではラブソングしか歌わないって思っていたんだけど、そうでなくてもいいのかなって。それで、他の曲が書けたんだけど、やっぱり1日中音楽業界について考えているわけではないですからね。頭の1行がずっとあって、これをどうにか歌にできないかなって作ったんです。
──年も重ねてきてますし、自分の中で"これだけ"と決めてしまうのも良くないですしね。
増沢:だから、今回は役割をはっきりさせたのは大きいですね。ラブソングはちゃんと歌うし、『ドレミファソラシド』のようにふざけないで伝えることも考えてますよ。2008年のガールハントはこういうモードです。ライブはめちゃめちゃ楽しくやってますけどね。
──『ファンダメンタルズ』のギター2本とベースがハモっているところは、これまでと違う面を出そうとしていると伝わりましたよ。
増沢:そういうのがやってみたかったの。音もすごく凝ってますからね。
──結成して6年で、新たな一面を出せたという感じがしますね。
増沢:『セカイクル』(2007年1月リリースのアルバム)ぐらいから音にこだわるようになっていったんだけど、より新しい作品のほうがこだわりをちゃんと出せるようになったかな。こういうことがやりたいっていうのが明確になってきました。
──中西さんや栗原さんの作業はどうでしたか?
増沢:中チンに対しては、こういうドラムを叩いてほしいって僕らが指示してますけど、クリック(栗原)にはほとんど指示していなくて、どの曲も任せられるからラクですね。自分が想像していないものを弾くので面白いですよ。イメージも膨らませてくれるし、それがバンドをやっている意味だと思うんです。一人が全部指示するんだったらソロでやればいい。
──これまでに何枚もリリースしていますが、もうレコーディングはかなり慣れてきていますか?
千葉:慣れてきてはいますけど、何枚出しても緊張感は常にありますよ。でも、良いものを早いペースでできるようになるのは良いことだと思うし、何度録り直しても結局は最初にやったのが一番良かったりしますからね。
増沢:そうだね。やっぱり1枚1枚大事に作ってますからね。今までに何度もレコーディングをしてきたので、阿吽の呼吸みたいなものはできてきましたよ。
──この作品をリリースして、ツアーにも回るんですよね。音楽業界に明るい兆しが見えていないとは言いながらも、ガールハントはイベントに誘われることも多いですし、良い状況を保っているように見えていますよ。
増沢:それはありがたいですよ。僕らももっと売れなくてはいけないし、動員も増やさなければならないし、もっといい音楽をやらなければいけない。ライブはお誘い頂いても、都合が合わなくて断っているのもあるのですが、本当は全部出たいんです。ツアーにしても呼ばれたイベントにしても、ライブが今すごく楽しいんです。
"MCが面白いバンド"
──ライブと言えば、今回の作品には爆笑のMC集がDVDで付いて、新しい試みですね。
増沢:インディーのバンドがシングルを出しても売れないので、こういうタイミングでパッケージできたのは嬉しいですよ。僕らは売れているバンドでもないし、ツアーで全国を回ることは出来ないですからね。だから、映像が出せることで、こういう人間がやっているんだよっていうのをわかってもらえるのは良いですね。MC集だったら特に人間がよく見えますからね。CDのほうでは真面目にやっているけど、それだけではないことをDVDを見てもらえばわかると思います。
──MC集はどういう楽しみをしたら良いですか? セリフを全部覚えるぐらい見た方がいいんですか?
増沢:いや、1回見て楽しんでもらえればいいと思いますよ(笑)。
千葉:ひとつひとつのネタにタイトルが付いているのが面白いよね。
増沢:あれはクリックが編集をして、タイトルも付けているんですよ。
──よくあれだけのネタがMC中に出てくるなと感心しました。台本とかないですよね?
増沢:ないですよ。
千葉:あのDVDはウケたものだけをチョイスしてるからね。たまに全くウケなくてヒドイ時もあるんですよ。
増沢:一切ウケることなく「じゃあ、曲いきます」って、バンドが曲を演奏することでなんとか誤魔化そうとするっていうね(笑)。
──でも、やっぱりガールハントのライブと言えばMCも楽しみのひとつですから。
増沢:演奏はもちろん一生懸命やってますけど、音楽を聴くことだけがライブじゃない。曲だけを聴きたいんだったらCDでいいと思うんです。でも、ライブだから爆音で聴くことができて、それを演奏している人がいて、MCがあって、30分なり1時間なりトータルのガールハントを見てもらいたいんです。
千葉:最初の頃はMCでは告知ぐらいしかしていなかったですからね。
増沢:気づいたらいつのまにか"MCが面白いバンド"ってカテゴライズされてました(笑)。喋らなければあと1曲〜2曲はできるはずなんですよ。
千葉:ライブの後にお客さんが話しかけてくれるんだけど、「あの話面白かったです」って、曲のこと全然言われないの(笑)。最近はMCのアベレージが上がってきてると思いますけどね。
増沢:ステージに立ったら、そこにいるお客さんを楽しませたいっていう気持ちが強いのかもしれないです。曲の場合でもここでギターソロを入れなきゃっていうのと一緒で、1本のライブでMCはすごく重要なんですよ。それは自分たちもMCをしながらすごく楽しいと思えているので、それが一番ですね。
──PVは今まで世に出したことはあったんですか?
増沢:CDエクストラとかパソコンで見れるのはCDに付けたことがあると思いますけど、ちゃんとしたDVDで出すのは初めてです。
千葉:PV集が出るなんてすごいことだよね。
──昔のPVではメンバーが栗原さんに替わる前のものもあり、ガールハントの歴史を知ることができますね。
千葉:ひさしぶりにヨシダ(前のベース)を見て、一瞬誰だろうって思いましたよ(笑)。
──それはないですね...。とにかく、ガールハントの楽曲とライブの良さが凝縮した1枚になりましたね。
増沢:狙ったわけではないんだけど、最終的にはそうなりました。この作品は、次のフルアルバムに向けての布石という感じ。ここで、改めて僕らを知ってもらいたいと思ったんです。フルアルバムはこれとは一緒にならないと思うけれど、2008年にリリースするシングルとしてはこういうのは出したかった。
──そしてリリースツアーも何カ所か回りますね。
増沢:9月から始まっていて、10月いっぱいまでやって、11月には名阪を回ります。10月4日にはリリースイベントということでお祭りみたいなイベントをロフトでやって、11月27日には下北沢シェルターでワンマン。CDを聴いて気に入ってもらえたらライブを見に来てください。
千葉:とりあえずCDを聴いてDVDを見てもらいたいですね。金額はちょっと高いですけど、ぜひ買ってください。特にMC集辺りには自信があります(笑)。面白いと思ってライブに来てもらえたら嬉しいね。