遅咲きの花は美しい。それは負け犬の遠吠えでは決してなく、歴然たる事実である。ロシアの詩人、プーシキンも「野ずえにのこる遅咲きの花は、あでやかな初花よりも愛(めず)らしくかなしい夢のよすがともなる」という名句を残しているし、派手さはないけれども、初花には醸し出せぬ味わい深さや風格がさり気なく漂うものだ。
THE BUGGY HOLD JIVE'Sという一風変わった名前の3ピース・バンドもまた、着実に大地に根を張って成長を遂げてきた遅咲きの花である。結成は2001年、浮き足立つことなくライヴを軸に据えた活動を7年間じっくりと続けてきた。そんな彼らが来月29日、我が新宿ロフトにてワンマン・ライヴを行なう。昨年発表した渾身作『Passionable』を引っ提げ、敢えて挑む高いハードルである。だが、彼らにはこの7年の間に培った確かな演奏力、研ぎ澄まされたメロディ、"自分で身につけた鎖を解き放てよ"と叫ばれる熱きメッセージが武器としてある。彼らの歌が内包するコクやまろみ、揺るぎない歌の世界観は、新進バンドには絶対に出せない奥深さがあるのだ。THE BUGGY HOLD JIVE'Sという名の遅咲きの花は、今狂おしいばかりに赤く燃え盛っている。(interview:椎名宗之)
"ジャイヴ"="何でもアリ"
──それにしても、インパクトの強いバンド名ですよね。
カイ・コートク(ds, cho):最初はルイがキャバレー・ワルツっていうバンド名にしたがってたんですけど、俺はどうしてもそれがイヤで。そんなスナック界隈だけでウケそうな名前じゃなくて(笑)、もっとバンドっぽいのがいいなと。で、当初はスウィングとかロカビリーみたいな跳ねる音楽を主体にやってたので、その疾走感を"バギー"バイクになぞらえて。あと、彼の好きなジャンプ&ジャイヴ(スウィング・ジャズにブルースとロックンロールを掛け合わせたダンス音楽)から"ジャイヴ"を拝借したんですよ。
──"ホールド"は?
コートク:そこは余り意味がないです(笑)。"ザ・バギー・ジャイヴス"よりも、間にもう1個単語を入れたほうがリズムがあっていいかなと。あと、最後の"〜's"はバンドの証ですね(笑)。
ルイ・タナカ(g, vo):当時は判りやすいロックンロールをやってたんですよ。7年くらい前かな。それがだんだんと変わっていって、いろんなジャンルの要素をあれもこれも取り込んでいくうちに今みたいに節操のない感じになったんです(笑)。"ジャイヴ"の語感には"何でもアリ"っていうニュアンスがありますからね。
──最新作の『Passionable』も、相当なゴッタ煮感覚が貫かれてますよね(笑)。音楽の聴き方も雑食な感じですか。
コートク:そうですね。特定のバンドや音楽が好きで集まったわけじゃないので。俺なんてそんなに音楽は詳しくないし、今も2人にいろいろと教わってるんですよ。
──そもそも、どういう経緯で集まった3人なんでしょう。
ルイ:下北のヴィレッジヴァンガードにあったメンバー募集です。
コートク:最初は俺とルイとビラを貼った初代ベーシストという編成だったんです。ベースの男の子はアマチュア志向で、俺はプロになりたかったので一度は断ったんですけどね。しばらくしてバンドが本格化してバンド名を決めようって頃に、ルイから電話を貰ったんですよ。ベースの男の子は技術的に今ひとつだったし、彼が育つのを見届ける余裕もないから、いっそのこと彼をクビにしようって(笑)。で、「俺か彼か、選んでくれ」とルイに言われて。それでルイと2人で新しいベースを探すようになったんです。ビラも貼ったし、いろんなヤツに会いましたよ。
──その中で今や有名になったベーシストがいたりとかは?
ルイ:いないですね。CLOVERSっていうラスティック・バンドのドラマーは、大阪にいた頃にバンドを一緒にやってましたけど。
──ジンノさんと巡り合ったのはだいぶ後ですか。
コートク:数ヶ月掛かったのかな。なかなか決まらないので、対バンしたバンドのベーシストをブン取ってやろうと思って(笑)。それでいろんなライヴハウスに出させてくれって電話したら、「ベースがいないバンドはちょっと...」って断られまして。7年前はまだベースレスのバンドが不遇の時代だったんですね(笑)。キング・ブラザーズが俄に注目を集めていた程度で。で、新宿の楽器屋でメン募を見たジンノ君から連絡があって、音合わせをしたらバッチリだったんです。
──決め手は何だったんですか。
コートク:明らかに巧かったし、タイム感もあったので。当時、俺は音がデカくて速ければ勝ちだと思ってたんですよ(笑)。もともとハード・ロックやメタルが好きだったので。でも、何もガンガン突っ走るだけがロックじゃないとジンノ君が教えてくれたんです。
ロビー・ジンノ(b, cho):当時は俺もバンドをやりたくていろいろ探してたんですけど、手っ取り早くベースだけ探してるバンドに絞ったんですよ。バギホのメン募には当時好きだったミッシェル・ガン・エレファントの名前があったので、それで連絡してみたんです。
ルイ:単純だなぁ(笑)。
コートク:まぁ、ミッシェルって書いてあるのに、普通にヴィジュアル系の人からも連絡がありましたけどね(笑)。「まずは髪を切ってきてからにして下さい」って感じでしたけど(笑)。
どんな音楽的要素も貪欲に取り込みたい
──バンドのプロフィールを見ると、浮き足立つことなく一歩一歩着実に歩を進めてきた7年間だったことが判りますね。あくまでもライヴ活動に重きを置いて、年を追うごとにツアーの範囲を広げていくという。
コートク:当初から下積みを楽しみたい気持ちが強かったですね。バンドも腐るほどいるこの東京で、地味にのし上がっていくのを楽しんでやろうと。そしたらまぁ...いささか地味にやりすぎまして(笑)。
──7年前はまだバンド・バブルが残ってたし、ライヴハウスも増え続ける一方でしたからね。
ルイ:確かに。でも最近はまたライヴハウスが減ってきて、冬の時代になってきた感がありますけど。
コートク:今こそ俺たちにとって起死回生のチャンスですよ(笑)。
──自主音源も、年1のペースでコンスタントに発表し続けてきたんですね。
コートク:プロになるまで50曲はレパートリーを持て、みたいな話を聞いたことがあったのと、ルイが次々と曲のアイディアを出してきたことが大きいですね。"ジャイヴ"と名乗るだけあって、最初は言葉遊びの多い歌詞が多かったんですよ。
ルイ:そうそう、ダジャレを入れてみたりね。「シースー」って曲があって(笑)、寿司のネタを歌詞に盛り込んであるんです。だいぶ昔の曲なのでずっとライヴでやってこなかったんですけど、一周回って最近はそういう曲があってもいいのかなと思って。
ジンノ:今日もリハでやってきましたよ(笑)。
──日本語の歌詞にはずっとこだわってきたんですよね?
ルイ:英詞はほとんどないですね。こだわりと言うか、単純に英語が喋れないし(笑)。
──昨年末に発表された『Passionable』は、フル・アルバムとしては『One hundred rooolls!!』以来3年振りの作品だったんですね。
ルイ:そうですね。自主じゃない作品は『Passionable』が初めてなんですけど。
──2008年はこの『Passionable』を引っ提げたツアーをずっと続けていますよね。
コートク:自分たちで言うのも何だけど、凄くいいアルバムだと思うので、まだまだ地味に広げていきたいんですよ。まるで行商の如く(笑)。
──年々アルバムが消耗品になりつつあると言うか、1枚のCDの寿命がセミの一生のように短いじゃないですか? だから、渾身の作品をじっくり時間を掛けて広めていく皆さんのスタンスこそ健全じゃないかと思うんですよ。
コートク:たとえば、熱心に聴き込んだアルバムの曲は半分くらいで、あとは知らない新曲ばかりのライヴだと、お客さんも「せっかく聴いてきたのに!」ってガッカリしますよね? 5、6バンド出るライヴだと持ち時間が30分ない時もあるし、そんなに曲もやれない。それなら、前にも俺たちのライヴに来てくれた人が聴いたことのある曲を優先的にやりたいと思うんですよね。
──『Passionable』には「運命のカード」や「HERO」のようなエモーショナルな楽曲を筆頭に、「COUNT9」のような7分を超える激情のスロー・ナンバーもあれば、「福よ来い、恋、ハナトナレ」のようなモータウンっぽいダンサブルな曲もあるし、かと思えばフォーキーな「手紙」みたいな曲もあり、陽気なラテン調の「Rhythm in a bottle」みたいな曲もある。オリジナル・アルバムと言うよりも、何かのオムニバス・アルバムじゃないかってくらいの振り幅ですよね(笑)。
コートク:そうなんです。レーベルの人からも「キミたちは何をやりたいんだ?」と言われたんですけど(笑)、俺たちは特定のジャンルにこだわり抜くよりも、どんな音楽的要素も貪欲に取り込みたいんですよ。それに統一性を持たせるためには歌詞の世界観やバンドの在り方を一貫させて、音楽的にはやりたいことをやろうと考えたんです。
──なるほど。歌詞の世界観は「COUNT9」に集約されていますよね。"まだやれると まだやれると/虫の息でも 天に放つよ"という。
コートク:うん。頑張りゃまだまだ行けるぜ、っていう話ですね(笑)。夢を売る商売だし、余り悲観的なことを歌にしたくないんですよ。まぁ、「COUNT9」は長尺の曲だからなかなかライヴでできないんですけどね。「COUNT9」をやるなら1曲減らさないといけないし。
──「COUNT9」はマキシ・シングルとしても発表していたくらいだから、バンドにとっては代表曲のひとつと呼んで差し支えないものなのでは?
コートク:「COUNT9」を出してから、周囲の反応も変わりましたからね。
ルイ:バギホはこんなにメロウでシリアスな曲もやれるんだな、という意味でね(笑)。
「俺が! 俺が!」と主張したヤツが勝ち
──「情熱エンジン」に顕著なんですけど、サビの昂揚感と言うか感情が鼓舞される展開はバギホ・サウンドの大きな特徴のひとつだと思うんですよ。とにかく楽曲のメロディアスさがズバ抜けてますよね。
ルイ:影響を受けていると言えば、The ピーズなのかな。俺、あのメロディ・ラインが凄く好きなんですよ。ロックももちろん好きだけど歌謡曲もよく聴くし、どれも詰め込みたいんです。それが時にゴチャゴチャになってしまうんですけど、それも手入れをすればいいだけの話なんで。この間もライヴのアンケートで面白いことを書いてくれた人がいたんですよ。「バンド名と曲の雰囲気が全然合ってないけど、それがいい」って(笑)。
コートク:バンド名に"ジャイヴ"という言葉が入ってるから、そういう音楽を期待して見に来てくれる人もいるんですよ。そのたびに「スイマセン、ボクたちしがないロック・バンドなんで...」って思うんですけど(笑)。
──でも、ジャンプ&ジャイヴのように踊れる曲はたくさんあるじゃないですか。
コートク:ありますね。基本は"熱い"のと"楽しい"のが両軸なんですよ。昔から聴く人を踊らせたいっていう思いが根底にあるんですね。ちゃんと振り付けもあるくらいなんで(笑)。
──資料によると、"魅せて! 聴かせて! 踊らせるライヴ!"が皆さんの信条ですもんね(笑)。「花火、再び」はまさにそんな情景が目に浮かぶ、如何にもライヴ映えしそうな踊れるナンバーですけど。
ルイ:そうですね。掛け声のコーラスもあるし、コール&レスポンスもできますからね。
──と言うことは、やはりライヴをやることを前提とした曲作りが多いですか。
コートク:まぁ、ライヴでやらない曲もアルバムには入ってますけどね。「手紙」みたいなアコースティックの曲をやれるのはワンマンくらいだし。
──ルイさんのソウルフルなヴォーカルが聴ける「Silver Moon」も、腰に来る感じがあって気持ち良く踊れそうですね。
コートク:ルイの姪っ子がこの曲をノリノリで唄ってるんですよ(笑)。あんないぶし銀の歌詞をよく覚えたなっていう(笑)。
──でも、一度聴いたらずっと耳に残る曲が多いと思いますけどね。メロディはメンバーの合作なんですか?
コートク:誰かが1曲を丸々作ることは少ないよね?
ルイ:昔は俺が単独で作る曲が多かったんですけど、だんだんと3人で作る比重が高まってきましたね。メロディだけじゃなく、詞もアレンジも含めて。大元のサビは俺が用意することが多いんですけど。
コートク:2対2に割れることのない3人編成だし、何でも3人でやろうという考えが最初からあったんですよね。3対0ならそれでいいし、2対1で意見が割れた時は2が勝つ。ただ、その2を超えたければ1は情熱を持って2を説き伏せなくちゃいけないんです。それだけの熱い思いがあるなら、状況を引っ繰り返せるわけですよ。
──その1の意見が打ち勝って、本来はスローな曲だったのがアッパーな曲調になるようなことはありますか。
コートク:そこまで極端なのはないですね。ただ、裏のリズムを全部表に変えて遊んだりしてると、"これ、案外行けるんじゃないか?"って思うこともあって、それが新曲に活かされたりすることはあります。
──レコーディングの総取りまとめ役が特にいるわけじゃなく、合議制が保たれているわけですね。
コートク:うん。ただ、結局は「俺が! 俺が!」と主張したヤツが勝ちですよ。すべては『Passionable』ですから(笑)。
ジンノにJINROで乾杯!
──話を伺っていて、アルバムの最後を締め括る「虹色飛行船」が何故あんなにジャジーなのかが判りましたよ。もともとそういった素養がバックボーンとしてあったわけですね。
コートク:ルイがジャズ・コードを多用してますしね。俺はそのコードの意味すら未だによく判ってませんけど(笑)。「バギホって珍しいコードを使ってるよね?」と他のバンドから言われることも多いんですけど、ああ、そうなのかな? っていう(笑)。
──「運命のカード」や「HERO」のように、胸を締め付けられる切なさと疾走感が同居する感じがジャズ・コードの成果なんでしょうか。
ルイ:どうなんだろう? 自分としてはそこまで深く考えてるわけじゃないんですけど。
コートク:でも、ただメジャー・コードのまま押しまくる曲って少ないよね?
ルイ:単調な展開の曲は少ないね。メロディには必ず緩急を付けようと思ってるし、1曲に何でも詰め込むタイプなんですよ。
コートク:と言うか、ジャズ・コードってどんなの?(笑) 俺に判るように説明してみてよ。
ルイ:うーん、難しいなぁ...。
コートク:俺は単純に、メジャー・コードは"元気"、マイナー・コードは"悲しい"や"寂しい"って理解してるよ。で、ジャズ・コードは"渋い"なんだけど(笑)。
ルイ:何だろうね。"隠し味"でもないしなぁ...。
──そのジャズ・コードこそがバギホ・サウンドの肝のような気がしますけど。
ルイ:俺の中では、コード進行もメロディという大きな枠組みの中で"歌"なんですよね。メロディの唄ってるラインとコード進行の唄うラインを上手いこと噛み合うように使ってるのがジャズ・コードなんです。判りづらいかな?(笑)
コートク:歌のために弾いてるコードってこと?
ルイ:そうそう。そのメロディに一番活きるコード進行だと思って使ってるんですよ。
──ジンノさんのベースも相当唄ってると思いますけどね。
ジンノ:唄ってますか?(笑) 唄うように弾こうと意識はしてますけど、なかなか難しいですね。
──「少女少年決起せよ(・_・)≫」然り、「福よ来い、恋、ハナトナレ」然り、ベースが核となる跳ねるリズムを基調とした曲も多いですよね。
ルイ:でも、余り4つ打ちの曲はないんですけどね。最近のバンドはそういうのが多いじゃないですか? 他がやってることをわざわざ自分たちでやることもないし。
コートク:まぁ、リズムに関してはかなりジンノ君に鍛えられましたね(笑)。
ルイ:彼(ジンノ)は凄くカチッとしたリズムが好きなんですよ。
コートク:そのリズムをちゃんとキープした上で、グルーヴを前に出すのか後ろに出すのかっていう。
──ライヴにおけるバンドのモットーは? まずは自分たちが楽しむとか、ライヴ中は酒を呑まないようにするとか(笑)。
ジンノ:俺はそれ、ありますね。酒を呑むとまるでダメで、全然弾けなくなっちゃうんですよ。
コートク:ワンマンのMCの時に、客席からジンノ君に酒の差し入れがあったんですよ。ジンノだけに眞露をボトルで貰って(笑)。しかも、ご丁寧にラベルにあるJINROの"RO"を"NO"に書き換えてあったんですけど(笑)。
──当然、煽られて呑むことになりますよね(笑)。
ジンノ:「ジンノ! JINRO!」って大盛り上がりですからね(笑)。勢いに任せて呑んだら、案の定、そこから何曲は演奏がズタボロでした(笑)。
コートク:ジンノ君は打ち上げの時間内で何とか1杯を呑み干すくらい酒が弱いのに(笑)。まぁ、ライヴは俺たちも楽しんでお客さんにも楽しんでもらうのは大前提ですよね。個人的なことを言えば、ライヴは男を魅せる場と言うか。ドラムはもともと花形のポジションじゃないし、後ろから如何に牙を剥き出しにしてやろうかと考えてますね(笑)。4人編成のバンドのドラムと違って、客席もよく見えるわけですよ。だから、そこで如何に過剰な動きをして魅せるかっていう。
──ライヴはそういう魅せ場がたくさんあったほうがいいですよね。単純に楽しいじゃないですか。
ルイ:そうですよね。俺はやっぱり、歌を届けたいって意識が強いですね。たった一言でもいいから、お客さんには何かしらを持ち帰って欲しいと思いますね。
──自分たちの歌をどう受け止めて欲しいですか。労働の後の一献であったり、生きる糧であったり、いろいろあると思いますが。
コートク:いろんなタイプの曲がありますけど、何かしらの救いとなる存在であれば嬉しいですね。まぁ、最近は「人を不安に陥れるような音ってどんなものだろう?」なんて話も出てますけど(笑)。「『かまいたちの夜』のBGMみたいな感じか?」みたいな(笑)。
ルイ:そういう不穏な曲の後に前向きな曲をやると、前向きな曲がより活きるんですよね。もっと判りやすくしたいなと思って。『Passionable』は割とストイックな感じの曲が多かったので、それとはまた違った色の曲をやりたいと今は思ってるんですよ。
7年間の集大成となるワンマンにしたい
──来月は我が新宿ロフトでのワンマンも控えていますが、ワンマン自体は何度目ですか。
コートク:かれこれ4度目ですね。店長の大塚さんからは「40人を集めて40人を狂喜させるか、400人を集めて満足させるか。その間は面白くないな」って言われたんですけど、幅がありすぎですよ(笑)。今までは渋谷のクラブクロールでワンマンをやってきたんですけど、いきなり550人キャパのロフトですから...これは賭けですね。
──『Passionable』という自分たちでも納得の行く作品を完成させたからこそ課したハードルですか?
コートク:そうですね。ずっと地味に活動を続けてきたんですけど、ある程度の達成感がないとダメだと思うし、自分たちで自分たちのケツを蹴り上げたと言うか。
──しかも、250人キャパのシェルターを飛び越してのロフトですからね(笑)。
ルイ:それを含めて、見る人は楽しみにして欲しいですね。コケるのか成功するのかを見届けて欲しい(笑)。
コートク:そう、お客さんにもドキドキしてもらいたいですからね。
ルイ:初めてワンマンをやった時もそうだったんですよ。「お前ら、ワンマンなんてまだ早いんじゃねぇか?」って散々言われましたからね。
──でも、普段やれない曲をふんだんに披露できるまたとない機会ですよね。
コートク:そのぶんリハは大変ですけどね。持ち曲もたくさんあるけど、俺たちは楽譜を書かないものだから、昔の曲は「次の展開、どうだったかな?」と記憶を辿るしかないんですよ。だから、思い出すよりも新たに曲を作り直す感覚も若干ありますね(笑)。あと、"まだまだ立ち上がっていこうぜ"的な曲が増えたぶん、もうちょっと呑気な曲もバランスとしては必要だと思うんですよね。今はそういう曲もリハでやってるんですよ。
ルイ:願掛けじゃないけど、俺はワンマンを成功させるために、なるべくマンガ喫茶に行かないようにしてますね。
コートク:彼は無類のマンガ好きなんですよ(笑)。
ルイ:ワンマンが成功した暁には、三日三晩マンガ喫茶でマンガを読み耽りたいですね(笑)。
コートク:そこまでかいッ!?(笑)
──ちなみに、ロフトに対してどんな印象がありますか。
ジンノ:バンドをやってたら、誰もが一度は憧れるライヴハウスですよね。
ルイ:日本で一番のライヴハウスですね。地元のレンタル・ビデオ屋にロフトのドキュメンタリー・ビデオがあって、それを見て、いつかはロフトでワンマンをやりたいと思ってたんです。東京に来てから、それをひとつの目標にしてきたし。
──ロフトのワンマンを成功させた後の目標みたいなものはありますか。
コートク:たくさんのバンドが出るライヴも面白いんですけど、2マン、3マンくらいの自主企画をゆったりとしたペースでやってみたいですね。あと、ジャンルを限定していないバンドなので、対バンももっとジャンルレスで行きたいんですよ。
──それこそ、ヴィジュアル系のバンドでも良さそうですけど。
コートク:それもアリですね。やるからには、俺はガッツリとメイクをキメますけど(笑)。でも、どうせやるならそこまで徹底して面白いことをやっていきたいよね?
ルイ:うん。もう新人でもないから結果を残さないといけないんですけど、基本的には面白いことをやっていきたいですね。ロフトのワンマンも絶対に面白いと思うし、7年間の集大成となるライヴにしたいです。
コートク:そうだね。7年間しゃがみ続けたぶんだけドーンと飛び跳ねてやりますよ(笑)。