Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューGOOD 4 NOTHING('08年7月号)

悪意に満ちた世界を呑み込め!
生きる証として紡ぎ出された至高のメロディック・パンク!

2008.07.01

2007年に『KISS THE WORLD』と『STICK WITH YOUR SELF』をリリースと、コンスタントにリリースしているGOOD 4 NOTHINGから早くもニューフルアルバム『Swallowing Aliens』が届けられた。バンドが良い状態にあるとおっしゃっていた通り、自身のツアーもソールドアウトを続出させ、各地のフェスにも出演しまくり、今や飛ぶ鳥落とす勢いである。彼らは今年でバンド結成10年を迎え、年齢は30歳となる。10年続けてきたから得たもの、わかってきたこと、また30歳になって余裕が出てきたものがこのアルバムに濃縮されているように思う。まさにファーストアルバムのように鮮度の高い作品である。
今回はドラムのKAWAJINさんが残念ながら欠席であったが、TANNY(vo&gu)、U-tan(vo&gu)、MAKKIN(ba)にお話を伺った。10年経ってもGOOD 4 NOTHINGはまだまだ進化を続けていた。(interview:やまだともこ+ 椎名宗之)
(誌面、WEBともにPHOTO by H.and.A)

マイナスの向こうにあるポジティブ要素

──今回リリースされる『Swallowing Aliens』は、昨年10月にリリースされたミニアルバム『STICK WITH YOURSELF』からかなり早いタイミングとなりますが、今は曲が次から次へと生まれている状態なんですか?

TANNY:まわりの人からは精神と時の部屋に入っているんじゃないかって言われてました(笑)。

U-tan:アルバムを1年ぐらいの目安で出していきたいというのがあって、前作のアルバム『KISS THE WORLD』からちょうど1年半ぶりのリリースになるんですが、たまたまその間に『STICK WITH YOURSELF』のリリースが入ったんです。わりとスムーズにできましたよ。

──『KISS THE WORLD』の発表直後は、いい感じに曲ができるペースを掴めてきたとおっしゃっていましたね。

U-tan:あれからバンドの状態もすごく良いんですよ。でも、実は『KISS THE WORLD』のツアーが終わった時ぐらいからミニの制作に取りかかったんですけど、『KISS THE WORLD』をどうやって越えたらいいんかみたいなところで自分らのハードルを上げて変にプレッシャーを感じてしまっていたんです。だから、すごく悩んで生み出した作品でもあったんですけど、今回はそれを経て吹っ切れた部分があったのか、何をやっても俺らの音になるやんっていうところに気付いて枠を広げられたので、今回はほんまにいい曲が出てきました。

──ライブもたくさんあって、この短期間でよくこんなに粒の揃った曲ができたなって思ったんですが、曲は締め切りが設定されて、集中して一気に作る感じなんですか?

U-tan:だいたいなんですけど、今回は『STICK WITH YOURSELF』を出したあたりで、3月ぐらいにレコーディングをしようかって考えていたのでツアーの合間とかオフの時に曲を作ったりとかしてたんです。

TANNY:僕ら的にはライブと平行で制作をして、どっちも楽しみながらワイワイやれていますよ。体力的にはしんどいですけど楽しくできている分メンタル的には大丈夫なので、気持ち的に糸が切れることはなかったですね。

──『Swallowing Aliens』のジャケットはエイリアンを飲み込むというインパクトがあるイラストですが、この場合のエイリアンとは自分にとって相容れない意味合いですか?

U-tan:最近クソッたれの世の中だと思うことが多いんです。権力を持っている人たちが権力を間違った方向に使っていたり、そうじゃないやろっていうことが多いので、それを全部飲み込んでしまえ!っていう意味なんです。

──アルバムの曲を聴いても、そういうテーマを持っている曲が多いですね。

U-tan:最初に僕らが受けたパンクロックの衝撃がそういう形だったので、その衝撃を入れつつ僕らにしか出されへんファニーな部分もあり、ポジティブな部分もある曲にしているんです。だから、全曲ポジティブに聴こえるようになっていると思いますよ。

TANNY:マイナス要素の向こう側にあるポジティブ要素というのは、けっこう何にでもあてはまるんですよ。嫌なこととか辛いことの向こうには、それ相応のプラス要素が待っている。マイナス要素を自分の中に飲み込んでしまうことによって、ポジティブになろうぜっていうことです。

U-tan:例えば1日8曲レコーディングせなあかんってなったとするじゃないですか。でも、よく考えたら1曲3分ぐらいだから24分で終わるやん。ここで辛いと考えるんじゃなくて、24分なら大変じゃないやんって考えられるぐらいポジティブでいこうぜと。

TANNY:身内が死んだり嫌なことがあったりしても、それは自分に対しての経験値であったり、乗り越えなきゃいけない試練であったり、それによって強くなったり。自分の生きてるありがたみがわかったりすると思うんですよ。考えようによってはポジティブに考えられるんです。

──常に目標の設定値を高めにしたり、限界を乗り越えようぜという曲(『Maximize』)からスタートを切っているアルバムなので、余計に全体的にポジティブな印象を持ちますね。

U-tan:ツアーを回っている間に流れてきた、自分に負けて命を自分で絶ってしまう人のニュースとか見るとすごく悲しくなるんです。死ぬ気で頑張るっていう言葉がありますけど、好きやと思うことに対して本気でがんばってたらなかなか死ねないんですよ。だから、ほんまの意味で死ぬ気で楽しもうぜ、と。辛いと思ったことを越えようとすることがこれからの自分にも繋がるし、今自分が生きてる証にもなるんじゃないかな。

──『Proof of my life』(M-7)にも同じようなメッセージが込められていましたが、皆さんが今生きてる証拠は"音楽"になるんでしょうね。

U-tan:あと、ライブですね。

TANNY:あの空間は特別ですよね。生々しいじゃないですか。リアルな僕らを見てお客さんが盛り上がったり、楽しんでいる空気は何にも変えられないですよ。

U-tan:ツアーをやりたいから音源を作るっていうぐらいライブが好きなんですよ。

TANNY:常に新鮮な気持ちでおれるようにって。

──GOOD 4 NOTHINGのライブは常にお客さんが主役っていうのが良いですね。お客さんが貪欲に楽んでいると思うし、それをステージ上の皆さんがうまいぐあいに煽ってますしね。

U-tan:100人ライブに来てたら100人の思いがあって、今日絶対に楽しんでやろうって来てくれてると思うんです。悲しい事があったから元気をもらいに来たという気持ちでもいいですし、僕ら4人でこの30分のために今日を生きているんだということを見せることによって、みんなに笑顔で帰ってもらわないことにはその日ステージに立つ意味がないんです。

TANNY:そうやって考えたらライブハウスって全員他人で満員電車みたいなものじゃないですか。それなのに他人同士が肩を組んだり回ったりダイブするのを助けたり、一丸となる一体感を生まれさす起爆剤に俺らがなれてるのは幸せなことですね。

U-tan:その時に生きてるなって思うんですよ。

──皆さんがオーディエンスに元気を与えてるところもありながら、オーディエンスのレスポンスを受けて皆さんが元気をもらうことも多いんじゃないですか?

U-tan:ありますよ。キュンキュンにお客さんが入ってくれて汗もかいて、ステージ上の空気もなくなってきて気力だけでやっている時もありますけど、自分こんなに体動くんや!? って思いますしね(笑)。お客さんの声が聞こえると奮い立たされるんですよ。

TANNY:僕らは密着して人がおるわけでもないですから、お客さんのほうがしんどいはずなんです。でも、あんな環境で拳を上げて、楽しもうっていうエネルギーをすごく感じるんですよ。

──今回のアルバムもオーディエンスのことを頭におきながら生まれた曲は多いですか?

U-tan:そればっかりではないですけど、アレンジの段階でライブは想定していますよ。今までは一定のクリックを聴きながらレコーディングをしてましたけど、俺らにしかできない溜め方とかがあるので、クリックを1下げてみたり2下げてみたり、より一定じゃなくてライブに近い作業もしました。

TANNY:俺らもキッズだったので、俺やったらここでダイブするやろとかここでシンガロングほしいやろとか、そういうのは考えてます。

U-tan:今でもオフの日になると好きなバンドのライブに着替えを持ってモッシュしに行きますもん(笑)。


音楽のそばで生きていきたい

──ところで、『C&r』(M-4)は"コール&レスポンス"の略になるんですか?

U-tan:いや。これはライブでアメリカに行った時にできた仲間の歌を歌った曲で、"カールとラウール"っていう意味です。カールとラウールは身長差が30センチぐらいあって、ラウールは背がちっちゃいから小文字なんです(笑)。

TANNY:カールとラウールはバンドマンなんですけど、全ヶ所運転してくれたり物販をやってくれたんですよ。ライブが終わった出口の辺りでは、英語で「日本から来てる友だちやねん」ってステッカーを配ってくれたり。カールとラウールのやりとりは自分たちを見ているようでもあって、距離が縮まっていったんですよ。

──まさかそんな略だとは(笑)!!

TANNY:言わなわからんな(笑)。

U-tan:全て日常で感じたことを伝えたいと思ったんです。言葉とか距離は関係ないやんって思わせてくれた友だちやし。

TANNY:こういう隠しアイテムは今回のアルバムはだいぶ多いよな。

──2曲目の『J.C.』は? "Jesus Christ"の略ですか?

U-tan:そうです!!

──"女子中学生"だったらどうしようかと思ってましたけど(笑)。

TANNY:(笑)逆にアツイっすね。しかもシングルカットで。

──『J.C.』はラップっぽいメロディーでスクラッチの音も聴こえますし、とてもユニークな曲ですよね。

U-tan:あれはアコースティックギターをこすった音なんですよ。元々スクラッチを入れようかって言ってたんですけど、ライブだとできひんじゃないですか。だから、自分らの出来る範囲で探してみようやって。

──あくまで人力にこだわっているという感じですね。

TANNY:アナログ大好きです。音源もなんならテレコでいってやろかって(笑)。

MAKKIN:それはできんやろ(笑)。

──もう1個略語系で言うと『Nice"W"』(M-10)の"W"は?

U-tan:世界ですね。向こうの人って皮肉を言う時に「""(アポストロフィー)」を使ってジェスチャーをするんです。だから皮肉を込めた言い方で"いい世界やんけ"って。それを俺らっぽくファニーにしたんですよ。

──でも、悲観的な世界に対しても決してノーとは言わないアルバムですよね。

U-tan:そうですね。そう言うだけやったら誰にでもできますけど、こんな世の中イヤやって言ってる中でも絶対に楽しめる方法はどこかにあると思うので、俺らはポジティブに考えているんです。

TANNY:バンドが結成して今年で10年目なんですけど、10年の中で辛かったことや苦しかったことを乗り越えたからこそ、辛い時や悲しい時でも楽しめるっていう曲になったんですよ。それを世の中に喩えて歌っているんです。

──10年間でバンドにとって乗り越えなくちゃいけない壁というのは、具体的に言うとどんなことだったんですか?

TANNY:僕個人的にはですけど、やり続けることです。自分は完全に音楽に生かされていると思うんです。それをおっさんになるまでやり続けるというのは根本的に思っていることです。ずっと音楽のそばで生きていきたいんです。

──『same sunrise』(M-5)の歌詞でも似たようなメッセージを言ってますよね。でも、これまでのバンド人生において同じことが続くことのマンネリ感みたいなものはなかったですか?

U-tan:マンネリというよりは、これが当たり前じゃないんだなとは思います。この4人でプレイできてることも当たり前じゃないし、明日が来る約束もない。だからこそ、この瞬間をもっと大事にしたいという思いがすごく芽生えてきました。それは年のせいなのか、バンドを続けてきたからなのかわからないですけど、またスタートラインに立って「初めまして。GOOD 4 NOTHINGのファーストアルバムです。」と言えるような作品になったと思います。

──30歳を迎えたことは大きなことですか?

U-tan:意識的には何もないです。前にSHACHIとAOJと日本ツアーを回った時に、SHACHIが30歳になる誕生日を僕らが一緒に迎えた時のほうが緊張しましたね。もうすぐ俺らも30歳になるんやっていう意味と、SHACHIももう30歳になるんやって。

──ライバルであり、仲間であるバンドが三十路を迎えると考えるでしょうね。

TANNY:世間一般的には30歳になるんだから落ち着くだろうとかあると思うんですけど、逆にみんなが思わないようなことをやりたいですね。

──落ち着いてなんかいないで、もっと馬鹿なことをやりたいとか?

U-tan:そうそう。

TANNY:30歳になってまたスケボーをやり始めましたよ。中高生の時ってスケボーのカルチャーとパンクロックが親密な関係でしたよね。スケボーのビデオを見たらランシドとかが流れていて、かっこいいわというところから音楽に入ったので、スケボーって僕らをバンドの世界に引き込んだきっかけになってるんですよ。今回PVでもやってます。

10年続けてきて得たもの

──バンドを結成して10年って言葉にすると重い年月かもしれないですけど、当人達は10年経ったのかぐらいのお気持ちですか?

U-tan:どっちかと言ったら10年経ったのかという感じですね。いろいろと思い出してみればあんなこともあったって長く感じますけど、濃くていろんなことをやって、バーッって過ぎて行った感じです。

TANNY:だいぶ走っとったよな。

──今回のレコーディングで、10年の成果をふと感じる場面はありました?

U-tan:けっこうあったよな。TANNYとは幼なじみなんですけど、意思疎通が前に比べるとより素早くなったというか、考えていることがわかるようになった。

TANNY:10年っていう意識はしてないですけどなんかあるよな。いろんな景色がちょっと変わってくるというか、自信が湧いてきたし、自分のやっていることに対して胸を張れるようになりました。

U-tan:曲を作っていても、前は「こう?」って聞くと「そうそう、これこれ」っていうやりとりでみんなわかってんなって思ってましたけど、今回はさらに「でも、こうやってみいひん?」っていう意見が出るようになったんですよ。新たなことへ挑戦していけるようになりましたね。それはバンドを10年続けてきた余裕なんかな。

TANNY:10年間でできた土台の上に、新たにアツイ思いを上から振りかけた感じです。

U-tan:まだまだ止まれへんぞって。そんなんも踏まえて、10年っていう節目にファーストアルバムをリリースするような感じですよ。

──『Nice "W"』は、イントロで酔っぱらいながら弾き語りをしているような部分がありましたけど、あれは何を意図しようとしていたんですか?

U-tan:皮肉な歌詞なので、俺らっぽくファニーにするにはどうしたら良いかって考えてああなったんです。俺らなりのパンクロックですね。

TANNY:スタジオの生録りの空気だし、すごいリアルな雰囲気になってますよね。

U-tan:あそこからストップアンドゴーで曲に入って、ダーッって終わる。

TANNY:レコーディングブースに入っているU-tan以外は爆笑してましたね(笑)。

──こういうタイプの曲は10年前だったら形にしてなかったかもしれないと思いませんか?

U-tan:10年前にも好きやったと思いますけど、できてなかったでしょうね。

MAKKIN:ああいう部分はなかったと思う。

TANNY:今だったら、僕らが楽器を持って音を出せば僕らのサウンドになる自信もありますし。

U-tan:高校時代に聴いていた初期のメロディックパンクとかって、こういうテイストの音が入ってましたよね。しかも映像じゃなくて音だから、こんな感じで録ってるんかなって想像をしていたんです。聴いていてプッて笑ってしまうけど、曲が始まったらめちゃかっこええ感じ。

TANNY:現場出身ならではですね(笑)。

──一瞬なんだこれって思いますけど、最後はかっこ良く終わるっていう不思議な曲ですね。かと思えば『Lost Sometimes』(M-12)はスケールの大きい曲で、このまま終わったらかっこいいのにそのままじゃ終わらせない。

TANNY:その後にショートチューンをピッって付けるところは30代の強みちゃうか(笑)?

──20代はかっこつけたいから綺麗におしまいにしたがるかもしれませんね。

TANNY:そんな気するわ。30代の余裕みたいな(笑)。

U-tan:挑戦でもあるな(笑)。

──バンドを始めた当初は先輩がいて目指すものってたくさんあったと思いますけど、今度は自分たちが憧れられる存在になってきて、シーンを引っ張っていかなきゃという思いはあります?

U-tan:このメンバーで19歳からバンドを始めているんですけど、先輩は言葉で言うわけでもないけどいろいろ教えてくれたんです。最近僕らも10年というところで自分らはいつまでも若手だと思っているけど、周りから見るとそういう存在になっているんですよね。地元の堺にはlocofrankとか俺らの世代のバンドがいたり、たまに後輩も集めて3ヶ月に1回ぐらいグダグダに飲むんですけど、飲んでるから普段聞かれへんことを聞いてくれる場にもなるんです。交流が深まると電話番号を訊いたり、ライブを見に行ったりしていますよ。僕が大阪の諸先輩にやってもらったことと一緒でライブに来てくれると嬉しいじゃないですか。自分もそういう年齢なんだなって思います。そこはピシッとせなあかん。

MAKKIN:でも、あの飲みはヒドイですよ。みんなベロベロですから。ええ加減にしろって(笑)。

TANNY:話がわかる人間ばかりなので気持ちもラクだし楽しいんですよ。気持ちの緩みがそうなるんですけど(笑)。いつまでも若手の気持ちではなく、今この瞬間に生まれたバンドの子らにも何か教えていけるような、デカイ背中を見せられるようになりたいというのは最近自覚するようにはしていますよ。


バンドは個人プレイではなくチームプレイ

──『Start this life』(M-6)のようにコーラスの綺麗な曲も、それなりにキャリアがないと勢いだけに突っ走りがちだと思いますが、すごくいいバランスでしたね。

U-tan:コーラスワークに関してはMAKKINがけっこうやってるんですよ。ちょっと前だと3人で考えていたんですけど、MAKKINのスキルが上がっていて、俺とTANNYはたまーにぐらいしか口を出さへん。MAKKINが一人で悩んで最終的に4つぐらい選んだ中からどっちがいいぐらいのことしか言えなくて...。

TANNY:がんばれとしか言えない(笑)。

──コーラスで一番難しいのはどういうところですか?

MAKKIN:ボーカルとコーラスを作る人が違うけれど楽曲を作った人の意図と変えようとは思ってなくて、上が高すぎて出えへんかったら低くしなきゃしゃあないですけど、そうすると曲の印象が変わってしまうんで違う音に変えたりとかそういうところですね。あと細かいところで言えば、3度と4度の違い。1度の違いで曲の雰囲気がかなり変わるんですよ。メインに対して明るい感じに4度で行けば渋めになるし、3度で行けばそのまま明るい雰囲気になる。この曲にはどっちが合うかなって考えますね。

U-tan:ちょっと前の作品からMAKKINが持ってきてくれるようになって、全体のイメージやAメロのバランス、曲のバランスに合うコーラスとか、コーラスに限らずギターのリフであったり、4人が持ってるイメージがだんだん近づいてきていてひとつになりつつあるんですよ。

──ギターリフで押しまくった曲も、コーラスでうまくまとまっている部分もありますしね。

TANNY:ちょっとわかってきたんでしょうね。出しどころ、引きどころ、おいしいところがごちゃまぜになるんじゃなくて、均一においしいところが並んでいる感じになってきたんですよ。

U-tan:あとは昔からアカペラで終わったりするのが好きなんです。その使いどころがみんながここやろ!って言えるようになった。でもそれもボーカル一本で行くんじゃなくて、コーラス3和音で行ってみようやとか、今までのところで終わらずにそこからさらに考えられるようになった。

──メインのソングライターが2人いながら4人の曲の出来上がりに対するブレがないのは、わりと『KISS THE WORLD』のころからそうなりつつあったと思うんですが。

U-tan:そんなんもありつつ、俺とTANNYは今まで1曲に対して7割ぐらいを完成させて持って行っていたんですけど、最近はあまり作りこまんようにして、みんなで作る作業に変えていったんです。そうすることによって信頼関係も生まれるし、自分の持ってたイメージよりも遙かに曲が良くなるんです。

──ということは、デモの段階では余り作り込んでいないということですか?

U-tan:生ギターと鼻歌だけの時もありますよ。前までだと、俺こういうイメージやねんって貫き通してた部分があったんですけど、10年間でぶつかったりもして、ようやく相手の意見を聞き入れられるようにもなりました。

TANNY:今は個人プレイというよりチームプレイという感じです。一人一人がちょっとずつわかってきたというか、たくさん言わなくても伝わるようになりました。ある程度のところまではだいたい土台があって、そこから先は個人のディスカッションです。

──『same sunrise』だったら、アコギの使い方に対する4人の共通意識があったりとか?

U-tan:最初はエレキでやっていてそれもかっこよかっったんでけど、アコギでやってみたらどうやろうっていう意見が出てやってみたらめちゃめちゃあったかみが出て良くなりました。

──こうして今も絶えず化学変化が起こるわけだから、つくづくバンドって面白いですね。

U-tan:化学変化しながらも常にスタートラインが来る。今までの結果を踏まえて第一歩をこれから踏むっていう気持ちにいつもおれるというのはすごくいいですよね。それは10年やってきたんかなって思うとこかもしれないです。

胸を張って聴いてくれと言える作品

──ところで、このアルバムに最初はカバーが入る予定だと伺っていましたが...。

U-tan:ビリー・ジョエルの『The longest time』も入れるつもりだったんですけど、曲は16曲ぐらい録っているしカバーを入れなくても自分らの曲だけで充分表情が見えたので外すことにしたんです。むちゃかっこよくできたんですけどね。

──曲順や選曲はゴール直前まで足掻いた感じがありますね。

U-tan:そうですね。でも苦しいとかそういうイメージはなかったですよ。このほうがええんちゃう? ってワクワクしながら作業できました。いつもやったら、入れる曲数ギリギリしか曲ができひんくて、そんな作業をする余裕もなかったんですけど、今回は曲がたくさんあったために時間が掛かった感じです。

──ちょっとでもいいものを作ろうという意識があると必然的なことですね。

TANNY:ほんまに心の底から胸を張って聴いてくれって言える作品にもしたいし、100点満点を聴いてもらいたいたいんです。

U-tan:だから、時間の許す限りやってみようと。

──カバーを入れなくても自分たちの曲だけで作品として成立したのは、バンドにとって自信にもつながったんじゃないですか?

U-tan:カバーって僕らがやったらこうなるよっていう新しい挑戦もできるじゃないですか。そういう意味では入れたかったんですけど、それナシでも全然できたのはすごく自信になりましたね。

──先程TANNYさんがおっしゃった「何をやってもGOOD 4 NOTHINGになる」という面で、思い切ってカバーアルバムを作っちゃおうという構想はあります?

U-tan:今後やれたらおもしろいと思ってます。

TANNY:あとはショートチューンもやりたいです。

U-tan:今回も最後の『Drive or scrap?』は僕ら始まって以来のショートチューンなんです。毎回1分ぐらいの曲は入れていたんですけど、『Drive or scrap?』は30秒ぐらいですから。これが出来た時は震えましたよ。

──と言っても、12曲で40分切っているのは潔いですよね。無駄に長くするよりは何度も聴いてほしいという意味もありますか?

U-tan:今回は全部の作業が終わってから40分切ってるのやって思ったぐらいで、あんまり意識してなかったですけど、より自然体の中でシンプルなところを目指したんかな。必要なところは必要でめちゃめちゃ凝って、いらんところは良い意味で削ぎ落としていけたから、シャープな仕上がりなのかな。

TANNY:そこのバランスはうまいこととれたよな。

U-tan:やってる時はそこまで気付かなかったんですけど、終わってから考えてみるとそういうことなのかなって思います。

お前らをもっと幸せにしてやる

──今回、曲作りの上で一番苦労した曲はどれですか?

U-tan:今回苦労したイメージがないんですよ。みんながこんなんどう?ってバンバン出してくるから、あんまり煮詰まってもないんですよ。

──『Balance of the world』(M-9)の最後のワルツっぽい感じも面白いアレンジでしたし、緩急の付いた曲のアレンジは大変そうな感じがしますけどね。

U-tan:あの部分はみんなが持っていたイメージとGOOD 4 NOTHINGのイメージがいい感じに混ざりあっていたので、意外とすんなりでしたよ。

TANNY:頭しか聴かへん人にはわからへん部分ですね。すごい好きな人は1曲1曲かみしめながら聴いて、それを見つけた時に最後まで聴いて良かったぁっていうのはありますよね。こんなところにこんなものが隠されとったんやって。追求していけば追求するほどいろんな音が聴こえてくる。できるだけ、コンポで大音量で聴いてほしいなと思います。

──そしてライブは存分に暴れて欲しいと。

U-tan:思いっきり楽しもうと来ているわけだし、俺らはお前らをもっと幸せにしてやるっていう思いでぶっ込んでいくので。

──幸せにしてやるっていいですね。

U-tan:(笑)笑顔で帰ってもらいたいんです。

TANNY:これはライブの時のテーマです。

U-tan:俺らが音楽でキャッチボールすることに夢中になっている姿を見て、自分の人生に取り入れて人生の目標を立ててもらいたいです。僕がそうだったんですよ。ライブを見に行ってすごい衝撃にかられて、家に帰る時にはバンドやりたいと思ったし、誰かの人生の糧になればいいなと思ってます。

──いまだにオーディエンスとしてライブを見てる人が言う言葉だから、すごく重みがあるような気がしますね。

TANNY:僕も音楽に助けられたというか、音楽がなかったらマジでホームレスとかなってんちゃうか?ぐらいの感じやったので。

U-tan:ほんまやな(笑)。

TANNY:土壇場のところにバンドやパンクロックがいてくれたので戻って来れたというか。本当に危ない時期があったんですよ(笑)。だから自分と同じ環境に立ち向かってる人の背中を押せたらなと思います。それって経験してないとわからへんことだし、自分自身いい経験ができていると思います。

U-tan:音楽が持ってる力は計り知れないですね。それは感じるようになりましたね。

TANNY:衣・食・住・音です。

──おお! そういう音楽至上主義なバンドだから、これだけ聴き応えのあるアルバムになったんでしょうね。このリリースツアーがまたたくさん決まっていますが...。

U-tan:単独というかリリースツアーとしてはひさびさなんですよ。いつも30本ぐらいやけど、今回は40本。

TANNY:40本って簡単に言ってるけど(笑)。

──春までスケジュールが押さえられてますからね。

TANNY:改めて考えると命削ってるな(笑)。間にフェスもありますしね。でも1回始まってしまえば楽しむだけですから。ギリギリのところを越えないと見えへん世界ってあるじゃないですか。毎回僕らがそうやってでかくなって視野を広げてきたので、ステージ上で燃え尽きたいなと思いますよ。

──GOOD 4 NOTHINGのライブを見ていても、未だにキッズの味方なのがステージからうかがえましたよ。

TANNY:僕らもキッズ出身というか、そっちの人間だったので誰よりも彼らの気持ちがわかるというか、どこで何が欲しいのかを感じて全力で出してあげるだけです。

──皆さんはプロのキッズなのかもしれないですね。

TANNY:それいいですね(笑)。キングオブキッズやな。俺らはステージにたっているだけで、気持ちは一緒なんです。自分がロックスターだと思っているわけではないし、近所のお兄ちゃんぐらいの感覚で見て貰えればと思ってますよ。


Swallowing Aliens

EKRM-1094 / 2,300yen(tax in)
レーベル: KICK ROCK MUSIC

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LIVE INFOライブ情報

<GOOD 4 NOTHING "Swallowing Aliens" TOUR 2008-2009">
7.23(水)大阪DROP
7.24(木)名古屋APOLLO THEATER
7.30(水)新宿ACB HALL
8.18(月)金沢VAN VAN V4
8.19(火)富山SOUL POWER
8.20(水)新潟CLUB JUNK BOX
8.22(金)長野CLUB JUNK BOX
8.23(土)福井CHOP
9.01(月)千葉LOOK
9.02(火)水戸LIGHT HOUSE
9.10(水)浜松MESCALIN DRIVE
9.11(木)静岡SUNASH
9.13(土)厚木THUNDER SNAKE
9.16(火)岐阜BRAVO
9.17(水)松坂MAXA'
9.19(金)滋賀U★STONE
9.22(月)郡山#9
10.10(金)神戸STAR CLUB
10.11(土)京都MUSE HALL
10.18(土)宇都宮VJ-2
10.19(日)高崎FLEEZ
10.21(火)仙台MA.CA.NA
10.22(水)盛岡CHANGE
10.24(金)旭川CASINO DRIVE
10.25(土)札幌BESSIE HALL
10.26(日)帯広REST
11.01(土)松山SALON KITTY
11.02(日)高知X-Point
11.05(水)米子BELLIE
11.06(木)出雲APOLLO
11.08(土)周南Rise
11.09(日)岡山CRAZY MAMA2
11.15(土)横浜F.A.D.
11.16(日)柏ZAX
11.18(火)甲府KAZOO HALL
11.19(水)熊谷VJ-1
11.29(土)広島CAVE-BE
11.30(日)大分TOPS
12.02(火)長崎Be-7
12.04(木)鹿児島SR HALL
12.05(金)熊本Be-9
12.07(日)福岡Be-1

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