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INTERVIEW

トップインタビューnhhmbase('08年7月号)

ポップスシーンに突如現れた、新世代突然変異バンド

2008.07.01

2004年に結成し、2006年9月にミニ・アルバム『nhhmbase』でデビュー。渋谷を中心に活動を続けるマモル(Vo.G)、入井 昇(G)、渡邊英輝(B)、川村文康(Dr)からなる4人組"nhhmbase"(ネハンベース)が、1st.フルアルバム『波紋クロス』をリリースする。54-71のリーダーこと川口賢太郎氏と、プロデューサー&エンジニアであるヨシオカ・トシカズ氏に迎え入れられ、5日間でレコーディング、ミックス、マスタリングを全て行うという暴挙を達成。その(しごきの)甲斐があって、現在のnhhmbaseが赤裸々に表現された1枚が完成した。地を這うようにして制作されたこの作品は、汗も涙も息づかいもノイズもミステイクも含め、バンドの魅力が充分に伝わってくる。変拍子や転調を繰り返しながら聴いている者を異空間へと誘い込み、今のポップスシーンに新たな"ポップス"を提示する!!(interview:HxGxK+やまだともこ)

CDはプライベートが流出した感じ

──2年振りにニューアルバム『波紋クロス』がリリースされますけど、この2年間はどんな活動をされていたんですか?

マモル:曲作りとか週一ぐらいでライブをやったり、後半の1年間はレコーディングの曲作りをやったり、プリプロを録っていたり研究をしていましたね。もうちょっと早く出せたと言えば出せましたけど、納得いかないところが多くて基礎をやり直そうってクリックに合わせて練習したりしていました。

──バンドの場合2年間リリースがないとなるとどうしちゃったんだろうって思われがちですが、自分たちのペースは保ちたかったっていうところはあります?

マモル:古くからのお客さんは『nhhmbase』を出した頃とはライブの印象も違うし、曲の印象も変わってる感じがすると思うんです。パンキッシュでハチャメチャな感じから、しっかり骨太な感じにシフトチェンジするための2年間だったとメンバーの中ではなっていると思います。弾き方を一から変えたりしてますしね。あとは、54-71のリーダーと仲良くなったのは大きくて、54-71の練習の仕方から影響を受けたりしたんですけど、その時にリーダーに言われたのが「とりあえずクリック消せ」。クリックにバッチリ合った時ってクリックの音が消えるんです。ベースもギターもそういう状態までやれ!って。

──全員クリックを消す状態にしていくんですか?

マモル:はい。その練習をしていたんです。でも、いざレコーディングに入ると、今度は「クリックなんか必要ないよ! 男なら一発録りだろ!」って。

──全部一発録り!?

マモル:全曲一発でほぼ1テイクか2テイク。「もっと録りたいんです」って言ったら「お前らのライブ見てきたけど、どのライブよりもいいよ」って。自分ら的にはミスってるんだけど、「いいよ」って言われたらいいかなって思っちゃうんですよね。だからレコーディングの初日で7〜8曲録って、どうしてもやり直したい曲の最低限のところだけ録り直したんですけど、全部2テイク目で終了。2日目からボーカル録りに入って、全曲1テイク録り終えて、その次の日に2テイク歌いたい箇所を録ったんです。でもサビだけ差し替えとかはあまりしないで、ノリの良い方を選んでどちらかのテイクを丸ごと使う。3日目からミックスに入ってますけど、録り音中心でほぼノーミックスです。

──レコーディングは全部で5日間でしたっけ? 最速ですよね。

マモル:後半の3日間はヨシオカさんの武勇伝とか、ほとんど会話してただけです。僕は5日間フルで録りとかミックスに費やしてOKテイクが出るまでいけるものだと思っていたので、けっこうそこは自分でナメてたのかな(笑)。ほぼ2テイクで終わらされちゃったんですけど逆に実力はそれまでだろうし、現実的な感じの音源になってるかな。

──何回か録れるだろうと思っていたところで1回〜2回で終わらされたら焦りますよね。

マモル:逆に生々しいって言えば生々しいですけど...プライベートな音が流出した感じですよね(苦笑)。デモの仮歌とか聴かせたくない音ってあるんですけど、そういう類のちょっと恥ずかしい感じのものが露わになっています(笑)。

──リーダーやヨシオカさんにアドバイスをもらってできたものは多いですか?

マモル:音楽に対する見方とか変わりましたよ。今ってデジタルで音を変えたり加工したりが流行ってますけど、基本的には全くしない。録り音でコンプとかは若干かけていたりしますけど、基本的にミックスではいじらない。今の音楽業界の主流の音作りとは真逆を行っているのでそういう意味では新鮮でした。

──そう言われてみればザラザラした感じはしますよね。

マモル:あえてザラザラにしてるんです。普通、スネアのかぶっている音とかノイズは消すんです。あと、ギターしか鳴ってないところはマイクをオフにしてミックスで切るんですけど、それを生かしているのでスネアのジャリッジャリッていう音が目立っていたり、僕がボーカルで歌ってない所で深呼吸をしているのが若干入っていたりとか、そのマイクでさえも生かしているんです。

──綺麗すぎない感じがnhhmbaseっぽいのかもしれませんね。

マモル:温度感的にはライブの温度感とは違うんです。緊張感はもちろんありますけど、違った意味での緊張感。ただ、消されるはずのものが消されてないから、両方生きてる音源になっていると思います。

抜き打ちnhhmbase

──こういったレコーディングはアルバムを制作する段階で、バンドがやりたいと思っていたものだったんですか?

マモル:僕らは意図していなくて、プロデューサーの2人にnhhmbaseを料理してもらった感じです。好きなように料理してもらったんですが、かなりキツイスパイスをたくさん加えられましたけど。「男だったらこれぐらい辛くていいんだよ」って(笑)。あの5日間は日本一ハードコアだったんじゃないかと思います。本当に最強のプロデューサーだったので逆らえないんですよ。拉致監禁という言葉もまだ甘くて、その上を行ってましたね。基本的に椅子の横に正座している感じでしたよ。「お前ら椅子座る価値ないよ! 椅子さんに悪いから!」って。

──まさに修行ですね(笑)。

マモル:自分らの考え方とかプライドとか貫き通してきた部分ってあるんですけど、それじゃないところで彼らは貫き通してきた部分があるので、そっちに折り曲げられたというか。

──リーダーがnhhmbaseを気に入って一緒にやろうってなりながら、完全に折り曲げられたと。

マモル:モザイクも入れてくれず、赤裸々な生写真を撮られた感じです(笑)。でも、それが素なんだからって。

──今まで貫いてきたものとは別のところで制作されたとなると、作品が世に出ることに対して不安はないですか?

マモル:僕らの意図しているものとは真逆に振り切れたので、リスナーの反応を見てみないとわからないっていうところがやっぱりあって、「いい」って言ってもらえたら自信になれるかなって思います。

──前作とは全然違う作品になりましたからね。

マモル:録り方も違うし、貫いた部分が全然違うので(笑)。でも、もうちょっとやれたのにっていう後悔はないです。こんな録り方したバンドってなかなかいないと思いますよ。最初はボーカルも一緒に録っちゃえって言われたんですが前日がライブだったので、さすがに今日はキツイってなんとか許してもらえたんですけど...。お願いするっていうのも変な話ですよね。エンジニアのほうが上を行ってますからね(笑)。「技術的には無理じゃないけど、俺を説得するのが一番難しい」って言ってました(笑)。全部出会い頭なんです。抜き打ちnhhmbaseというコンセプトだったと思いますよ。僕らはレコーディングに入る前に完璧に構築して、楽曲も録り方もマイキングも考えていったのに、そんなの取っ払われて。ヨシオカさんは本当に怖い人なので、僕らにも「命懸けでレコーディングに臨めよ」って。死ぬ気でやったので、もうどんなレコーディングも怖くないです(笑)。

ポップスシーンに新たなポップスを提示したい

──全体的に詞はストーリー性というよりは散文になってますけど、こういう表現方法にしたのは?

マモル:『波紋クロス』の歌詞じゃないですけど、アルバムタイトルが『波紋クロス』に決まってからは、『波紋クロス』の歌詞をイメージしてアルバムをまとめていったんです。最後の『フライト前戯』は『波紋クロス』の総まとめみたいな感じ。そこに繋がるようにうまく曲の流れや詞の流れを構成したところはありますね。波紋が1箇所から広がっていく状態を、自分らの音楽シーンに喩えたという感覚。波紋が重なる瞬間は一瞬しかないですよね。青春じゃないですけど、大事な時期って短いんですよ。それは今でも大事にしていきたいっていう思いも込めて、そういう歌詞になっているんです。リーダーは「『パラソルライフ』は胸がキュンとする」と言ってました(笑)。

──マモルさんの青春時代はどんなでした?

マモル:今でも青春だと思ってますが...(笑)。ずっとパンク少年でちょうどパンクリバイバルとかが来ていて、ピストルズの再結成とかそういうのを聴いてましたね。フュージョンとかテクニック志向の音楽とは真逆の音楽に10代の頃はすごく惹かれていたんです。こんな簡単なフレーズなのにかっこいいんだって。そういうスタイルでnhhmbaseをやりたいっていうのは今でも影響されていますね。

──nhhmbaseはテクニック志向のバンドだと思ってました。

マモル:いやいや。テクニック志向というか、簡単なフレーズでいかに気持ちよくできるかということに関しては貫いてます。ある程度フレーズを弾くために練習はしていますけど、そのテクニックを使って曲を作っていることはないので。

──あくまで味付けぐらいの感覚ですか?

マモル:はい。

──バンドを始めたぐらいから、こういう楽曲でやりたいというのはあったんですか?

マモル:変拍子にしたいというのはなくて、キャッチーでフックもあるような歌もので、新たなポップスを提示できたらなって思ったんです。

──マモルさんにとってのポップスとは具体的にどんなものですか?

マモル:売れていればポップスだと思っていますが、ポップスシーンに新しい形で持って行きたいというか、nhhmbaseもポップスになれるんじゃないかっていう提案なんです。

──すごく売れてるバンドとかをうらやましく思います?

マモル:思いますよ。やっぱり売れたいですもん。ポップスになりたいというのはありますね。僕はB'zやサザンを聴いてきたのでそういうのがポップスだと思ってますけど、nhhmbaseを10代の少年少女が最初に聴いたら、これがポップスになるんじゃないかと思います。世間に溢れている音楽は変拍子や転調する曲って多いんですけど、そういう意識では聴いてないですよね。それと一緒でnhhmbaseを聴いてくれたらと思います。複雑なことをやってる意識で聴かなければそっちのシーンと共存できるんじゃないかなって思いますね。

──こういう楽曲だと海外に行ってもウケそうですね、

マモル:今でも意外と外人ウケはいいので海外に行ってもウケると思いますけど、まず自分が過ごしてきた環境で認められたいんです。日本の音楽シーンって雑食性が強いし、数字が命みたいなところもありますよね。それに日本はライブに行かない分CDをヘビーローテーションで聴いている人が多いので、骨太なロックよりも耳障りのいい音楽のほうがウケると思うんです。だから、ライブバンドほど難しい環境なんですが、『波紋クロス』はライブの予習盤として聴いてもらいたいですね。音源はモノラルですけど、ライブに来ればステレオだよ(笑)。

──音楽を続けていくにあたり、nhhmbaseとしては何を伝えていきたいですか?

マモル:ライブで言えば音源にはない生々しさです。ライブは予定調和にしたくないので、セットリストも決めてなくてやっているんですけど、その場の空気でやっていきたいんです。

──では、今後バンドとしてはどうなっていきたいですか?

マモル:『nhhmbase』で構築したものを『波紋クロス』では全く振り切れた方向で録れたので、今後は上手いぐあいに中間地点を録った感じでやっていきたいです。2枚が両極端に振り切れているので、リスナーもビックリすると思うんです。これだけ振り切れることもできるんだよっていうことを提示できたアルバムだと思いますよ。"漢"として(笑)。

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