
最近インストバンドの活躍が目立ち始めている。その中でも、インスト・ロックバンドとして注目を浴びているのがLITEだ。イギリスのレーベルからCD発売をしており、すでにヨーロッパツアーも行っている。ドラムとベース、ギター2本という4人編成でありながら、そこから奏でられる音楽は幅広く、次から次へと違う音、違うグルーヴが飛び出してくる。2ndアルバム『Phantasia』の色味をおさえたジャケットも、「これからこの世界を自分たちの色で染めていく」という意思表示かと思えるほど収録された曲たちはカラフルだ。話を聞いていると、前回のアルバムから今回のアルバムのリリースまでには様々な変化があったことが伺えた。4人で鳴らすグルーヴにとことんこだわる彼らにとって、この変化は音づくりにどのような影響をもたらしたのかを探ってみた。(interview:古川はる香)
新しさを求め、インストバンドに転身
──かなり初歩的な質問ですが、どうしてインストでやっていくことにしたんですか?
武田信幸(Gt):最初は歌ってたんですよ。歌っていうよりは、楽器の一部みたいな歌をやるバンドだったんです。いろんなバンドと対バンしてみると、同じようなことやってるバンドもたくさんいて、その時点で僕らより質のいいものをやっていて。そういうのに触れて、このままじゃつまんないことになっちゃうなと思って、「今勝負できるものってなんだろう?」って考えたときに、歌をやめて楽器で勝負をすることかなと思ったんです。
──歌ありでやってたときは、もうこのメンバーになっていたんですか?
井澤惇(Ba):僕が入ったのはインストになってからですね。
──じゃあ当時は残りの3人で?
武田:そうですね。
──方向を変えようっていう話は3人同時に出たんですか?
楠本構造(Gt):今武田が言ったように対バンを見て、「これはまずくない?」って話は、みんながそう思ったというか、バンドで話し合って出てきたことですね。
──誰かインストバンドが好きだったんですか?
武田:そのころインストとか全然聴かなかったし。どういうバンドがあるのかも知らなかったんですよ。「常に新しいことをやりたい」ってコンセプトでバンドをやってるところがあったので、そういう意味で歌ありのバンドはもう新しくないなっていう部分もあったんです。
──インストバンドになって曲の作り方は変わりました? 山本晃紀(Dr):歌があったときも、インストを先に作りこんで、最後の最後に歌をのっける感じだったので特に変わらないです。
──歌をのせる作業がなくなっただけなんですね。インストバンドって今増えてますけど、LITEの場合すごく緻密に作っている印象を受けたんですよ。音が詰まっているというか。
井澤:むしろ昔のほうが演奏は緻密だったんですよ。1stアルバムのころは、自由に弾くフレーズとかもレコーディング前に絶対決めていたぐらいですから。今も緻密さはありきなんですけど、その中でももっと自由にやっていこうってなってます。
──もっとラフな感じでということですか?
井澤:考え方の自由って意味で、演奏をバラバラにやっていこうって意味ではないです。ただ、気持ち的にもっと大きく客観的に見れるようになったかなと思います。
海外ツアー経験で自由度が増した
──すでに海外ツアーも経験されてますけど、日本と海外のお客さんって反応は違います?
井澤:全然違いますね。外国の人たちってお酒を飲みに来てライブを見てるから、その分楽観的に楽しんでる気がします。日本の人たちはお金を払って見に来てくれますから、ライブを見るためにお金払ってるのと、お酒飲むためにお金払ってるのとでは、全然違うじゃないですか?
──反応が来るポイントも違います?
井澤:LITEは曲の中に結構間があるんですけど、間があるごとに出囃子が鳴るんですよ(笑)。「まだこの後曲あるんだけど!!」って。
山本:合いの手がすごいよね。「イエイ!」みたいのが。
井澤:たぶん使いたい日本語を言ってるみたいで、止まった瞬間に「モシモシ!」って叫ばれたり。全然関係ない!(笑)
山本:あと「スバラシイ」とか。
楠本:演奏する前から言われてたもんな(笑)。
──海外でのライブを経験して、作りたいものって変わりました?
井澤:ある意味、考え方が楽になりましたね。お酒を飲みに楽しみに来てくれて、ワーッと盛り上がって帰ってくれる人が多かったから。そういう人たちの中でやってると、ライブ感がありつつも、地道にやるっていう両立がしっかりしてれば、もっと自由に動いていいのかなって思いました。音源通り演奏しようっていう感覚は、良い意味でも悪い意味でもずれてきてる気がするんです。
──「音源通りに」って意識があったんですね?
井澤:絶対そうするって意志があったわけではなく、それしか考えがなかったんですよ。
──それがライブ感を意識するように?
井澤:ただライブで演奏を変えるって意味ではなく、今回の『Phantasia』でもそれが出てる気がするんですけど、曲を作るときに、「もしかしたらすごくダサいフレーズかもしれないけど、思い切ってやってみよう!」っていうのがすごく良かったりするんですよ。そういうチャレンジができるようになりました。
──今までやらなかったり、避けてきたこともやるようになったんですね。
井澤:まぁそうですね。タブーがなくなってきた。いろんな世界を見れるようになったと思いますね。
MDの録音ボタンを押し続けた成果がここに
──曲ごとのとっかかりは誰かが持ってくるんですか?
武田:そのときによりますね。俺がひとフレーズ持っていったり、ジャムりで作ったり。形になっているものを作っていったことはないです。
井澤:スタジオでやって適当に弾いてたのを、「それいいね、それ弾いてて」って言われて、そこに誰かが入っていくとか。
楠本:そうだね。最初はドラムとギターが刻んでて、そこにベースともう1本のギターがかぶっていくみたいな感じで、4人で作っていきます。
井澤:何かひとつの絡みがあればそれを広げるという感じですよ。
楠本:ソロでやってるなら1人でやればいいけど、曲としてのフレーズという部分になると、ジャムでやっていくほうがいいかなと。
山本:1人で全部を作っちゃえば楽は楽なんでしょうけどね。バンドで集まったときしか曲が作れないから時間はかかるけど、バンドでしか出せない音が出せるし、そのときだけのミラクルもある。最初の構想とはちょっと違うけど、これいいじゃんっていうのがあったりしますからね。
井澤:今回のアルバムは多かったかもしれないです。偶然成功したこととか、思いがけないところにいったのがすごく良かったりとか。曲順もそうなんですよ。海外のレーベルからレコードを出す予定があって、そのためにこの曲順を考えたんですけど、真ん中に『Interlude』って小曲があって『Ghost Dance』が始まる。B面のいちばん最初に聴く曲が押し曲。
──レコードだとA面、B面ありますからね。
井澤:でも、そういうのを考えてこの曲順を作ったんじゃなく、ただ並べてみようって並べてみたら「これいいじゃん」って(笑)。
──フレーズのストックってどうしてるんですか?
井澤:MDです。武田の家にめちゃくちゃありますよ。ジャムを全部録ってるんで。
武田:いいなと思ったジャムは録ります。ジャムってすごく生モノじゃないですか? 1回いいなと思ったのを、「ちょっとそのままやり続けて!」って言ってMDに録るっていうのは常にやってますね。
山本:それはそのときにしか出ない音だから、翌日とかに「あのフレーズやって」って言われても出ないんですよ。覚えてないこともあるし、音がもう違う。
武田:1回止めちゃうと忘れちゃうんですよ(笑)。「それだったっけ?」って。
山本:曲に集中していい感じの状態になってると、本当に覚えてないんです(笑)。そういうときのほうがいいフレーズが出てくるんですけど、あとでもう1回やってって言われてもできないから。いいときに、気がつくと武田が演奏やめて、MDの録音ボタンを押しに行ってるんです(笑)。
武田:録らなきゃと思って(笑)。
──やっぱりそういうのは家でひたすらやるものじゃないんですね。
武田:爆音で鳴らすのは違うし、ドラムとの連携っていうのがすごく重要なんですよ。
楠本:グルーヴ感がね。
武田:いくらギターがかっこよくても、ドラムがついてこなかったらダメだし、ドラムが良くてもベースがのってこなかったらダメだし。その連携が合う瞬間はMDに録らないと出てこないですね。
──そうやって武田さんが録音ボタンを押し続けた賜物が......。
山本:このアルバムですね(笑)。確かに。
何をしても、4人で出す音が『LITE』
井澤:今回ジャムってて、メンバーひとりだけおいてけぼりになるってことはなかったですね。
楠本:例えば3人ができていて、俺だけ固まらないってときは、3人がループしてくれるんですよ。
──いいですね〜。マラソンでゴールが遅れてるとみんなが一緒に走ってくれるみたいな(笑)。
井澤:ちょっとしたいい話(笑)。
山本:でも、出ないときは出ないですけどね。
井澤:そういうときは違う曲に移りますね。今回5〜6曲一緒に作ってたから。前とは違うところって言えば、そうやって同時進行で何曲も作って、ひとりが煮詰まりかけてたら「違うの作ってみる?」ってやったことです。気分転換みたいな感じで。
山本:同時に作ったほうが効率は良かったですね。最初の方とか6曲くらい並行して作って、70%くらいまで仕上げて残りは死ぬ気でやったり(笑)。70%までベースを作ることまでは、まぁできるんですよ。そこから絡みを作ったりするのが難しいんです。
──残り30%が固まらなかった曲はどれですか?
武田:『Solitude』ですね。全体の枠は結構早めにできてたんですけど、それを何回も崩して崩してみたいな感じでした。めちゃくちゃパンチあるフレーズっていうのが入ってなくて、全体的に曲として成り立ってるって雰囲気のある曲ですね。
井澤:『Solitude』は目新しいフレーズがあるわけでないので、曲として生きるには構成が大事になるからって、すごい変化していった曲ですね。
──逆にすんなりできた曲もありますか?
武田:『Interlue』くらいじゃないですか?
井澤:スタジオ内でできた曲だからね。
山本:俺がソファで寝てる間にできてた(笑)。
楠本:レコーディングスタジオで時間が余ったから、「ちょっと1曲くらいアコギで録っとく?」って軽いノリで録ったんですよ。
──そのゆるさはすごく出てますよね。聴いててほっとします。
井澤:それはすごい重要な部分占めてますよね。このアルバムで。ちょっとリセットできるというか。
──曲のバラエティがあるから、人によって好きな曲が分かれますよね。
井澤:バリエーションが多いからこそ、1曲目だけきいて「LITEってこうなんだ」って思ってほしくないんですよ。むしろ「最後の曲すごいいいぞ」ってなるかもしれない。全然違う雰囲気の色が1曲1曲あるから、全体通して聴いてもらえたら幸いなんですけど。
武田:アルバム単位でそうなのかなって気もしますね。今回のアルバムって色もあるけど、これでLITEっていうわけじゃなくて、前回があるから今回がこれで成り立ってる部分がでかいと思うんです。
──4人の共通見解として"LITEっぽさ"ってあるんですか?
井澤:ないなー。俺はあんまり考えないというか。
武田:今回気づいたのは、雰囲気の全然違うフレーズとか弾いても、LITEっぽくなる気がするので。
山本:それが多分LITEっぽさなんじゃない?
──4人で音を出すことが大事?
井澤:多分そうですね。ひとりひとりの癖っていうのはあるじゃないですか? だけど、違うことをやってみようとしてても、4人の色に染まってしまうというか。誰かひとりでも抜けてしまったら全然違うバンドになるんじゃないかと思います。

















