文句なしの最高傑作である。前作『The First Chapter』から2年、locofrankが放つ3rdフル・アルバム『BRAND-NEW OLD-STYLE』は、収録された全12曲の水準の高さ、プレイの一体感と有機的なグルーヴ、緩急の付いた作品の構成力、そのどれを取っても過去随一である。長い時間を掛けて凄まじい本数のツアーを断行したり、データ配信全盛の時代に敢えて7インチのアナログ盤をリリースしてみたり、一見時代錯誤とも受け取れる活動を頑なに続けてきた彼らだが、自分たちの信じる"OLD-STYLE"を愚直なまでに貫くのはバンドの本懐を遂げることと同義なのだろう。自らのバンドの在り方、音楽に向き合う姿勢、そして楽曲の資質を徹頭徹尾シンプルに研ぎ澄ませた結果、彼らは極めて理想的なメロディック・ハードコアの境地に辿り着いた。どれだけ野暮で時代遅れと揶揄されようが、不器用でも陰日向なく己の信念を貫き通せば、いずれ不粋も粋に通ずる。locofrankの奏でる豊饒な音楽はそのことを雄弁に物語っているのだ。(interview:椎名宗之)
やりたいと思う以上はやらなしゃあない
──『BRAND-NEW OLD-STYLE』というアルバム・タイトルは、自分たちが"OLD-STYLE"という意識があって込められたものなんですか。
木下正行(vo, b):と言うよりも、俺たちが憧れて影響を受けて、今も自分たちの根底にある音楽を"OLD-STYLE"と呼んでるんですね。俺たちが日々積み重ねていくものを"BRAND-NEW"として捉えていて、その混じり合ったもの、にじみ出たものが"BRAND-NEW OLD-STYLE"っていうことなんです。
──凄く潔いアルバムですよね。シンプルの極みが更に研ぎ澄まされた印象を受けたんですけれども、いつも作品のコンセプトみたいなものは特に設けていませんよね?
木下:コンセプトはないですね。今回もいい曲を集めて形にした感じです。
──となると、今回主眼を置いた部分はどんなところなんでしょう。
笹原達也(ds, cho):いつもそうなんですけど、吸収したものを出すことですね。前作から2年の間に得たもの、自分たちが今純粋に格好いいと思えるものを出すって言うか。それと、いいものはいいで受け容れるんですけど、それを絶対的に吸収しなければいけないって言うよりは、自分たちが昔からずっとやりたかったことをそのままシンプルに出してみようっていう。それが今回、形になったと思います。
──前作から2年の間にはSECONDSHOTとのUSツアーがあったり、『SET YOU FREE』でSAとのツアーがあったりしましたが、肥やしになるような刺激が多々あったのでは?
木下:自分たちにしか出せない音を出すっていう確たる自信みたいなもの...そういう自分たちにはない部分が、たとえばツアーを一緒に回ったSA先輩やいろんなバンドにはあったので、そこから刺激を受けてもう一度自分たちのバンドを深く掘り下げる、突き詰めていくという意味では凄く勉強になりましたね。
──DVD『Digging our way』や7インチ・アナログEP『I NEED TO BE IN LOVE/Side-by-Side』のリリースがあったせいか、前作からのブランクはさほど感じませんよね。アルバムを出すタイミングは、納得の行く新曲が溜まったら形にしていく感じですか。
笹原:新曲が溜まったらと言うよりは、吸収したものを出したくなった時と言うか、出したいと思った時に作ろうっていう感じですね。
森 勇介(g, vo):ただ、今回は自分たちで締切を作りましたね。"ここまでには出したい"と。それを決めてから作業に入りました。
──よくよく考えると、今年は何気に結成10周年じゃないですか。
木下:ええ。前身バンドから数えるとそうですね。
──そこは余り意識しませんでしたか。
木下:余り。余りと言うか、全然(笑)。
笹原:10周年って言われて、"あ、そうなんだ?"っていう感じですよ。自分たちとしては全然意識してなくて、今回のリリースはたまたま被っただけなんです。
──やっぱり。バンド発信で大っぴらに節目を祝うっていう感じでもなさそうですよね、locofrankの場合。
笹原:最初から意識してないから、そんな発想もないんですよね。特に祝う必要性もないと思うし。祝って頂けるのは嬉しいですけど、僕らがそれを人に強要するのもまたおかしな話なんで(笑)。
木下:locofrankになって10年経ったわけじゃないですからね。シビアに音楽と向き合ったのは10年じゃないと思うし。
──この配信全盛の時代に敢えて7インチのアナログを出すというのも、まさに"OLD-STYLE"の表れのような気もしますが。
笹原:それもやっぱり、自分たちがやりたかったことのひとつなんですよ。自分たちで773Four RECORDSっていうレーベルを立ち上げて、より良い環境を自分たちの手で作ることもそうやったし、その7インチを出すこともずっと夢やったんですよね。僕らが"OLD-STYLE"って言うのもヘンな話なんですけど、自分たちの憧れた人たちがやってきたことが何処かに染み込んでるって言うか。今の時代にアナログを出すなんて意味がないって言われるかもしれないけど、でもやっぱり自分たちにウソはつけないんですよ。やりたいと思ってる以上はやらなしゃあないじゃないですか。
──生臭い話、アナログを作るのはコストも掛かりますしね。でも、7インチのアナログはパンクにとって非常に重要なアイテムなわけで。
笹原:そんな時代錯誤なアイテムも、出すことに意義があると思うんで。よくMCでも言うんですけど、知らないことは恥じゃないと。まず知ろうとすることが大事なんですよね。実際、僕もガキの頃に好きなバンドの7インチを買って、買ったはいいけど聴くプレーヤーがなくて後からプレーヤーを買ったんですよ(笑)。そんなんが始まりやったのをよく覚えてて、それはそれで僕は凄くいい時代やったと思いますし。僕らの音楽を聴いてくれてる人にもそんな経験をして欲しい部分はあるんですよね。
──自分たちの信じるものを、locofrankというバンドを介して若い世代に伝えていくことはとても有意義だし、掛け値なしに素晴らしいことだと思いますよ。
笹原:ただショックなのは、「これってCDプレーヤーで聴けるんですか?」っていう質問がレーベル宛てにあったっていうことなんですけど(笑)。そういうのを聞くと、逆に出して良かったなと思いますね。
本当にやりたいことを際限まで突き詰めた
──2ndミニ・アルバム『Shared time』のツアーが全17ヶ所、前作『The First Chapter』のツアーが全56ヶ所で、本数が3倍近く増えたじゃないですか。そうしたライヴでの経験値が本作に活きている部分もありますか。
笹原:間違いなくあると思います。ただ、それを言葉で表せと言われると難しいですけど。ライヴで培った積み重ねの部分は、何らかの形で残っていくものだと思いますからね。そういったところも含めてこの2年間の自分たちの集大成と言うか、3人の身体の奥底から自然と出てきたものが今回のアルバムには詰まってるんですよ。
──その集大成としての精度が本作ではだいぶ上がったと思うんですが、これまでと違ったアプローチでレコーディングに臨んだとか、そういったことは何か関係しているんでしょうか。
笹原:録り方自体はこれまでと何も変わってなくて、言うたらまぁ、僕らの内面的な部分が変わったってことなんでしょうね。自分たちの取り組み方が変わったのかなと。それが音ににじみ出ていると言っていいんじゃないかと思いますね。
──取り組み方の変化というのは、音作りに対してよりストイックになってきたということですか。
笹原:それももちろんあるし、『The First Chapter』の時と一番大きな違いは、"ホンマに一番やりたいことって何やろう?"というのを突き詰めたことですね。その問い掛けをより研ぎ澄ませていったと言うか。前回は"あれも吸収しなくちゃ、これも吸収しなくちゃ"って取っ散らかった部分もあったんですよ。今回はやりたいことのフォーカスが絞れて、いい意味で鋭利になれたんかなと思います。
──確かな演奏力とグルーヴに支えられた楽曲のクオリティはどれも高いですが、激しさと切なさが交錯した「survive」はとりわけ緩急の付いた構成が見事で、やはり昨日今日のバンドには出せない凄味がありますね。それこそ、10年間"survive"してきた賜物なのかなと思いましたが(笑)。
笹原:いやぁ、そう捉えてもらえると凄く嬉しいですよ(笑)。
──1曲だけ、「Nothing's gonna change my love for you」というカヴァー曲が収録されていますが、ジョージ・ベンソンで有名ですよね。
笹原:オリジナルはグレン・メデイロスっていう80年代のポップ・シンガーみたいなんですけどね。カヴァーしてる人が結構いるみたいで。
──日本では鈴木雅之さんによるカヴァーがCMに使われていたし、若いリスナーも馴染み深い曲なんじゃないですかね。
笹原:でも、みんな結構知らないみたいなんですよ。サビが来てやっと"何か聴いたことあるな"くらいで。たまたま僕がずっと好きな曲で、カヴァーしたかったんです。ガキの頃にテレビのCMか何かで流れてたのをずっと覚えてて、ここ数年の間にCDで聴く機会があったんですよ。で、"この曲やったんか!"と思って何回も聴くようになって、自分たちでもやりたいと。
──カヴァー曲を入れるプランは最初からあったんですか。
森:そうですね。アルバムには1曲カヴァーを入れたいなと思って。僕らも、好きだったバンドのアルバムを聴いて"この曲、カヴァーなのか"っていうのを知って、そこから原曲を聴いた経験があったので、そういうのを受け継ぎたかったと言うか。
──原曲が秀逸であればあるほど、それを解体・再構築する楽しみも大きいですよね。
笹原:そうですね。「Nothing's gonna〜」のようなスロー・バラードは余計に悩むところも大きかったんですけど、完成した時の喜びはもっと大きかったですね。
森:歌メロをちゃんと活かしたかったんですよ。ただ速くするというよりは、メロディを大事に残したかった。
笹原:それに加えて、自分たちの形の中にどうやってこの曲をハメていくかっていうのが凄く難しかったですね。
──歌メロを活かすのはこれまでの諸作品でも一貫してこだわってきたことだと思いますが、「Nothing's gonna〜」のカヴァーに限らず、全曲それがより特化されているように思えますね。
森:歌メロを引き立たせることはいつも重視してますからね。
笹原:ただ、今回は曲に対する取り組み方が変わった気がしますね。作品を重ねるごとに、気付かないうちにひとつひとつの音のバランス感覚みたいなものがみんな揃ってきたと思うんですよ。
──そのバランス感覚に長けてくると、アレンジも余り考えすぎずにピンポイントで形になりそうですね。
笹原:そうですね。この3人の音を合わせるとスムーズにアレンジが生まれてくる感じはありましたね、今回は特に。
──「From eighteen」のように目まぐるしく曲調が変わる曲は特に、細部にわたってアレンジを練らないと成立し得ないように感じますけれど。
森:でも、実は「From eighteen」が一番仕上がりが早かったんですよ。
木下:逆に難航したのは「My own place」とかですね。メロディの部分も、展開の部分も凄く難しかったですね。メロディを聴いて何かを想像させられるようにしたかったと言うか、それでいてシンプルなものにしたかったんですよ。そこにもうひとつ世界観みたいなものが加わると、もうちょっと見えてくるものがあるんじゃないかというところでメロディを付けたかったんです。そういった意味で凄く苦労しましたね。
──その苦労を微塵も感じさせない流麗なメロディですけどね。
木下:いやいや、もう血便が出るくらい苦労しましたよ(笑)。
笹原:僕は、「relations」がレコーディングで一番ハマりましたね。僕の中では新しいことが結構入ってて、その意味では挑戦した曲だったんですけど、凄く難しかった。全体のノリを出すのが特に。
このメンバーだからこそ立ち上げた自主レーベル
──「relations」という曲は、そのタイトル通りバンドとオーディエンスの関係性、メンバー3人の関係性、それらの絆の深さをテーマにしたものですか? 英詞なので完全には聴き取れなかったんですが。
笹原:仰る通り、それに近い感じで歌詞は書いてますね。
──バンドのキャリアの中でもかなりスタンダード性の高い1曲だと思いましたけど。
笹原:僕ら自身、余りそういう感覚はないですね。どの曲も僕らの中ではある意味オーソドックスやなって感じなんで。
──森さんのギターも、オーソドックスだけど過不足なく適材適所で響き渡っていますね。
森:変化球は投げられるけど敢えてストレートで勝負すると言うか、そういうのをどの曲でも心懸けたんです。ライヴでの経験値が増えると技巧的にやれることが増えるんですけど、シンプルで判りやすいリフを如何に出すかに専念したんですよ。もちろん現時点での自分を全部出し切るのは大前提で、その上でシンプルさを貫くのが自分なりの挑戦だったんです。そこは細かいところまで考えて、割と素直に出せた気がしますね。
──テクニックに走ろうと思えば走れるのに、それを抑えてシンプルに徹するのは難しいことですよね。
森:凄く難しいですね。3人のアンサンブル的にも難しい。まぁ、今は3人ともツアーに向けて必死になって練習してますけど(笑)。
──木下さんの歌も、本作ではシンプルさに特化したように感じますね。
木下:そうですね、ヘンに飾らないようにはしました。演奏がシンプルでシャープなので、それとまた違った厚みを出す意味でも歌は重要だと思うんですけど、雑念の入った感情みたいなものが入るとグチャッとした曲調になってしまいますし。曲調も捉えつつ、詞の意味も捉えつつ、今自分にできることを素直にやったつもりなんですけどね。
──あと、ベースの1音がぶっとい塊のようで、低音が心地好く響いているのも本作の特徴のひとつなのかなと。
木下:音色にはこだわったんですよ。もともと余りテクニックがないもので、単調なんですけれども。その単調なのも最近は弾けなくなってきたので、目下練習中なんですよ(笑)。
──でも、どのパートも音の輪郭が際立っていて、それぞれが有機的に絡まっているから、サウンドの総合力は過去随一だと思いますよ。
森:たとえば僕が単音を弾いていると、他の2人が必然的にそれをカヴァーしてくれるというような、そんなバンド・サウンドにはなってきたと思いますね。各人が他のパートの音をちゃんと聴いた上で、自分が出したい音を出しているのを感じますね。だから、バンドとしての音をそれぞれが客観視できるようになってきたんだと思いますよ。
──そういったアンサンブルの妙は、10年にもわたる3人の"relations"が為せる技なんでしょうね。
笹原:それはもう、否めないとこやと思います。
森:良くも悪くも、ですけどね(笑)。
──でも、これだけ付き合いが長いと、たとえば長期にわたるツアーでも"もう顔も見たくない"みたいなことはありませんよね?
木下:"なんでコイツと組んだんやろ?"っていうのがたまにありますよ(笑)。ただ、それがズルズル行かないと言うか、思ったことはその場で言うことにしてますね。だからケンカになることは余りないですよ。
──ステージに立って1音鳴らせば、"やっぱりこの3人だな"と思うのでは?
木下:そうですね。ただ、この2人が好きだからこうして一緒にやってるんですけど、好きだからゆえに思うこともあるんですよ(笑)。
笹原:まぁ、そこは僕らの人間くささやと解釈して下さい(笑)。
──極めて人間くさい3人だからこそ、今までいろんなものを吸収して咀嚼して自分たちにしか作れない音楽をやってこれたんじゃないですか。
笹原:誰か1人だけじゃダメですよね。バンドのヴィジョンとして、全員が同じ方向を向いてないとできひんと思いますし。
──自主レーベルを立ち上げて早2年が経過しましたが、ようやく軌道に乗った感じですか。
笹原:まだまだこれからですね。手応えはこの先きっと感じていけるんじゃないかと。そのぶん苦労も増えるでしょうけど、達成感も大きいんやろうなと思いますね。
──では、今はまだ種を植えている段階ですか?
笹原:種を蒔いて、ツアーで肥料を施す感じですかね(笑)。
木下:でも、嬉しいもんですよ。全部が全部、リアルに自分たちに返ってくるし、俺たちとスタッフのチーム内で肌で感じられることばかりですから。俺たち自身が蚊帳の外になることはないし、レーベルを始めて良かったと思ってます。
──ただ、音楽に専念できる時間も減って、いろいろと気苦労も多いように感じますが...。
笹原:まぁ、苦労は何もないと言えばウソになりますけどね。でもそこはサポートしてくれるスタッフもいるし、みんなで力を合わせてやれてるので、不安要素はそれほどないですね。そもそも、この信頼できるメンバーだからこそ立ち上げたレーベルですから。逆に、このメンバーじゃなければ自主レーベルなんて僕らはとてもできひんかったと思うし。
ライヴは自分たちの感情を剥き出しにする場所
──今回のレコ発ツアーは、『The First Chapter』のツアーに若干及ばず全45ヶ所で敢行とのことなんですが、それでも凄まじい本数ですよね。
笹原:まぁ、僕ら自身としては妥当な数字やなと思ってますけどね(笑)。
──『The First Chapter』のツアー全56本を達成した時は、意外とまだ余力があったりしたんでしょうか。
木下:いや、1ヶ所ごとに持ち得る力を全部出しきったつもりだったので、56本をやり終えた時はそれまで感じたことのない清々しさを感じましたね。その時にメンバーのことが好きになりましたね(笑)。
笹原:今さらかい!?(笑)
森:僕も安堵感と同時にすべてを出しきった感が強かったので、次に自分たちがやりたいこと、やるべきことを模索する気持ちになかなかなれなかったですね。56本のツアーというのは言うまでもなく通過点で、そこから何に繋げていくかが凄く大事なわけなんですが。
──それだけの長期ツアーだと、笹原さんの体脂肪燃焼率が一番高そうですよね(笑)。
笹原:そうでしょうね。ファイナルを迎えた時には体重が5キロほど落ちてましたから。会う人会う人に言われるのは、「痩せたね」じゃなくて「こけたね」なんですよ(笑)。まぁ、最近は体調管理も自分なりにコントロールできるようになりましたけど。いい経験ですよ。
──もちろんちゃんとした意図があって、それだけの長いツアーを回っているんですよね?
木下:前回は、それまで47都道府県を回ったことがなかったので、日本でツアーをやる以上は隈無く回ろうと。
森:その地方地方でもちろん温度差はあるんですけど、僕らとしてはそれすらも凄く新鮮に感じられるんですよ。
──ステージ上から見ると、47都道府県ごとの県民性みたいなものってやっぱりあるんでしょうか?
森:どうなんだろうなぁ...。実は余り客席を見てないんですよね(笑)。
笹原:気にならないっちゃ気にならないんですよね。都道府県によって反応は違う気もするんですけど、それも僕らの思い過ごしや考え過ぎもあるような気がするし...。ただ、地方のいろんな所に行っても、コイツはホンマに自分たちのライヴを好きでいてくれてるんやなっていうのは感じますけどね。
木下:東京にはいろんなバンドがいてはって、ライヴを見るのが身近にある環境だと思うんですよ。地方の場合は小さなライヴハウスがそこしかないとなると、自ずと貪欲さも強まりますよね。俺たちが地方でライヴをやっても"待っててくれた感"がハンパじゃないですからね。もちろんそれは東京でも大阪でも変わらないんですけど。
──今回のツアーは、久方振りに我が新宿ロフトも入れて頂いて有難う御座います(笑)。
笹原:いやいや、こちらこそすいません(笑)。今まで『SET YOU FREE』のイヴェントでロフトにお世話になることは多々あっても、レコ発とか自分たちの冠でロフトのステージに立たせてもらうことが全くなかったので、申し訳ないくらいだったんですよ。『SET YOU FREE』のお陰で、ロフトでやらせてもらってる感を勝手に持ってたんですよね(笑)。でも、よくよく考えてみたら、自分たち主導では何故か一度もやったことがなくて。
──ちなみに、皆さんの中で新宿ロフトはどんなイメージがありますか。
木下:憧れの場所ですよ。ライヴハウスが増えてきた現状もあるのかもしれないですけど、お客さんとバンドが一緒になって育つことのできるロフトのようなライヴハウスは減ってきた気がしますね。
笹原:バンドの自主企画をライヴハウスと共に育んでいくケースも減ってきた気がするんですよ。減ってきたからこそ、そういう機会をひとつでも多く自分たちで作ろうと思いますね。
──ツアー・ファイナルは新木場STUDIO COASTというキャパシティの大きいライヴハウスですけれども。
笹原:それは新たな挑戦と言うかプレッシャーですね、自分たちに対しての。ああいう広い場所で僕らがどれだけそこに見合うバンドとして成長できているかを確認する意味合いもあります。「小さいライヴハウスならいいけど、STUDIO COASTみたいな大きな所でやるとlocofrankはダメだよね」って言われるようじゃダメだし、大きな場所でも何ら変わりなく自分たちを100%発揮できるかどうかがテーマだと思ってるんですよ。そういう大きな場所でライヴがちゃんとできるからこそ、普段やってるライヴハウスでやれることも十二分に発揮できると思うんですよね。
──今秋、STUDIO COASTのステージに立つ時は44本もの連戦を経てのものですから、locofrankの"BRAND-NEW OLD-STYLE"がどれだけ確立されているか楽しみですね。
森:そうですね。ライヴは自分たちの感情をそのまま放出する場ですし、その日にしか出せない感情を剥き出しにすることを貫かないとウソになってしまうんです。体調が良かろうが悪かろうが、その日にできることを全部見せたいし、それを見て何かを感じて欲しいですね。
木下:locofrankというバンドが完成したとはまだ全然思ってませんし、いつ完成するのかも全然判りませんけど、俺たち自身が理想とするバンド・サウンドを今以上にもっと突き詰めていけば、もっと面白くなると思うんですよ。俺たちも感情を剥き出しにするし、ライヴを見に来てくれた人たちも感情を剥き出しにして、それがぶつかり合うガチンコ感を濃くして楽しみたいですね。
笹原:とにかく1本1本いいライヴをやって、1本1本打ち上げでスパークできるようにしたいですね。遠足は帰るまでが遠足であるように、ライヴは打ち上げまでがライヴですから(笑)。