SUPER BEAVERの1st.ミニアルバム『日常』がリリースされる。メンバーが18歳から20歳という、2007年にRooftopでインタビューをした中では最年少ではないかと思う4人が届ける、日常のすぐそばにある泣き笑いの感情。それが彼らのポップでキャッチーなロックサウンドに乗せて届けられる。ボーカル渋谷に至っては存在感抜群というか、歌声もキャラも向かうところ敵なしと思えるぐらい、できすぎたキャラに隠された、最高にあたたかく響く歌声の持ち主。このギャップに驚きを隠せず...(笑)。「今年高校を卒業しました」という言葉に若干のめまいを感じたが、若いながらにもいろんなことを考えているから、世代間を感じさせない曲が出来上がるんだと思う。今の彼らだからできる曲、そしてリアルな感情が込められた詞を聴いて頂きたい。(interview:やまだともこ)
踏み出している不安
──この度リリースされる『日常』は初の全国発売ということで、これまでの自主とは制作してる時から気持ちは違いました?
一同:違いましたね。
渋谷(Vo):コメントをいただいてたりとか、新鮮なことばかりです。
上杉(Ba):いっぱいかまってもらえるようになりました(笑)。
柳沢(Gt):今までCDはライブ会場で手売りだったので、CD屋さんに並ぶこと自体がすごいですからね。
──では、タイトルの『日常』にはどんな思いが?
柳沢:僕が歌詞を書いてもみんなが書いてもそうなんですけど、自分自身が思ったこととか考えたこととか、身近なことを歌ってる曲が多いんです。レコーディングをするときに選んだ曲も結果的にそういう曲が集まったので、僕らのそのままが入っているという意味を込めてこのタイトルになりました。自然と言えば自然に決まったんですよ。
──『日常サイクル』(M-1)で言えば、リアルな感情が出ていると思いました。
柳沢:作ったのが高校3年生だったんですけど、その時は今後のことっていうのが、中学から高校とかよりもものすごくリアルなものだったんです。大学にしろ、就職にしろ、音楽をやるにしろ、漠然としたものじゃなくてそれぞれの道を考えるっていうのは怖かったんです。今は音楽がやれて、これからの楽しみはでかいですけど、もう踏み出してしまっているので不安も同じぐらいあるんです。そういうのが表れています。
上杉:偽って歌詞は書いてないからね。自分の感じたこととか思ったことを書いてるから。
柳沢:ギターを弾きながら歌ってる時に無意識のうちに考えていることとかが描かれているので、そういう意味では生々しさはあると思います。
──言葉がなかなかうまくハマらないなど、苦労された曲はありました?
柳沢:僕はあんまり苦労してないですね。このアルバムに関しては1曲1曲すんなり出てきましたよ。
──作詞作曲者である柳沢さんは、今までどういう曲に影響を受けてきましたか?
柳沢:何に影響を受けたっていうのは自分の中ではっきりしていないんですが、自分の中でいいなとかグッとくるメロディーのバンドが好きで、そういう意味ではメロディーを大事にしたいなと思ってますね。だから、ランキングに入ったJ-POPを聴いたりとか、中学生の時はパンクバンドをやっていたのでハイスタから始まって歌モノの男っぽいロックとかも聴いたりとか、今でもいろんなのを聴きますね。
──皆さんは?
渋谷:僕は80年代のハードコアも好きですし、ドリカムとかスピッツとかも大好きですし、日本のアンダーグランドのパンクとかいろんなものを聴きますよ。
上杉:渋谷はCDをいっぱい知ってるんですよ。僕は、あんまり聴かないです。
藤原(Dr):僕は、J-POPの流行りも洋楽もレゲエもパンクもJ-ROCKも聴きますね。
──『日常』はメロディーがすごく聴きやすかったので、みなさんの聴いてるJ-POPの部分が根底にあってこういう曲ができたのかなと思いましたけど、では曲はどういう時にできます?
柳沢:作ろうと思って向かっちゃうといろいろ考えちゃうので、適当にギターを弾きながら大きい声で歌っている時にメロディーができたり、口ずさんでいた詞から広げていくと自分でも納得できるものができるんです。
──柳沢さんが作詞をしているということは、渋谷さんは作詞者の心境を一回自分の中で消化して歌わなければならないと思ってしまうんですが、そのへんはどうですか?
渋谷:変な話、何も考えてないです。彼の気持ちをくみ取ろうとかじゃなくて、先入観を持って歌ってない。彼の作るメロディーとか詞が好きなので、何の抵抗もなくすんなりとできてる部分はあります。自分なりに歌ってるだけなんです。
──『noise』(M-4)の詞は、上杉さんとの共同作品でしたが、ご自身が書いた詞とはやはり気持ちの入り方は違います?
渋谷:歌っていて歌いやすい言葉とかあるので、ここでメロディーが上がってくれたら気持ちいいのになっていうのはありますけど(笑)、それは自分にしかわからないことなので、それに合わせて歌詞を書いたりはしましたよ。自分が書いたほうが間違いなく歌いやすいですけど、ヤナギが書いた詞も歌いやすい。
──『日常サイクル』『グッバイ』『noise』以外が新曲だそうですが、新しく曲を作っていく中で昔作った曲とは心境が変わったと感じることはありました?
柳沢:『無常の風』(M-2)はけっこう昔の曲なんですよ。それをアレンジし直してやっている曲なので心境的には変わってないですが、『いつかの風景』(M-5)は高校時代の時に書いた曲があって、卒業してからその詞を読み返した時に「結果的にいい思い出だった」とようやく時間が経ってから思えたことを詞にしてみました。
──『僕が生きる世界』(M-6)では、詞の最後に「僕等が生きる世界は 本当は素晴らしいから」と言われてますけど、現実的に今のこの世界って素晴らしいと思います?
柳沢:十何年しか生きてないので何を知ってるわけでもないんですけど、ニュースを見たりして少なからず感じることはあるんです。例えば僕等が世界的に売れてるバンドだったら別ですけど、今「LOVE & PEACE!」って言ったところで何も変わらないと思うんです。それなら、身近なところで大事な人達のことを考えて思ったりすることによって、みんなが繋がっていけば素晴らしい世界になっていくんじゃないかなって思ったんですよ。
客観的に判断ができる強さ
──演奏の面で、藤原さんはアレンジに相当口を出されるそうですが、今回特に気にして作られたのはどんなところですか?
藤原:『日常サイクル』のイントロは、最初からもっとグッとくるようにしようってなったので、そのパターンはみんなで何種類か作りました。昔はイントロがグダーっとしていてバラバラな感じでしたけど、聴き手も聴きやすく自分らも気持ちいいようにするためにはいろんなアレンジをして、最初とはかなり変わった曲です。『グッバイ』はこういう曲ってあんまりないんですけど、ミドルテンポも自分は得意だったので、わりとパッとできましたね。
柳沢:レコーディング中に口を出すというよりは、僕が案を持ってきた時点で口出しを一番するのが彼なんです。
藤原:僕は歌詞を書けないし好きなアーティストの曲しか知らないので、客観的に見るのは得意かもしれないですね(笑)。
──メンバーでありながらお客さんとしての感覚も持っているってこと?
藤原:一人ぐらいそういう人がいないと。ドラムで一番後ろから見てるので、そういう立ち位置になれたらいいかな。
柳沢:ただ、藤原が言ったアレンジをやったときに「やっぱ違う」って何度もやり直すこともありますけど。
藤原:打楽器しか鳴らせないので、ギターとか歌のイメージがないんです。だからやってみてもらわないとわからないので、理想とはかけ離れた曲になったりするんです(笑)。
──アレンジ自体は個人の作業になるんですか?
上杉:フレーズに関しては全て個人の作業ですね。それを合わせてみて、ここで止まるとかギターが薄くなるから支えて欲しいとか、フレーズ一音一音に対しての意見は言わないですね。
柳沢:スタジオに持ってきて「せーの!」で合わせた時によくわからないぐらいバラバラなこともありますけど、それをちょっとずつ修正していくっていう感じかもしれない。
──その時渋谷さんは?
渋谷:椅子に座って聴いてます。楽器陣の話でまとまった音を客観的に判断できるのは僕なので、「どう?」って聞かれたら答えて。ここでは傍観者として。
柳沢:それぞれが感性を信頼しているというか、アレンジも藤原の意見が絶対というわけではなくて、彼の感性を信頼できているというのがあるので、うまいバランスでできているんじゃないかなと思いますね。
──アレンジをしていて意見が大幅に分かれた曲ってあります?
柳沢:あんまりないですね。根本的に歌を聴かせたいというのが軸にあるので、そんなにぶつかることはないですね。
上杉:譲り合いの精神だよね。
藤原:『日常サイクル』は1回ボツになった曲なんです。全然まとまらなくて、それは編曲の俺らが悪いんじゃなくて元が悪いんだって…。
柳沢:僕はメロディーと歌詞はすごく好きだった曲だったので、持って帰りつつもやりたいんだけどなって思っていたんですよ。それで時間が経ってゼロからみんなで作りました。
上杉:もう一度みんなで作り直したり話し合ったのは初めての曲だったかもしれないよね。
──そういう思い入れがあって1曲目に?
柳沢:アレンジし直してライブでやるようになったらすごく良い感じになって、お客さんの反応も良くて、すごく自信が持てた曲です。僕等もすごく好きですよ。