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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】mock orange(2007年9月号)- 自分達のインスピレーションの赴くままに活動していきたい

自分達のインスピレーションの赴くままに活動していきたい

2007.09.01

昨年には盟友the band apartとのスプリット盤『DANIELS E.P.』をリリースしたmock orangeが、実に3年振りとなる自身のニュー・アルバム『CAPTAIN LOVE』を完成させた。ちょっと時間が掛かってしまったが、待たされた甲斐は充分すぎるほどある。リズム隊、ツイン・ギター、そしてヴォーカルと、どれをとっても他のエモ系バンドとは一線を画す、ひとクセもふたクセもある音楽性が更なる極みに達した本作は、間違いなく彼らの最高傑作と呼ぶに相応しい仕上がりだ。会心のニュー・アルバムをリリースした後の10月には、当然のようにthe band apartと共同で行なう日本での全国ツアーが控えている。最新作からのナンバーを生で体験できるその日を心から楽しみに待っていよう。(interview:鈴木喜之)

安易な支持を求めて曲を作ろうとは思わない

──こんにちは。前回の来日時(2004年11月)に対面インタビューさせていただいた者です。あなた方の新作『CAPTAIN LOVE』、非常に素晴らしいアルバムだと思っています。まず、表題になった「Captain Love」とは1曲目のタイトルでもありますが、これはいったい何を意味するのか、どうしてこの言葉を全体のタイトルにしようと思ったのかを教えて下さい。

Joe:「Captain Love」は歌詞の世界観がとても気に入って、アルバム・タイトルも同じものにしたんだ。明確な意味はなくて、表面的にはダークなイメージの単語が多く使われているんだけど、全体が与える印象としてはポジティヴなところが気に入ってるよ。

──それにしても、前作『mind is not brain』から、いつの間にか3年が経ってしまいましたね。この間はバンドにとってどんな時期だったのでしょうか? なんだかツラそうな期間もあったみたいですが。それをどんなふうに乗り越えてきたのですか?

Joe:僕達はいつでも音楽的に前進したいと思ってる.キッズ達はアルバムごとに変わる僕達のスタイルに戸惑うことも多いみたいだけどね。だけど、安易な支持を求めて自分達が飽きてしまったスタイルの曲をまた作ろうとは思わない。常に成長していきたいし、音楽でお金を稼ごうというよりは、自分達のインスピレーションの赴くままに作曲し、活動していきたいから。だから、今のバンドの状況をそこまでシリアスには捉えてはいないよ。

──来日時のインタビューで、次のアルバム、つまり今作について「すでに完成した曲が13曲あり、そのうちの10曲がアルバムに収録されることになると思う」と発言してましたよね。実際に『CAPTAIN LOVE』(日本盤)に収録される13曲は、その13曲と一致するのでしょうか? それとも、その後3年の間に何か変化があったりしましたか?

Joe:アルバムのうちの何曲かは、前回のインタビューの時に話した曲だよ。全くの新曲は「Captain Love」「Song In D」「Smile On」「Lila」、それと「Supergang」だね。この前来日した時すでに出来ていた13曲に加えて、その後の期間でライアンと僕で書き溜めた曲が何曲かあって、合計20数曲のうちから選んだものが今回のアルバムに収録されているんだ。収録されなかったものも悪い曲ってわけじゃないから、何かのタイミングで世に出したいと思ってる。

──楽曲は、前作ではライアンが中心になって書いたということでしたが、今作の収録曲はどのようにして作られていったのでしょう。過去の作品と比べて、出来上がるまでのプロセスに何か変化があったりしましたか?

Joe:基本的な僕らの作曲プロセスは、まず僕とライアンの2人でガレージに座ってセッションするんだ。ライアンがギター、僕がベースをプレイしてラフなアイディアをある程度の形にする。曲のアイディアはライアンが持ってくることが多いね。その後、一回ラフなデモ・トラックを録音して曲全体の感じを見てみる…もし良さそうならバンドに持ち込んで各パートのメンバーの様々なタッチを加えていき、mock orangeの曲に仕上げていくんだ。今回変わったことと言えば、今までの作り方とは別にバンドでセッションしながら作った曲もあるってことかな。一片のアイディアの状態からバンドで合わせながらみんなで曲を作っていった。「Majestic Raincoat」はそんなふうにしてみんなで書いた曲さ。逆に「Old Movies」みたいにライアン一人で全部作ったものもあるよ。

──来日時には「次のアルバムは、もっとファンキーでカントリーっぽくなる」とも言っていました。その時に思い描いていた方向性は、実際にこのアルバムでその通り実現したと思っていますか?

Joe:そんなこと言ったっけ?(笑) ファンキーではあると思うよ。カントリーっぽいかどうか判らないけど、影響はあると思う。

ジャパニーズをロックする準備は万端だぜ!

──アルバム本編を締めくくる11曲目「Old Movies」はバンジョーを使ったような、確かにカントリー色の濃いナンバーだと思います。この曲はどんなふうにして書かれたのですか?

Joe:ライアンが作ってきたこの曲のデモを聴いて、僕達は思ったんだ、何も手を加える必要はないって。デモの段階で充分良い曲だったからね。だけど、アルバムを通して聴いた時に少しだけ録音状態のラフさが気になったから、やっぱり録り直したんだ。ただ、構成やフレーズには何も手を加えていないよ。

──USインディーのギター・バンドは、パンクが基本にあるせいか、みな疾走感のあるスムーズなビートが主体になった人達が多いですが、あなた方の曲は、ハネるグルーヴを持った、引っ掛かるところの多い独特のリズムを持った曲ばかりですよね。こうしたリズム面でのフィーリングは一体どのようにして培われてきたのでしょう?

Joe:ドラマーのヒースはちょっと崩したパターンのドラム・フレーズが好きみたいで、彼の叩くリズムが楽曲に与えている影響は大きいと思う。それにベーシストのザックの上手く緩急を付けたフレージングが合わさって、大きなタイム感を持ったグルーヴが生まれているんじゃないかな。直線的なビート感よりも、グルーヴィーな曲のほうが最近の僕達の好みに合ってるというのもある。

──新作はセルフ・プロデュースで作るつもりと語っていましたが、実際に自分達の力で作り上げたのですか? そうだとしたら、初めてセルフ・プロデュースでやってみてどうでした? また、どちらかと言うとアナログ録音の質感を大事にしているというあなた方でしたが、さすがに今作ではデジタル・レコーディングも試してみたりしたのでしょうか?

Joe:基本的に今回のアルバムはセルフ・プロデュースだね。だけど、友人のエンジニア、ジェレミー・ファーガソンにも手伝ってもらったよ。彼は Be your own PETやCerys Matthewsなんかを手掛けた人物だ。僕達は古い録音機材を山ほど彼の家に持ち込んでレコーディングを始めた。ヴィンテージの録音機材もあれば新しいものもあって、プロツールス内でミックスしたものをアナログ・テープに録ったりもしたよ。アナログな質感は好きだけど、それだけにこだわってるわけでもないし、実際デモを作る時は自宅のプロツールスで作業しているしね。

──アルバムを完成させた今の気持ちと、今後どんなふうに活動していきたいか、ヴィジョンを聞かせて下さい。

Joe:新しいアルバムには満足してる。前作より少しだけラフなサウンド…言ってみればデモ・テープのような雰囲気を意識して録音した。バンドでレコーディング・スタジオに入ると、神経質に全てを完璧に仕上げようとしてしまうことがあって、それはそれで良いんだけど、その過程で個々の演奏のニュアンスや、曲の持つ微妙な表情が失われてしまうこともある。だから今回はデモのような荒削りな演奏のフィーリングと、全体の整合感を両立させることを心懸けたんだ。上手くいったと思うよ。活動については、特に焦らずにマイペースにやっていきたいと思ってる。音楽ビジネスの在り方も凄いスピードで変化していってるしね…。

──さて、10月にはすでに来日公演、久々のthe band apartとのツアーも決定していますね。かなり大きな会場も含まれていますが、日本のオーディエンスを相手にどんなライヴを見せたいと考えていますか? ひとつ抱負をぶちかまして下さい。

Joe:ジャパニーズをロックする準備は万端だぜ! 日本のリスナーにはとても感謝しているし、こんなに頻繁に日本へ行けるなんて、僕達はホントに恵まれてるよ。そして今回は新しい曲をたくさん演奏することになるだろうし、サポート・メンバーを加えた5人編成のライヴは日本で初めてだし…前回よりもっとウィスキーの力が必要になることは確実だね!

CAPTAIN LOVE

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