Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】SISTER PAUL(2007年3月号)- 倒錯した男女ツイン・ヴォーカルがいざなう夢遊病者の夢

倒錯した男女ツイン・ヴォーカルがいざなう夢遊病者の夢

2007.03.01

男性ソプラノと女性アルトが絡み合う倒錯ツイン・ヴォーカルに激しく疾走するベースとドラム、そしてグラマラスな容姿という、問答無用唯一無二のギターレス・ロックデュオ・バンド、シスターポールから、前作から2年振りとなる5thアルバム『夢遊病者の夢 I』が到着! バンドの成り立ちから近年のギタリスト脱退によるトリオからデュオへの変貌、そして新作へ至る経緯を、ヴォーカル&ベースのススムさんとヴォーカル&ドラムのマッキーさんに訊きました。(interview:宮城マリオ)

ツイン・ヴォーカルのスタイルは結成時から

──それではまず、バンドの成り立ちから教えて下さい。

ススム:成り立ちだと、マッキーちゃんが入る前だよね。最初は5人で始めたのよ。1992年に。僕はまだベース弾いてなくて、ギター/ヴォーカル。ギタリストが3人おったん。僕は、フォークギターでお茶を濁す感じで、あと、ベースとドラムで5人。一番最初、バンドを思いついた時から、2人でヴォーカルをしようというのがあって、僕がフォークギターをかき鳴らしながら高いパートを唄ってね、そしてその当時のベースが低いパートを唄って。

──ツイン・ヴォーカルのスタイルは結成時からあったんですね。

ススム:そう、最初から。ほいで、人が変わるたんびに一緒に唄ってくれる人を捜して、いまだにそのスタイルは後をひいとるね。何かつながってきてないと、バンドの名前一緒にする意味ないもんね。で、結成後1年くらいで行き詰まっちゃって、休止状態になっちゃったのね。そこで僕が、1年間旅に出たの。その間、バンド活動は完全に休止。ギター持って1年ずっと海外を旅行しとって。アメリカからバスで下って、メキシコから、本当は1年かけて中米南米をずっとまわって…と思っとったんだけど、ジャマイカとかいろんなところ行ってるうちに時間切れで、結局南米に入れず中米止まりだったの。

──バックパッカーをされてたんですね。

ススム:バックパッカーとかそんなかっこいいもんではないけど。ま、一応背中にはバックとギターを背負っとった。だから本当にその1年は音楽活動をまったくしてなくて。旅行中に曲はできるんだけども発表する場所がなくてね。持ってたのがエレキギターだったもんで。フォークギターでもよかったんだけど、かさばるもんでね、エレキギターの軽いやつを持って行った。で、そこいら辺でやるにしてもエレキギターだと電気がないと大きな音なんか出んもんなんで、人に発表することがなくて。そしたら、バンドやりたい気持ちが凄く強くなってきて、日本へ帰ってきたその時にもう、ずっとバンドをやって生きていこう、って決めたの。で、今に至っとる。日本へ帰ってきた時にちょうど30歳だったかな。みんなだいたい30歳くらいになるとバンドするのをやめてっちゃうんだよね。で、1年前にやっとった人たちの中でまだ暇な人集めて、1stアルバムのメンバーになったの。

──じゃ、それから1stアルバムのレコーディングに入ったんですね。

ススム:そう、'94年の頭からバンドを再開して、曲はもうだいぶあったもんで、'94年の終わり頃に録音しようってレコーディングして、そして'95年に1stアルバムを自主制作発表。今回のも自主制作だけど。

──今回の5thアルバム『夢遊病者の夢 I』のレーベルが1stアルバムと同じクロウカスレコーズですよね。

ススム:そうそう、1stの時に作ったレーベルで眠っとったのを、また掘り起こして。ま、同じ名前でかまわんもんね。ほいで…なかなかマッキーちゃんが出てこんね。まだね(笑)。

マッキー:うん(笑)。

ススム:マッキーちゃんまでまだまだだいぶ遠い(笑)。で、3人でやっとって、その時は、5人の時のギターの人が入って、その人と唄っとったの。ギターが低いパートで、僕が高いパート。僕、高いパートが好きなもんで、いつも高いパートばかりとってる。ドラムは何回も替わったね。で、'96年に人に紹介してもらってマッキーちゃんが入って。その1年後くらいに、ギタリストが家庭の事情でやめてって、次のギタリストとしてフォックスちゃんが入ってきて。最初、練習スタジオで唄ってみてもらったんだよね。そしたら、悪くはないんだけど、何となくシスターポールとは違うかなって感じがしたかな。で、マッキーちゃんに唄ってもらって、ほったらもうそれで決まった。それで、バンドやってる人は判ると思うんだけど、何かの調子に、ずーっと、ぐーっと来る時があるんだよね。なかなか全然うまく行かない時期があっても、何かの調子でわーっとうまく行く時があって、そこからそのままその3人で、8年半くらいやったの。

ギターがいなくなって、宇宙が手に入った

──僕が初めてシスターポールを観たのが'98年で、その3人でやっていた時でした。なので、フォックスさん脱退の話を聞いた時には凄く驚いたんです。ずっと長いこと一緒にやられてて仲も良さそうで、バンド・サウンドもあの3人によって形成された純然たるシスターポール・サウンドが確立されてましたし。

ススム:まぁ、3人いるから、3人でどうやるかなぁ…と考えながらやっとったんだけど。で、今まぁ1人いなくなっちゃって2人になって、じゃあどうするかっていうと、2人になったからどうすればいいかなぁって考える、っていうそれだけのことで。間違って20人になっちゃったら、20人になったからどうしようかなぁって考えるということで。おそらくね。2人はね、今となっては…ってところ??もあって、最初は凄い悩んだけど、いい面も凄くいっぱいあって。

──それはどんなことですか?

ススム:まずね、自分が曲を作る時、いろんなことを心の中で思い描くわけじゃん? 感情とか込めたりして。で、2人だと、思い描いたものがだいたいそのまま現物化する。なんで、逆に、“あ! こんななっちゃった!”っていう新鮮な驚きみたいなものはない。“自分の作ったものがこんなになっちゃった!”っていうね。まぁ、良くも悪くもやりたいようにやれる形態で、たまたまこんなふうになっちゃったんで、今のこういうのを楽しむべきだよね。2人でやれるっていう。

──この前、2人になってからのライヴを初めて観たんですが、とても恰好良かったです。観る以前から「2人になったシスターポールは恰好いい」という噂は聞いていたんですが、想像以上でした。

ススム:ええっ? それは、最近のことじゃないかな。だって、2人になってからは随分といろんなこと言われたよ。「とにかくギターを入れて下さい」とかさ。なんでね、3人から2人になった時、だいぶお客さん、いなくなっちゃったんだよ。だからね、いちからやり直しだよね。そんでもね、1年以上経ってちょっとずつまた、新しいファンが来始めたね。

──マッキーさんは2人になってどうでした?

マッキー:2人になって、スタジオに入ってやってみたら、そんなに変わらなかったんですよね。歌は2人で唄ってたし、私自身は何にも変わらなくて。

ススム:結局ね、今になってこういう話を聞いて判る通り、“どうしようかなぁ?”って悩み続けておったのは、僕だけ(笑)。立派。やっぱり、マッキーちゃんは肝が据わっとる。2人になってより判りやすくするために、僕が上半身裸になって、マッキーちゃんは前に出てきて、髪をおっ立てた。ま、判りやすくするためっていうよりか、気持ちでそうなったんだけど。

──新作『夢遊病者の夢 I』を聴かせてもらったんですが、ギターがなくなったぶん、ヴォーカルが抜けて聴こえてくるようになって、ツイン・ヴォーカルの良さが際立ちましたね。あと、全体的な音作りの自由度が増して、曲によってベースの音色が極端に違ったり、鍵盤のシンプルな音が入っていたりとか。

ススム:ああ、やりたいことをやりたい放題だからね。歌が聴こえるっていうのも、ま、当たり前だけど、ギターがなくなったせいで。何かがなくなると何かが聴こえるようになって、それでいいんだよね。いろんな人が「物足りない」って言うもんで、自分でも“ああ、物足りないのかな?”って思ったりしたこともあって、この1年色々とどうすりゃいいかって考えたりして。結局、ギターがいなくなったおかげで、聴こえてくる音を聴かせればそれでいいんじゃないかと考えるようになって、あとは、ギターがいなくなって聴こえてくる音だけではやっぱり補えない部分があって。で、“そこの部分は空間があるじゃないか!”っていうところに行き着いて(笑)、そんで、2人になっちゃったぶんは空間を聴いてもらおうっていうことにして。

──茶道の“侘び・寂び”のようなというか、空間を上手に活かすという発想ですね。

ススム:そう、空間が宇宙なの、あれは。宇宙っていうのは、ピコピコいうのが宇宙じゃなくて、静寂が宇宙なの。ギターがいなくなって、宇宙が手に入った。僕らは別にね、何でもいいの。あの、要は何系でもないもんで、何にも属してないもんで、いろんな人がいろんなことを言ってくれるわけ。なんで、別に、パンクと言ってくれる人がおってもいいし、メタルと言ってくれる人がおってもいいし、ヴィジュアル系と言ってくれる人がおってもいいし、いいの。それはなんでそう言い切れるかと言うと、“何にも属してないのだ”という自負があるの。色々手を変え品を変え、ちょっとずつ変わってきてはおるけど、その時の僕らの感情というか、感性で、これでいいやーというところで人に見せとるわけで。こういうものにしたい、ってことでなしに、色々やって、あ、これがいいな、ってことで作り上げているもんで、形は変わっても同じものだと思う。おそらくね。やりたいことはやっぱり、激しさプラス、ヘンテコな歌の世界。やりたいことは変わってない。変える必要がないもんね。やりたいことをやってきてるもんで、やりたいことをやるためにバンドやっとるんで。表現の手段としてね。またこれで凄いお金になるとかなんだとかならさ、変わってくるのかもしれんけど、たいしたお金になってないわけでさ、これでやりたいことがやれて嬉しい。良かった良かった(笑)。

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻