Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】BUGY CRAXONE(2005年11月号)- それでもなおロックし続ける揺るぎない意志

それでもなおロックし続ける揺るぎない意志

2005.11.01

BUGY CRAXONE通算6枚目のアルバム・タイトルは堂々と自らのバンド名を冠している。このことからもメンバー自身がこのアルバムに対して如何に強い手応えを感じているかが判るだろう。事実、本作は一曲一曲の完成度の高さはさることながら、緩急のついたバンド・アンサンブルと揺るぎないグルーヴが全編を貫く一級品のロック・アルバムであり、間違いなくBUGYの過去最高傑作と断言できる。昨年2月にモンチが正式加入し、遂に不動の4人となった彼らのロックに対する熱い想いとバンドとしての矜持を余すところなく訊いた。(interview:椎名宗之)

このバンドにしか出せない音を求めて

──通算6枚目のアルバム、バンド名をそのままタイトルにしていることからも何より自信の程が窺えると思うんですが。

鈴木 由紀子(vo, g):
バンドの結成からは8年経つんですけど、今のメンバー全員が揃って活動を始めてからはまだそれほど経ってないんですよ。最初の2年は4人いたんですけど、そこから2003年に自分達でZubRockA Recordsを立ち上げるまでの間はメンバーがいつも1人足りない状態がずっと続いていて。確かにバンドではあるんだけど、そこに1人サポートが入ってる状態はやっぱり健全じゃないなと。それが、今のこの4人が揃って2年目になった去年辺りかな、自分がバンドを始めた頃に思い描いていたバンドの感触をやっと手に入れることができたんですよね。『BUGY CRAXONE』以外のタイトルも色々と考えてはみたんですけど、どれも似つかわしくなくて。収録曲のフレーズから引用するのも何か居心地が悪かったし。今さらバンド名を堂々とタイトルにするのもどこか照れくさかったんですけどね。

──でも、“今のこの4人だからこそのBUGY CRAXONE”みたいな部分を提示したかった部分もあるのでは?

笈川 司(g, cho):そうですね。今年の1月から曲作りを中心にずっとスタジオに籠もっていて、“これこそがBUGY CRAXONEだ”と思えるような曲が出来るまでは新しい音源を出すのはやめようと思ってたんです。それが嬉しいことにようやく自分達でも納得できる形として発表することができました。

鈴木:それは別に作品としてのクオリティを求めていたわけじゃないんですよ。このバンドにしか出せない音、このバンドだからこそ出し得る音をずっと探し続けてきたんです。

──ご自身が考える“BUGYらしい音”というのは?

鈴木:BUGY CRAXONEというのは、どの部類にも属せないバンドだと思ってるんです。仮に“ギター・ロック”と呼ばれても腑に落ちないし、その枠にはとても収まりきらないと思っているし。だからそれを証明するために自分達の集積を作っておくしかない、と。そういうことを考えてふと周りを見渡した時に、その曲を聴いてオイオイ泣き崩れるような聴き手の心を掻き乱す音楽と、オーディエンスをフロアで目一杯暴れさせる類の音楽という両極端の世界しかないと思ったんです。だけど私達はその真ん中に堂々と位置するような音楽を作りたいんですよ。

笈川:例えばブッチャーズやズボンズのライヴを観てると、凄まじい轟音の中に必ず心を震わせる泣きの部分があるじゃないですか。そういうバンドになりたい、ならなきゃダメだと思ったんです。メンバーはみな音楽的ルーツがバラバラだけど、この4人が揃った時にはとにかく凄いんだっていう音を目指そうと。

鈴木:バンドとして初めて出したCDが「ピストルと天使」というシングルで、それ以降「枯れた花」や「NORTHERN ROCK」など、その都度その都度節目となるような曲があったんですけど、結局私は全部同じことを言い続けてきたと思うんです。元々はユーモアの要素もあったはずなのに、私一人だったりとかその時のメンバーや出す音によって、どうしても重たいベクトルだけに進んでいたと思うんです。それが、旭君やモンチが入ってくれたことによってそのユーモアの部分が押し出されるようになって、そのバランスが自分の理想としているところにグッと近づいたと言うか。

──ベースとドラムというバンドの屋台骨を支えるパートが流動的というのは、バンドとしてはかなりの痛手でしたよね。

鈴木:思い出しただけでもうイヤです(苦笑)。メンバーが固まらないっていうのは本当に辛かったですね。

旭 司(b, cho):自分が加入する前のBUGYの音源を聴いていると少しずつ変化を遂げていて、でも根本にあるのは変わってないと思いますよ。表現の仕方が着実に幅を広げているから、由紀ちゃんが同じ言葉を発するにも説得力が格段に増しているし、理想としている高みに近づいてるんじゃないですかね。

──今の布陣が固まって、やっと「これがBUGY CRAXONEです」と胸を張って断言できるサウンドや方向性を手中に収めたからこそ完成したアルバムだと思うんですよ。バンドとしてのグルーヴと一体感は過去随一ですし。

鈴木:ただ歌を唄いたいなら一人で弾き語りをやればいいと思うし、私はどうしてもバンドをやりたくてずっと音楽を続けてきましたから。これまでは作品のコンセプトを凄く考えてきて、コンセプトがないと逆に私はアルバムが作れなかった。でも今回はそれをちょっと置いといて、一曲一曲を大切に作ったんです。自分がこれまでに書いてきた詞は割とすべてを言い切ったり、遠くから俯瞰でモノを言うようなのが多かったけど、今回は“机に足をぶつけた”とか“腹が立った”とか、もっと生活レベルのことを取り上げて唄っていきたいと思ったんですね。隣同士の曲が矛盾したって別にいい、直感で自分が感じた偽りのない気持ちだけを大事にしようって。ヘンに肩肘張るのはやめることができたし、“身体で感じる”とか“気持ちで感じる”っていうのはこういうことを言うんだろうなと思いましたね。

──「バスケットボール」という曲に今のバンドの立ち位置が巧く描かれていますよね。人生というコートの中でいろんな立場の人がいるけど、自分達はベンチに入ることなく未だ試合中だよという。

鈴木:私、学生の時にバスケ部だったんで、人生におけるいろんな場面を四角いコートに重ねることが多いんです。同じ練習量をこなして頑張ってきたはずなのに、コート内で試合に出られている人もいれば、コートの外のベンチで控えている人もいる。でもそれでも、与えられたそれぞれの場所で精一杯自分なりに戦うしかないと思うんですよ。

このアーティストの関連記事
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻