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INTERVIEW

トップインタビュー妄想代理人 DVD発売記念 トークライブ('04年7月号)

妄想代理人 DVD発売記念 トークライブ('04年7月号)

2004.07.13

 事件は一人の狂言から--東京・武蔵野市の通 り魔事件。不明瞭な被害者の供述から自作自演と騒がれる中、第二の事件が発生。月子の供述通 り「金色のバットを手にしてローラーブレードを履いた少年」が犯人だという。そして第三、第四......事件を取り巻く人物が「金色のバットを手にしてローラーブレードを履いた少年」、通 称「少年バット」に次々と襲われていく。一体「少年バット」とは?  『パーフェクトブルー』『東京ゴットファーザーズ』と世界的に高い評価を受けている映像作家・今 敏監督の初のTVシリーズ、WOWOWオリジナルアニメ『妄想代理人』。伝染していく悪意と虚構の境に、酩酊しそうにもさせてくれないストーリーの力。そして平沢 進の音楽。全てが融合し高みに昇るこの作品のDVD発売を記念して、今敏を「物語職人」と称する精神科医の斉藤 環を司会に、今 敏監督、音楽を担当した平沢 進の鼎談を行った。この3時間強に及ぶトークライブの模様を、ほんの少しになってしまうが紹介する。(TEXT:斉藤友里子)

循環するイメージ

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斉藤 環 まず初めに今さんと平沢進さんとの関係性というところから話しを進めたいと思います。では、今さんから平沢さんとの馴れ初めをお話頂けますか?

今 敏 もう難しい説明はないんです。私が平沢さんの音楽のファンであったと。ファンが高じてお仕事をお願いできるようになった、というのがあらましの全てなんじゃないかと思います。初めてお仕事としてお願いしたのは『千年女優』のサウンドトラックで、そしてまた今回『妄想代理人』でお願いしました。

斉藤 環 では今度は平沢さんに伺います。アニメの主題歌やサントラのお仕事は以前にもなさったと思いますが、今回の『妄想代理人』、『千年女優』と共同作業をされて、どのような感想をお持ちでしょうか。

平沢 進 さっき楽屋で「アニメの仕事をずいぶんやってる」と言われて、ハッとしたのですが、よくよく考えればたくさんやっているんですよね。その中で今さんの作品は、いわゆる雇われ作曲家みたいなところも越えて、自分なりの作品の解釈も含め仕事をできるというのは楽しい出来事です。

今 敏 ホントのことを言ってもいいんですよ(笑)

平沢 進 いやいや(笑)。かつてやった仕事を思い出すと、何分何秒で盛り上がるとか、監督から細かい指定を受けることもありました。今さんの場合、ほとんどそういったことはなくて、「オマエやる変わりにオマエ責任とれ」みたいな、圧迫感があるんですよ(笑)。それがまた仕事っぽくなくて楽しいですけども。

今 敏 仕事をする側であり、ファンでありというところで微妙なところもあるんですけど。自分がイメージしたようなものを聴いたらつまらないな、というもあるのでなるべく意外なものが出てきてほしい。と思う部分もありながらも、全く作品とずれても困るというのもやっぱりありますんで、頼み方が非常に難しいなぁとは思います。私も絵を発注される側として、事細かく構図まで決められるとめんどくさくなる方なので。

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斉藤 環 オープニングの「夢の島思念公園」を依頼された時、平沢さんはどんな説明を受けていたんですか?

平沢 進 そうですね。絵の通りの説明でしたね。構図をこういうふうにしたいんだと伺いました。笑いながら溺れているとか、悲惨なモノをバックにしながら笑っているとか、相矛盾することが一緒になっているような構図だよと。私そういうの好きなんですけども。細かくああしてくれ、こうしてくれというのはほとんどないですね。

今 敏 実はそのイメージ自体、私が平沢さんの『BLUE LIMBO』というアルバムを聴いた時にそういうイメージを持ったんです。

斉藤 環 循環してますね。

今 敏 ええ。なにか、豪雨と濁流の取り残された中州に立って、ズタボロになった子供たちがゲラゲラ笑っているというイメージが浮かんでまして。それを是非やりたいなと。

絵と音楽。手順を逸脱できる余地。

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斉藤 環 元のアイディアを聞かれて、曲を作り、出来上がったものは後からご覧になるんですよね。完成品を見てご感想は?

平沢 進 今さんが最初に言っていた「気持ち悪いもの」ということがグッと気持ち悪くなっていて。「あえて明るく作ってあること」っていうのはより気持ち悪さを引き立てるなぁ、と。その「あえて」は、監督の意図を音楽で解析してしまったらできないんですよね。今さんは説明過多にならない注文の仕方がうまい。自分の持ったイメージを阻害されずにできましたね。でも思えば逆のような気もします。通 常、監督が持ったイメージに忠実に見習わなきゃいけないはずが、どうも私からイメージを引き出そうとしているような気が……。

今 敏 いやいやいや(笑)。されて嫌なことは人にしないということなんですけども。

斉藤 環 あまり事細かに説明されると仕事しずらい、とおっしゃっていましたね。

今 敏 事細かに頼まれるとゴールが全て見えてしまう。あとはそれを見上げて手順を積み上げていくだけになるので、辛くなってしまう。どこか手順を逸脱できる余地を残しておかないといけないと思うんですよね。昔、漫画家をやっていた頃にイラストの仕事をしていたんですが、「近未来の街」を描いてくれと。そうししたら向こうは言いにくそうにしてるわけです。私が「あ、大友克洋みたいに?」と言うと「そうです!そうです!」と(笑)。それは仕事だけ、というものですよね。

斉藤 環 では相性はピッタリ、ということで。これからもコラボレーションして作品を作ってほしいと思いますが。

今 敏 僕は是非お願いしたいと思っていますが。

平沢 進 私でよろしければ。

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