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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】剱伎衆かむゐ(2004年7月号)- 殺陣というジャンルを日本が世界に誇れる文化として広まるように

殺陣というジャンルを日本が世界に誇れる文化として広まるように

2004.07.01

あのタランティーノ監督「キルビル」で殺陣(たて)指導と出演を果 たしハリウッドデビューした「剣伎衆かむゐ」が、初の映像作品を遂にリリース! その発売を記念して、7月20日にはロフトプラスワンで大好評のイベント「サムライナイト」も開催される。  「キルビル」にはクレイジー88のMIKI役で出演したかむゐのリーダー島口氏に、「キルビル」について、噂のDVDの凄い内容について、また「サムライナイト」について、取材を敢行した!!(テキスト&取材:テリー植田)

殺陣というジャンルを日本が世界に誇れる文化として広まるように

──まずは、かむゐの結成からの活動の流れを教えてください。
 
島口:結成が1998年。その前にも結成メンバーの河口と島口は歌舞伎だとか、商業演劇、日本舞踊だとかをやっていて、紅一点の真瀬樹里も映画やテレビで活動していたんですけれども、立ち回りが今みたいにブームではなくて、ただし、需要は常にあるジャンルではあったんです。例えば、剣友会だとか、剣会だとか。誇りを持ってやってらっしゃる方もいるんだろうけども、細分化されているというか、振付師の人は振付しかできないし、スターは斬ることしかしない。斬られ役は斬られるだけ。だから、僕らは、それを全部やって演出もする。なおかつ既存の時代劇だけではなく、ロックやクラブミュージックとかに合わせてみたり、時代劇にとらわれずに殺陣を媒体にしていろんなもので表現するというものを作りたかった。それで、島口をリーダーとして、河口、真瀬の3人で結成して、その年にロスとラスベガスでストリートパフォーマンスや公演をやってメンバーを増やしてきたという流れですね。
 
──「かむゐ」というネーミングはどこから取ったのですか?
 
島口:これもね、フィーリングなんですよ。かむゐっていう響きのフィーリングで。よく、神様とか、白戸三平さんの漫画の「かむゐ伝」からとったんですかって言われますが、そうじゃなくほんと感覚で。かむゐの前の「剣伎衆」という字に関しては意味があって、剣は刀、伎の字は歌舞伎の伎で芝居なんですよ。剣と芝居をする集団ということで「殺陣俳優集団 剣伎衆かむゐ」ということなんです。
 
──かむゐにとって「キルビル」での殺陣指導と出演は一つの転機だったと思いますが、ハリウッドで学んだことってありますか?
 
島口:ほんとにいっぱいありましたね。いい意味で自信を植え付けてもらったと思います。日本(かむゐ島口が殺陣指導)と中国(マトリックスのユエン・ウーピンがワイヤーアクションを指導)のいろんなアクションをクウェンティン(・タランティーノ)が撮っていく過程で、自分が日本人であることを再確認できたし、この方法でいいんだってことも彼らが再確認させてくれた。要は、日本人が、日本人のものを、日本のDNAで表現していくものに関しては、向こうは100%リスペクトしてくれるんです。日本にいると見失っちゃうと思うんですよ。いろんな国の人が集まっているハリウッドの映画の最高峰で、トップの現場で彼らは楽しんでいるだけなんですよ。日本にいたら、自分の居場所を作るところからはじめなきゃいけないんだけれども、少なくてもクウェンティンの現場では、その人が持ってるものを200%出せる環境の現場だった。最大限、最高の場所で仕事をさせてくれるから。
 
──島口さんが振付した「キルビル」の見所は?
 
島口:撮影の前にジャパニーズ・ソード・トレーニングっていうのがあって。ユマ・サーマン、リューシー・リュー、デビッド・キャラダイン、ダリル・ハンナを中心にクウェンティン自身も3ヶ月間トレーニングしていたんですが。リューシー・リューがヤクザの親分会でボス田中の首をはねるところの一連の動きの所作ですね。このシーンは実は、僕が見本で、リューシーの休日にホテルの部屋で振付けてビデオに撮ったものを、彼女が何度も何度も見て覚えたもので。台詞の間とか、アクションをした後に刀を納めるっていうところまでの間、タイミングっていうのを彼女はすごくこだわっていてそこを僕に教えてくれっていってました。そこを意識して観て頂きたいなって思いますね。ラストシーンのスノーガーデンの立ち回りでは完全に僕が振付をしたんですけども、ここの所作、お辞儀から始まって、剣を抜くところ、例えば、さやを斬られて、そのさやを一瞬見て、にやっと笑って、剣をゆっくり下ろしてきて、さやを投げ捨てるっていうところ。そういう細かいところもリューシーはこだわってやってくれています。ユマ・サーマンは、「キルビルvol.1」のジャケの構えにもなってましたけども、柳の構えみたいなかんじのがありますが、かむゐもよく使う構えです。あとは、僕自身がクレイジー88のMIKIで出演しているんですが、そこのMIKIが死ぬ ところから真瀬樹里が死ぬところまでは僕が振付しているので是非見て下さい。
 
──そしてかむゐ初のDVD作品『斬雪 ZANSETSU』が発売されますが、この作品に至るまでの経緯を教えてもらえますか?
 
島口:1998年にかむゐが結成してからいろんな活動をしてきて、生ではアメリカや日本でも評価してもらっていたんですけども、音楽と違ってCDのように素材としてみなさんに渡せるものがなかった。僕たちは事務所に所属しているわけでもないから、映画とかテレビとかの素材はなかなか回ってこない。だからどういう形で立ち回りを表現したらいいかと思っていて。映画でもなく、殺陣を美しく表現できないかなと。たまたま、僕が映画「キルビル」に出たこともあってロフトプラスワンでライブをやったんですが、その時に、福田裕彦さん(DVDの音楽担当で、浜田省吾さんのキーボーディスト)にお会いしたんです。その福田さんに、かむゐのテーマ曲を作って欲しいと、で、いずれこういう風な映像作品を作りたいんですよと言ったら、福田さんが以前プレイステイションのゲームを監修した時に映像監督を頼んだ板屋宏幸さん(ソニーの巨匠PV監督)を紹介してくれたんです。そして一度顔合わせをしたら話がトントン拍子でいって。かむゐのDVD撮ろうってことになったんですよね。
 
──内容はどうやって決めたのですか?
 
島口:かむゐが6年間やってきたことの集大成で、早く、美しく。日本人の立ち回りはこうなんだってぼくらが思うものをスポイルせずになおかつ格好いいっていうもの。その立ち回りのイメージビデオを福田さんに見てもらってテーマ曲を書いてもらって、板屋監督は何度かカメリハをやって即ロケに行って撮影して。
 
──歴史的剣豪に扮して、無間地獄で闘うっていうアイデアはどこから出てきたのですか?
 
島口:無間地獄は、板屋監督のアイデアで。もともとあるかむゐのオリジナル演舞スタイルを板屋監督にはじめて見せた時にイメージが広がったらしく。そのままDVDでやってる演舞を生のライブでお客さんに見てもらえるスタイルで。芝居というよりは、通 しの演舞ですね。どうしても舞台でやる時っていうのは、お客さんに対して真正面 からしか見てもらえないっていうところがあって。今回は、マルチアングル(4カメ)で撮影したので、いろんな角度で見てもらえる。まずは、通 しで見ていただいて、その後、4人の剣豪の動きの細かいところを再度見て楽しんで欲しいですね。剣豪4人がそれぞれ違う立ち回りのこだわりを持ってやっているので繰り返し見ていただけると嬉しいですね。
 
──今年は、「キルビル」以降、舞台がいろいろあって、DVDも出して。来年以降の新しいビジョンはなにかありますか?
 
島口:かむゐのワークショップの生徒が増えてるんですよ。3年前にやったかむゐのプロデュース公演があったんですが、また来年あたりかむゐだけで、オリジナルの公演をやりたいですね。後は、ヨーロッパに売り込みに行きたいなって思います。DVDの続編も作りたいですし。出来たらワークショップも東京だけでなく、地方や海外へも展開出来たらと思います。かむゐの剣を伝えるというか、僕らもやりながら学んでいますが、そういうことをやりたいですね。
 
──最後に、7月20日のプラスワンでやるイベント「サムライナイト」はどんな内容になりますか?
 
島口:DVDの発売日なので、和太鼓とのコラボ、DVDの撮影にいきつくまでの裏話などをトークを交えつつやります。基本的にはあのプラスワンの狭い空間で演舞をやれっていわれても同業者でも出来ないと思うんですよ(笑)。かむゐならではの演舞とコラボを見て欲しいですね。ミュージシャンは音楽で表現するし、映画だったら映像で表現して、作家だったらペンで表現する。僕らは剣で表現していて、これにこだわっている剣伎衆かむゐというグループを是非一度生で見て欲しいですね。殺陣というジャンルを日本が世界に誇れる文化として広まるように活動しているので、7月20日は是非見に来てください。
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