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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】GRIFFIN(2003年4月号)- 硬軟のバランスはいつも気をつけてる

硬軟のバランスはいつも気をつけてる

2003.04.01

インタビュー前日、射延さんに電話した。「今回、絶対訊いてほしいことってありますか?」の問いに「太田君が訊きたいこと訊けばええがなぁ」という言葉が返ってきた。そして最後に「よろしく頼むな」という一言でわずか1分の電話は終了した。変な話だけど、その1分という短さ、クールな返答、そして"ヒト"故の温かさ。これが"PUNK"なんだと、僕は思う。って、ひどく抽象的でしょ(笑)。だからこそこれを読んでみて。そしてGRIFFINのNEW ALBUMを聴いて下さい。きっと判ると思うよ。(interview:太田隆幸/TEENAGE HEAD)

硬軟のバランスはいつも気をつけてる

──いきなりですが、今回のアルバムはいつ頃から考え始めたんですか?

射延:いつぐらいからやろ? 調べたらええやん(笑)。忘れたわ、そんなん。もう今は6枚目、7枚目のことまで考えてるもん。それしか考えることないの、俺。アルバムを録ってる時点から“次はこうしたいな”っていうのがどんどん出てくるんだよね。

──今回、アルバム全体のコンセプトとかありますか?

射延:別にないな。ただ、小手先のことはやめようっていうのはあった。一番影響してるのは“ホリデー・イン・ザ・サン”(HOLIDAYS IN THE RISING SUN/2002年10月12日~13日)やな。やっぱりあの横浜ベイホールでの2日間が、『オマエが本来見てるとこはどこやねん!?』っていうのを再認識させられた、みたいなのは凄くあるね。

──今度のアルバムは音の軸が凄く中心に集まった感じですよね。ベースも凄い寄ってるし、ライヴ感もあるし。

射延:ありがとう。まぁ、あれちゃう? みんなそれぞれで聴いて判断してくれれば。音の解説は一言、『ええでぇー』って言うか。

──ちなみに、曲を作る時って曲と詩はどっちが先ですか?

射延:ああ、俺のソングライティング・メソッドか?(笑) よう訊かれんねんけど、どっちもどっちやな。

──基本的に射延さんがその時見たものや体験したことからインスピレーションを受けているんですか? 詩を読むと、広い意味というよりも“対個人”という感じがするんですが。

射延:だから、マジな話…まぁ、インタビューだからマジでいいのか(笑)。例えば反戦、反核、反体制みたいなテーマも“対個人”も一緒やからね。すべて俺個人の視点から始まるんちゃうかなぁと思うから。電話で喋ったり、家で喋ったりするのと一緒。テレビ見て文句言うてるのもそれやし。あくまで個人的なもんやねんけどな。

──「A Step Too Far In My Shoes」はキーが高いんですけど、射延さんが唄ってるんですよね?

射延:そうそう。テープを録る時に、ピッチを下げて、戻したら高くなってるやんか。この曲はハイな感じで唄ってるイメージが自分のなかにあった。“ちょっとした工夫でこの巧さ”っていう感じやねんな(笑)。基本的に自分の声が嫌いやから。もちろん自分の理想というか、“こういうヴォーカルでありたい”というのに近づくために頑張ってはいるけど…。やっぱりこれ、ズルしてるんかな?(笑) 。

──「From Tiffany To Underlounge」では女の人と一緒に唄ってますね。

射延:あれは単純に、詩が『三年目の浮気』みたいで。詩ィ見てや。藤谷美和子と誰かがやってたような…NOAは仙道敦子と吉田栄作やったな(笑) 。

──(笑)こういう試みって今までなかったですよね。

射延:なかったねぇ。

──今回、例えば「Stay Cool, Be Tough」では間奏でセリフを挟んだりとか…。

射延:ああ、そんなんばっかりしてるわ。遊んでるわ。かと言ってシリアスになりすぎてもアカンしな。自分が作ってるものに対して、そういう硬軟のバランスはいつも気をつけてる。“これやったらシャレにならんがな、やらしいなぁ”とか、俺はめっちゃ考えるから。たとえば、軟球は柔らかいけど飛びすぎる。硬球は素人には硬すぎる。そういうことや。だから、一番ええのはソフトボールやねん。個人攻撃の詩でもな、それがあんまり直接的すぎると芸がないやん。やっぱ詩っていうのは作品だから、そのなかに“組み立て”っていうのを凄い意識する。直接文句を言うんやったら、『文句だけでいいんじゃないの?』っていうことになるし。ただ、まぁ何やかんや言うて、結局言うてることは一緒なんかなぁっていう時もあんねん。『この詩、俺、前も言うたぞ?』っていう場合もあんねん。でも、結局出てしまうのが自分のホンマの部分やから、“言いたいこと言うて、終わりだったらやめたらええやん”っていうのはある。結局、“おもしろいことは何や?”っていうことにつながる。悪口とか言うとっても、ホンマの悪口って聞くに耐えへんやんか。人の悪口でも何でもええけど、言う時はやっぱりみんなで笑えないとな。

たかが知れてることをネタに笑おうや

──ビデオ(『GRIFFIN THE VIDEO "THE GREATEST STORY EVER TOLD"』)のことを訊いていいですか。これは構成からすべて射延さんが手掛けたんですか?

射延:もう、やりたいことやらせてもらったっていうね。あれはただ単純に『プロモーション・ビデオ撮ろうか?』っていう話になって、LONG STONEっていう制作やってる子らを紹介してもらって。俺が『こんなことやりたいねん』って伝えたら、向こうも凄いノってきてくれて。きっかけは、クアトロ・ツアーの時に『好きな曲を10曲挙げて下さい』って客にアンケート出して、そこから選出したベスト10みたいなのを形にしようと。解説入れながらのCDとかいろいろ考えたりして、“ビデオにしたらええんちゃうん?”と思ってな。最初は『TOP OF THE POPS』(英BBCの音楽番組)みたいな感じを凄くやりたかった。嫌味なく撮れると思ったんよ。って言うのは、俺らみたいのがプロモーション・ビデオで演技したり、カッコよく撮ろうって考えたら絶対アカンて、俺ら思ってんねん。  白人とか黒人がやるロックと、日本人とかアジア人のやるロックの色はまったくちゃうねんて。だから、嫌味なくできるのは何かって考えたら、テレビ番組に出てるように、ホンマにあっさりやろうと思っとってんけど、何かな、どんどん離れていってな。それをやるにはお客さんを入れて、客のなかにはこんな奴もおって、ケンカしてる奴もおる、ダンサーもおる…とかいろいろ言ってたら違う方向に行ってもうて(笑)。ほんで、『TOP OF THE POPS』ではなくなってしもて、しゃあないなぁと。でも、『TOP OF THE POPS』のあの感じもやっぱいるやろう…って思い直してな。朝現場へ行った時に、“今日もうひとつ撮ってまおう!”と。だからホンマに、幸せな男やなぁっちゅうことですな。みんな僕のことを理解してくれた上で協力してくれるわけじゃないですか。それはホンマに……ちょっとごめんなさい(と、泣くフリをする)。

──(笑)あのビデオのなかで、それぞれのメンバーが射延さんについて触れてるじゃないですか。逆に射延さんからそれぞれのメンバーってどう見えてるんですか?

射延:ドラム(矢島 圭)はそやなぁ、まあまあ時間に正確やな。ギターの(島田)隆は一番若手やけど、“Wanna be ギター・ヒーロー”みたいな感じやと思うねん。ベースの村本(亮太)は、どう見えてるというか、どう見えようもないからね。彼の場合は見てないから、俺もあいつのことなんか(笑)。

──じゃあ、射延さん自身を自己分析すると?

射延:あのな、たかが知れてることっていっぱいあると思うねん。例えば『バイトをクビになりました』とか、『女にフラれました』とかな。でも、たかが知れてることくらいやったら、“それをネタに笑おうや”っていう姿勢って凄いパワーになるんよ。

──それ、前のインタビューの時も言ってましたよね。

射延:『シンドイ、シンドイ』『ツライ、ツライ』っていう言葉を吐かせてもらえるんなら吐かせてもらいたいわ。最近自分で思うのは、“ちょっとヤバイんちゃうか!?”って思うくらい、喜怒哀楽の“喜”と“哀”が激しいのがアカンなぁと思う。めっちゃイライラしてる時もあるし、ケタケタ笑ってる時もあるしっていう。  みんな言うてくれんねん。『GRIFFIN、絶対いいから聴いたほうがいい』とかな。売れるバンドとかよく知られてるバンドっていうのは、もちろんマネージャーがいたりするけど、結局芸能界みたいにシステム化してない。カッコよく言えば、ストリートから発生するものだから。口コミって言うかな。要するに俺らにはその力がなかったんやな。人に聴かすっていう力が。それも持って生まれたもんかもしれへんし。せやけど、“何で自分は音楽をやるのか?”って言うたら、音楽でメシを食うっていうのは二の次で、それはもうやっぱり、自分の音楽を広げたいから。“広げたい”ちゃうな、“広げたるわ!”っていう思いももちろんあるからな。  ビデオにしても、メジャー仕事やったら細かい作業は自分の手から離れてるやんか。自分で作って自分で構成してっていうのは、逆にカッコ悪いくらいのことなんじゃないかと思うわけ。ビートたけしとかそれぐらいの人やったら違うと思うけど、しゃあないやん、俺は。『誰もやってくれへん』とか言いながら、こんな周りに協力してくれる人がおって。実際そういう意味で、映像の作品とかベスト盤とか、おこがましいと言うかな。『俺がインタビューに答えてるシーンとか、誰が見たいねん!』っていう感覚だったんだけれども、アンケートとかBBSの書き込みとか見てたら、『ライヴは映像として残すべきものだ、GRIFFINのは特に』みたいなことを言うてくれてるわけやん。だから、“やらなアカン”じゃなくて“やってもええねや”って自覚が芽生えてきて、“ほんなら好きにやらせてもらいますか”ってなったな。  今までやったら、ビラ1枚にしても全部自分で書いてやってたようなことを、知らぬ 間に作っててくれて…とかいうのに慣れてないから、今回のメジャー流通に関しては恐縮する部分が凄くある。…ということをちゃんと『Rooftop』に書いといてや!(笑) でも、恐縮する一方で実は芸能人に憧れてるとこもあるから、「ライヴの予定? マネージャー通 してくれ」とか思わず言いたくなってしまうんやけどな(笑) 。

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