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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】酒井一圭(2003年3月号)- しんじゅく酒井祭

しんじゅく酒井祭

2003.03.01

本当はやめたいンです・・・

──ソフトとして記録に残ることですし、反省会をしましょうか。

酒井:とりあえず、第一回、第二回、第二・五回までの反省?

──一回目はどうでしたか? 酒井さん的に。私は挽回せねばと思ってましたけど。

酒井:テンションも微妙に高いし、余分な力が入ってた。今、酒井祭DVDの編集チェックで思ったけど。テーマなかったからさ。どの点を打って、どのスタートから始めるかっていうスタートも判らずにいたから。あーでも、あんまり覚えてないんだけど。とにかく、楽しかったっていうのが記憶に濃い。

──「負け」と酒井さんは後に、ご自身のホームページで語ってましたが。逆に負けからスタートしているというのはトータルでみるといい結果 だったのかもしれないですね。

酒井:負けが勝ち。勝つことは簡単だったかもしれない。あの負け方は次に繋がる素晴らしい敗戦。

──なるほど。凄い動員と売り上げがあって、よく「しんじゅく酒井祭ってなんなんですか?」って訊かれるんですけど。説明できない。「酒井一圭の“祭”なんです」としか言いようがなくて、「はぁ」って返事されますけど。

酒井:「はぁ」だよねぇ。きっとこれ読んでる人も「はぁ」だもんきっと。

──説明できないにせよ、噂になってるということは、今までのことはあながち間違ってないというふうにも思ってるんですよ。序曲としては、酒井さんの言うように負けからの復帰というのがよかったのかも。しかし、酒井さんをはじめ、スタッフ一同、「しんじゅく酒井祭」が終わるとグッタリしますねぇ。店員とかもヘトヘトですから。なんだかよくわからないけど、凄いってみんな感じてます。酒井さんをよく知らなくても。

酒井:グッタリしてますか。うん、戦いですからねぇ。このイベント。このイベントって初期の大黒摩季のようになっていくのかな。

──ああ。得体が知れないけど、売れてるっていう。このままいったら、やりつくしていったら御破算になるのかなぁ。

11_02.jpg酒井:あ、いいじゃないですか。成長したくない、なにも得たくないよ。プラマイゼロ。その場でその時に返しちゃってる、あるいは逆で消化してるから。先に何もないとしても、それは望むところ。

──とは酒井さんは思っていても、私は第一回目は、非常に口惜しい部分がありました。勢いで決めた感じのイベントであるのですが、テーマ設定がないゆえに気を抜くとグダグダになってしまう部分をハンドリングできてなかった。それが狙ったグダグダならよかったんですけどね。そこをお客さんに「面 白くない」と一人でも言われてしまったら、イベントをやるものとして、そこは成長、というより改善したいと私は思ったんですが。

酒井:なるほどね、確かにそれはあります。でもあれだね、一人も面 白くないと言わない、みんな面白いってイベントやったら終わりだね。

──そこは、その一歩出前で美しく、幕。

酒井:このままいったら、そうなるね、きっと。みんなが面 白いって。でも、それにはなりたくないねぇって作業を、今我々はしてるんですよ。どうやったら、みんなが面 白くないって言うかっていう。

──ここだろ、という満足ポイントは明確なゆえに、じらす作業を。ということですかね。

酒井:そう、それをやってってつってんだね。

──今、「しんじゅく酒井祭」を長いタームで考えると、山のやや中腹。あと何回のうちに頂に。そのあと転げ落ちていくと思いますが、そこまで行きたいですよ。

酒井:ああ、物凄い高みがあと二、三回の間にくるね。素晴らしい。オーロラが見えると思いますよ、ハハハハ。

──しんじゅく酒井祭のスタートからもそうですが、何かの公開記念でも発売記念なんにもないところからなので、酒井一圭のパーソナリティに潜るという方法を選択したのですが。なまじやったんジャツマんないなぁと思いまして、一世一代を望むなら、キワまで行こうと。だもんで、第二回は赤玉 でるくらい酒井さんに色々要求しようかなと思ったわけですが、ツラかったでしょう。

酒井:ツラいよ。しんどい。12時間になると思わなかったけど。なんで自分ができたのかもわかんないけど。

──マゾ?

酒井:マゾでしょう。歴史が物語ってますよね。

──イベントやってると怖くなる瞬間と、面白くなる瞬間が旋回するんですよね。それってどんな瞬間かと言うと酒井さんの表情なんですけど。「もうイヤ!」ってヘキレキしてる表情してると思ったら、一二分すると、次に「もっと、もっと」って顔をしてるんですよね。うわ、こぇーこの人。という。「えぇーーーもっとしないといけないの!? さっきキブって言ったじゃない!?」と叫びたくなる。

酒井:俺、イベント中はなんにも考えてないからね。そうなんでしょうよ、きっと。

──キブの先があるのか、この人はとイベントやるたびに思うんですよね。

酒井:あるね、あるある。キブの先あるね。ギブなんて前半5分だもんね。タップしてるもん。まぁ、12時間はギブアップ後ですから。

──じゃぁ、その12時間を振り返ってみます? まず、初期の酒井祭からあらましを語りましたが、ガオレンジャーのオーディション風景は楽しかったですね。

酒井:あれは初期酒井祭の時に使ったやつだけど、もう今や、二年前のあの祭を知らない人がいるからね。楽しんでくれるかな、と思ったら楽しんでくれましたね。

──酒井さんはあんま変わってないですよね。姿形は多少痩せて別人っぽいですが、雰囲気とか青臭さとか、痛々しさはなかったですね。しかし、当時の酒井さんはツルツルしていたというかテカテカしてたいうか。

酒井:今や枯れ木。でもああいう役をもらえたら、またツルツルできるよ。あ゛あ゛あれはねぇ……俺じゃねぇから。

──当時の自分を見たら、やっぱり恥ずかしいですか?

酒井:恥ずかしくない。全然。本当。初々しいじゃん。

──酒井祭のテーマってなんでしょうね。

酒井:ヒット曲のない状態からのスタートってできないでしょう。ガオレンジャーってヒット曲だから、どうしてもガオレンジャーになると。でもガオレンジャーってなると、絶対ツマんないって奴が言ってくる奴から。コアな奴が。そこが勝負ポイントであるという。ただ、ガオをうわっつらで使うか、わざとフェイクとして使うかというさじ加減が微妙。ガオをプラスのイメージで持っていこうとすれば、できるんですよ。かっこいいとか、面 白いとか、いろんなところで。それを面白いという場でわからかして、帰り際で「また、酒井に笑いたくねぇというところでわらかされた」って思って帰れば、ネットで批判に繋がるんですよね。

──ガオを語る酒井さんを見てると、物凄いかつてを語っているようにみえるんですが。3年くらい前でしょう、年数で言えば。それが十代の青春を語るような。

11_03.jpg酒井:逆に、50歳になっても今のように話すかもしんないよ。ついこないだのように。

──物事の距離を、あまり自分の中で変えない人なのかもしれないですね。

酒井:そう、自分の手の届く範囲なんですよ、人生すべてが。きっと、あっという間なんでしょ、人生の捕らえ方が。そうなると、人から言われる偉業とかもあんまたいしたことに感じなくなってくるから。

──話は戻りますが、次のコーナーになったのは奇人・鈴木美潮政治記者(ボストン大学卒)の「酒井一圭の人生そして、世界情勢と戦隊」ですね。ホントはパッと始まるハズだったんですが、なんかちょっと失敗しちゃったかな、照明とかなんですけど。

酒井:どろ~んって始まったよね。まぁまぁ、あれでよかったんじゃないの。基本的に酒井祭に出る人っていうのはなんかフラストレーションとか表現したいという欲求を持った人が基準なのね。で、あれば成立する。それで、オッケーだった人の一人だね。

──そんでデザイナーミトミさんによる酒井祭本の製作秘話と。「ああ、酒井さんってかっこいいんだなぁ」と再発見。

酒井:そうそう、ってさ。最近よく再発見されます。なんか俺が妙にかっこ悪いみたいなね、態度なんですよね。あーたも含めて! それは俺がジェルとかムースとかつけないからなの!?

──いやいやかっこ悪いっていうんじゃないのですよ。土日の午後に母親が作ったお昼ゴハンを食べてる人の感じなんですよ。その佇まいは。決してかっこ悪いというわけではないのですが、かっこいいかと言われるとわかりません。「しんじゅく酒井祭」で見る酒井さん、私がよく見る酒井さんはそういう感じなんです。この落差が、酒井さんの持ち味ではないかと。

酒井:それはうれしいね。落差好きなんですよ。俺、460円かかるんですよ、新宿へ電車で来るの。しんじゅく酒井祭の時は全財産460円で来ますから。ということは、前日前々日、かなり気にかけて金使ってますから。なけなしギリギリになる。そっから、ドーンと人前に出るとパワーが出るんですよ。

──底上がりパワー。

酒井:日曜の午後かぁちゃんのメシ食った日の夜に政治家とかと会食する。そういうの好き。

──詩の朗読してる酒井さんの写真、あれはまさにかぁちゃんのメシを食ってる昼下がりの人の画ですよ。

酒井:わけわかんねぇ、俺……。あ、でもようやく俺、過去を捨てられるイベントができましたよ。今まではは「も一回やってもいいかな」っていうイベントや仕事をやってきましたけど。芸能生活始まって以来ですよ、二度とやりたくないってこと、同じことは。基本的に同じことをやるのは好きなんですよ。でも「しんじゅく酒井祭」は回を重ねるごとに、捨てられる。ヤダというより、やり切った。他のことをやった方が俺も面 白いし、お客さんも面白いと思うし。なんか見えてきた。ただ、また喜ばれたいということだけを追うのではなく、また微妙なバランス……。なんかね、通 常のイベント、こういうMCがあって、こういうトークをして、ライブをして、場所は武道館みたいなイベントとは、配合が違ってるんだよ。ヘン。絶対、体験しない人にはこれ伝わらないヘンさがある。そして俺が、作りたいのはそれ。

──なんかやってるぞ、オイ。みたいなことが伝わっていけばいいかなぁと思ってるんですけどね、このイベントをプラスワンでやる上は。小さい頃、夏になるとかすかに太鼓の音を聞いたりするとワクワクしたもんじゃないですか。何をしてるかよくわからないけど、祭だ。みたいな感じが伝わればオッケーかなと。

酒井:ホント祭。ライブでなかなか参加できないじゃないですか。どんなに自分が暴れてても。やっぱ鑑賞だから。でもお祭りの場合ってドンドンドンって音が聞こえてワクワクする、行っちゃったらもう、金魚すくいとか参加してその空間のお祭りの一部になる。次の日に、あまり思い出すことなく日常に戻れるじゃないですか。鑑賞だと、そうはできない。眺めてほしくない。見ないでって感じ。

──その次、ビンゴトーク(いくつかの質問をビンゴでひく。しかしダウトもありでバツゲームを受けることになる)。ああ、これ失敗しました。やっぱり、「しんじゅく酒井祭」は同じことしちゃいけない。時間も深夜にさしかかっていたのもあるけれど、ダレました、あの時は。反省です。酒井さんの顔を見たら「飽きたなぁ」って顔みた瞬間に、ああって……。

11_04.jpg酒井:二回目のセックスと一緒ですよ。驚いてたいんでしょうねぇ。一度やってることは計算できちゃうってところなのかな。

──そこを、乱入ゲストが救ってくれたのですが。あの乱入ゲスト様には非~常~に感謝してます。酒井さんも楽しそうだったし。が、その反面 ちくちょうと思ってました。

酒井:なんで?

──顔もよくて面白いのかよ、と。というのは冗談ですが、はっきり言って酒井さんが食われた感を感じたからです。

酒井:いいじゃん。負けてなんぼよ、俺。

──ムカつくな本当。そうやって人に代打させる。あの時のゲスト様は非常に自分が持っている魅力、美と笑いの両面 とか。それをはっきりと自覚した上で板の上に立ってる。酒井さんと非常に対照的でした。酒井さんは、とても自分に自信を持ってる部分とそうではない部分が水と油のようになっていて、自分はどう転んでもいい、気分がよければ全開になる。というところを感じるんですよ。もっとそれを明確に使えばプリンスにもなれる力を持ってるのに。

酒井:的確で、ありがたいですねぇ。俺は長く生きてたいんで、こういう手法なんですよ。一番目指してるところはたぶん、まだ大阪に家があった時代のダウンタウン的位 置。初期の『ガキの使い』をやってる感じが今ある。とにかく、面白い奴、面 白い事にのっかる練習をしてるの、今。一生懸命ですよ、こうみえて。そんで、明確に、ここでこう笑えるという速攻的な爆弾よりも、いつ爆発するかわからない、人によっては1秒、数時間かかる爆弾かもしれない、もしかして家に帰った頃に爆発するのかもしれないという時限爆弾をビヨーンと投げることを俺はしたい。

──酒井さんはどこかで、俺が前に立ってなくてもいい、俺を見なくてもいい。後ろでもいいから何かをアクションさせた時に、不幸でも幸せでもどんな感情でもいいから、何かが最大に振り切れる瞬間を人がしたら、楽しいと思ってると。

酒井:そうそう。そうです。

──話を戻しますが、酒井さんのお母さんのコメントビデオ見ましたね。うまいなぁと思いましたよ。

酒井:なにが?

──お客さんに対する態度が。あのビデオはどこか正直にうわぁっていう気持ちあったと思いますけど、同時にこれ面 白いって思っててオッケーな感じだったでしょう。でも嫌そうに困ったなぁみたいな態度をして、酒井も普通 の人の子なのね的に見せたりしてんのかなぁって。

酒井:なんなんだよ! ……そうだよ。もう、あなたのレベルまで、客全員が行ったら、俺は俺のみたことない俺の力をみるね。

──レベルとかよくわかりませんが、でも酒井さんが一言、眉を動かしただけで全ての人に思考が伝わったらイベントやる必要なくなっちゃいますねぇ。呑み会すればいいんだもの。

酒井:もう、面白くないね。

──そこで、幕だと思っているんですけど。

酒井:そうですね、酒井祭ファイナルっていうのは、そう銘打ったものではなく。終わって、そこで実は終わりでしたみたいな終わり方ですよ。

──このペースでいったら、1年半くらいで幕。じゃないですか?

酒井:ああ、そういうことかぁ。丁度30歳だね。

──で、また話を戻しますけど、エロトーク&エロ小説朗読をやりましたね。もう、あれはダメ出しをしたい。

酒井:失敗したのは、こっちも面白くなるようにしなかった。疲れてたから、トークの延長で読んじゃった。あそこで裸の女がいたら、もうちょっと変わってたかも。

──エロもオッケーといいつつ、本当の酒井さんはエロに対して抵抗があるのかしら、と思いましたよ。

酒井:そう。マルチじゃなかった。みんなの前で、エロっていうのが苦手だったね。人のエッチを見るのは好きなくせに、自分のエッチを見せるのがヘタだった。

──ここまで言ったら失礼かもしれないと思いつつ、訊いてしまいますが、酒井さんが役者に拘らない理由はそこだと思ったのですが。もし、自分を“役者”と意識してる人ならば、あそこで笑わせない。

酒井:そうだね。ああ、致命的なところを見抜かれましたね。ああ、役者さんならあそこでやっちゃうだろうね。計られててんねぇ。いろんなことやらされて。ああ、そうか、あそこは、役者を要求されたね。

──計ってるつもりはないですが、あのコーナーは役者を要求したつもりでいました。

11_05.jpg酒井:無理だね。判った、役者やりたくないんだ。

──そのあと、お客さんにポエムを書いてもらって、酒井さんに読んでもらいましたね。

酒井:読んだねぇ。もうわけわかんなくなってたけど。

──とにかく1000本ノックを受けたらどうなるのか、というつもりで。

酒井:ああ、ちょっとソフトリリースが楽しみになってきたよ。俺その時、どんな顔してたか覚えてないもんな。なんか、こうしたらこうなりますみたいな傾向と対策の試験をいろんなことをやらされるうちにされてたのね。なんなのよ! 凄いと思うけど生かしようがないよね。判る?

──死に銭みたいなものかもしれませんが、お互い、お客さんを含めて限界を知っていた方が、今後やりやすいかと。その後、オークションをやりましたね。酒井さんがなにかすることによって、お金を得るという。デコピンしたり、お姫様だっこしたり。ほぼ便利屋と化してましたが。あんまり値段をはらせなかったですね。いっそ10万円とかでたら、アレかなぁと思ってたのですが。

酒井:いや、もうキツい。怖いよ! だって払っちゃうもん、お客さん。

──出すということは、それなりの価値があるということですよ酒井さんに。

酒井:それで、メシを食いたくないです。怖いです、それで食えちゃったら。

──確かに、抱擁でトーンとお金が入ってきてしまったら人の階段を踏み外してしまう気がしますけど。いい方かなり乱暴ですが、芸能ってそういうところのお金なんではないと。ハタからみたら価値がどこにあるのやらというところにお金が動く。

酒井:判ってるんだけど、怖いなぁと思う。例えば12時間ライブやったでしょう? 1時間1000円で、ギャラ1万2千円っていう感覚が基本だもん。時給1000円感覚が抜けない。

──堅実で人間的過ぎるんですねぇ、酒井さんは。

酒井:そのワリには、競馬にはポコーンと金を使っちゃうんですけど。

──自分にお金を払ったり、発生させたりということに抵抗があるだけで、他人や自分以外の何かにお金を払うことは全然抵抗がないってことなんですかね。

酒井:そうかも。自分に高い服とか着せられないもん。なんでだろうね。わかんないや。そうなれるようにして下さい。

一同:ハハハハハ

──今後の検討課題として。そして質問タイム、で第二回目終了間際に数時間後に新戦隊がはじまることに気づくと。ちょっと悩んで結局、第二・五回が決定。休憩といいますか、お客さんから酒井さんへ直接プレゼントを渡したり、写 真撮ったりという交流タイムが2時間はじまるわけですが、ここが本当の酒井祭本編だったかもしれないと私は思いました。酒井の底力に敬礼です。200人くらいの人たちを一人一人お客さんを労うって凄いですよ。

酒井:うん、あそこが俺の酒井祭です。

──この人は1000本ノックのボールを拾って磨く人なんだと、本当に敬服です。申し訳ない気分になるくらいに。

酒井:そうだよ。あそこで、次使えるように拭いてやってるから。次は拭き始めからやりたくないから、すぐノックから始められるように拭きましたよ。お相撲さんで体を触れるのと一緒で。ヤなんですよ絶対。でも、触りたいと思われるためには強くならなければいけないし。触られてもいいような体を作らなきゃいけないし、ありとあらゆることをがんばらなきゃいけない。それが何かしたら欠けていると、ヤダーっていって別 の道から帰れるから、別の道から逃げられるから。それはやりたくない。だからあの時間帯がくるのを待ってましたよ。触れば判るんですよ。触った時に、自分は凄いって自信があってそういうことをやってますけど、そこで触った中で凄くないと思う人は、もう来ないと思うし。ちょっとした瞬間に一対一で対峙した時に判ると思うんです。そこが本当の俺で、だいたいの人はステージよりもその俺の方が凄いと思ってる。ステージの方が凄い奴なんていないと思いますよ。

──今までの過程があって、ステージをちょっと降りた。

酒井:微妙なんですよ。ステージの下手袖に座った形で、ファンと交流していたじゃないですか。それを完全に降りてしまうと、なんか媚び売ってる感じがしちゃう。媚びは売りたくない。そのヘンのさじ加減を間違えると大変なことになる。もとからそういう人との距離感をとる感覚があって。ガオレンジャーやってる時からもそうで。後楽園ゆうえんちのショーとか。それが大人にアピールしたってことになってるんです。そう思われなかきゃいけなかった。現実はそういうことでなくて、本当は子供に訴えてる。子供が嫌いだったら絶対に連れて来れない。砂場で遊びたいってなる。子供を喜ばせれば、親もついてくる。親はその理由がないと間違いなく、あそこへは来れない。そこに来てくれた人に対して、ありがとうって言うから、子供を連れてきてありがとうなんですよ。でも中途半端な大人からみると、大人に対してありがとうって言ってるように聞こえる。でも、俺は「オルグから助けてくれて、ありがとう」という子供に「応援ありがとう」って言ってる。本当のお父さんお母さんには、そういう気持ちが伝わってると思う。でも、どうありがとうと言っていいのか判らない時もあるんですよね。その区別 のつかない気持ちでいたけども、そのお父さんお母さんじゃない人たちの力もあって、今の俺がいたりする。だから、祭をやってるんです。でも今回(第二回~第二・五回)はよかったねぇ。終わってみたら12時間。マラソンで言えば、32キロで止めるつもりが、42.195キロ走ってた。今まではは32キロ地点で止めれば、酒井はいい数字を残せるってやり方をしてた。でもボン!と行ってしまった。次、例え32キロ地点で止めても、いい走りができるような気がする、別 の種目すら見えてくるから。

──ラクな道を選ばず、ここまで来たんで私は途中でやめたくないですね。 では最後に、しんじゅく酒井祭について一言。

酒井:……正直言うと、やりたくないです。

──ハハハハハ、なんじゃそりゃ!

酒井:もっとラクをしたいです。来て下さい。そして買って下さい……。

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