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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】セツナブルースター(2003年2月号)- 僕も今が青春ぽいかなって思いますね。

僕も今が青春ぽいかなって思いますね。

2003.02.01

ありのままの自分達を見てもらいたいと作られた1st.メジャーアルバム『キセキ』は、鋭く尖っていて、突き刺さるような歌詞と、繊細な中に垣間見ることができる荒々しいサウンドがとても印象的。そして、このアルバムを引っ提げて行う全国ツアー『青春依存症』。青春という言葉に強い思い入れがあるという彼らにとって、今回のツアーはどんなものになるのだろう。その静かな熱い思いを彼らに伺うことができた。(interview:やまだともこ)

僕も今が青春ぽいかなって思いますね。

──ROOF TOP初登場なのでまずバンド結成の話を聞かせていただけますか?

宮下:3人とも高校が一緒で、僕が1年の時にバンドっぽい人だなと思って声をかけたのが倉島くんだったんです。それで学園祭に2人で出演したのがきっかけですね。

倉島:それで、その頃ベースがいない話になって、それまで楽器とかやったことはなかったんですけど、賢司に声をかけてみたんですよ。「ベースやってよ! 」「持ってないよ! 」「じゃあ買えばいいじゃん! 」って。そしたら意外とやる気ですぐ買ってきてくれて(笑)。「どこで買ってきたの? 」「質屋」って(笑)。

島田:でも、すごいいいベースで今でもレコーディングでは使ってるんですよ。

──それで、このあとセツナブルースターの前身となる“上海PIZZA”が結成されるんですか?

倉島:そうですね。当時上海PIZZAにはボーカルが他にいて、僕はギターだったんです。でも進路を決めたり、ボーカルが抜けてしまったりでこの3人が残ったんです。でも、本格的にすごく高いとこ夢見てやってたバンドじゃなかったんで、趣味程度にとりあえずやってこうよって話になって・・・。本気になったのはそれよりずっとあとの話ですね。

──今の曲の感じと結構近かったりしたんですか?

倉島:近い感じですね。上海PIZZAでリリースした曲の2曲ともちょっといじって『エヅラ・ガラ・セツナ』(2001年4月リリースのファーストアルバム)の中に入ってますしね。この辺りからなんとなく自分達の音楽に対する意識も変わってきて、もっとしっくりくるバンド名で違うものを作っていきたいというか、バンド名と一緒に頑張っていこうかって思い始めたんです。

──それでセツナブルースターが誕生したんですね。そのバンド名の由来は?

倉島:けっこう聞かれるんですけど、意味ってないですね。けっこうその空気感を大事にできればいいなって感じで・・・。

──ところで、2002年12月11日に発売された『キセキ』ですが、まずタイトルの由来から教えて下さい。

倉島:『キセキ』っていう言葉は、僕らは「奇跡」ではなくて「軌跡」のほうで呼んでるんです。詞の内容とか曲の感じも含め、言葉の響きとかアルバムの空気感がすごく合っていますしね。メンバーそれぞれ二十歳になったあたりから、いろいろと考える時期だったりしたんですよ。葛藤もありましたしね。でも、このアルバムを作り始めたぐらいからミュージシャンとして、一人の人間として、ちゃんとやれているんだっていう気持ちでいられるようになって曲調もいい感じになってきてたんで、二十歳から今までの軌跡ってことでこのタイトルにしました。

──今までのセツナブルースターが凝縮されていると・・・。詩を読むと過去の体験だったり、青春時代の話みたいなものを想像させるんですが・・・。

倉島:もともと青春って言う言葉はこっぱずかしくて嫌いだったんですよ。実際青春って今までしたことなかったかもしれないし。けれど、今こういう時期になって楽しいこともあったりその反面 いろいろ考えることがあって、その中で今こそ青春なんじゃないかなって思えたのが二十歳前後だったんです。だから青春って言葉に自分の中で強い思い入れがあるんですよ。詩の内容も自分の経験を歌ってる曲が多いですね。僕の場合、以前経験した感情とかそういうことについてしか詳しく書けないんですよ。いろんな歌を今まで書いたんですけど、自分を表現できる方法として今も昔もそういうスタイルです。

──詩の書き方が文学っぽいかなって思ったんですけど、好きな作家とかはいたりしますか?

倉島:言葉の使い廻しとかそういうので影響を受けてる作家はいないですね。あんまり本を読む人間じゃないですし。でも、読んだ本には影響されてますね。高校の時に読んだ藤沢周平さんとか。

──あと、ノスタルジックみたいなものが・・・。

倉島:そうですね。追憶とかそういう意味でも、僕らが音楽をやっているところで一番大事にしているのが過去のことなんです。過去をひとつの思い出話として終わらせたくないんですよ。そこに自分がいて思い出があって今に至った自分とか感情を大事にして・・・。今の自分ってのを浮き彫りにするために、過去の風景とかが出て来るんですよね。それでいろんな人に自分達のたどってきた風景を見せることで、自分と重ねてもらうこともできるだろうし、批判してくれる人もいるだろうし、全部ウソがないってことでやってることなんです。

──最初に曲を聞いたときにヒリヒリした感じがしたんですよ。でも、やっぱりバンド的にはあまりイメージに限定されたくないって気持ちが強いですよね?

倉島:どう取ってもらっても全然いいですよ。ただ、ヒリヒリしている部分を隠すことが嫌なバンドなんです。そういう部分って隠そうと思えばいくらでも隠せるんですけど、そういう手法を取るよりはありのままの自分達を見たもらいたいんですよ。だから僕らとしてはバンドを評価されたイコール人間性を評価されるのと同じだと思ってますね。

──ってことは、アルバムとか作品って自分の存在証明みたいなものじゃないですか。今このアルバムを生み出して作品に対してどういう感想を持ってます?

倉島:個人個人あると思うんですけど、僕なんかは曲ができなくて悩んだ時期と重なったアルバムでもあるんで、大変だったけどやりきれたという満足感はありますね。自分の中であとあと聞いた時に恥ずかしくなっちゃう作品ってすごく嫌じゃないですか。でも、今回のアルバムはいい曲がたくさんできたんで、自分に自信がつきましたよ。うれしいですね。『キセキ』というタイトルでここに一枚刻めたというのが。足跡的に絶対消えることないものですからね。

宮下:僕はすごい大変でしたね。曲が生まれるのがちょっと遅かったりして、短い時間の中で考えたりしたんで難しかったです。でも、振り返ると1曲1曲すごいいいものになっているし、充実した日々でしたね。

島田:インディーの時のアルバム2枚と比べると、今回は1枚の中でいろんなことができたなと。音に対することだったり、聞こえ方とかプレー的なものとか、ひとつひとつ真剣に考えてたから新しいことがいろいろできたし、実際1枚フルでそのまま聞いたときに自分の中で成り立っていくものになっていると思ってます。

──そこで、今回の『キセキ』は青春がテーマについて書かれているのが多かったんで、みなさんの青春時代のお話を聞こうと思うんですが・・・。

島田:僕は遊びまくってましたね(笑)。バカなこといっぱいして・・・。

倉島:文章にできないぐらいやんちゃだったもんね。

島田:学校って縛られてるっていうイメージがすごくあるじゃないですか。それに反抗することがかっこいいと思ってたんです。でもけっこうみんなそうじゃないの?

倉島:う・・・ん・・・。ああゆうときは確かに青春かもしれないんだけど、だいたいその場のノリでやってるじゃないですか。だから、やったことは記憶に残っているんですけど、感情とかは薄かったりするんですよね。そう考えると、やっぱどっちかっていうとオレの青春は今かなと。

──やってることと考えが一致して・・・。

宮下:僕も今が青春ぽいかなって思いますね。昔のことってあんま覚えてないですよね。心に残るとかそういうことってなかった気がする。

倉島:印象的な出来事っていうのは、要所要所でそれぞれ覚えているけど・・・。その時の気持ちとかがね・・・。いろんな意味で自分に挑戦していましたしね・・・。これ以上は文章にできないです(笑)。

──そういえばツアーのタイトルも青春ですよね。『青春依存症』。でも、依存ってあまりいいイメージがないんですけど、これは意図的につけたんですか?

倉島:何かわからないものを追っかけてる・・・。青春依存症って何かしら精神病とかの一種だと思うんですよ。音楽やってて楽しいことばかりじゃないし、時期的には楽しいことのほうが少ない場合もありますしね。でも、そういう中で生きていても自分達がやっていることに夢中だったからそういうタイトルを付けたかったんですよ。

──でも、先ほど青春って言葉はあんまり好きじゃなかったみたいな話をされていましたが・・・。

倉島:今の年齢になって世間的には青春からかけ離れてみると遅咲きみたいな、青春っていうのをすんなり受け入れることができるようになったんです。

──青春の真っ只中にいたからってのがあるんじゃないですかね。

倉島:たぶん、背伸びしたかったんだよね。でもそれもひとつの青春だったんですよね。

──その青春依存症のツアーファイナルがシェルターで行われるんですが、意気込みとかあったりします?

倉島:去年は3本ツアーがあって3回ファイナルがあったんですけど、2003年になって今回新しい自分達を見つけられればいいな。今までとスタイルを変えるとかそういう意味ではなくて、すごくいろんなものをやりたい。ツアーでライブを重ねていくうちにいろんな事を吸収して、その集大成をファイナルで見せたいなっていうのが俺の思いなんですけど。

宮下:日々勉強なので楽しみながら気合いに満ちたライブにしたいですね。

島田:東京でワンマンって初めてなんですごい緊張すると思うんですよ。しゃべれなくなるかも・・・(笑)。それを克服することと(笑)、今回ツアーでも初めて行くところが何カ所かあるんで、初めてツアーに回ったときのことを全部思い出して新鮮な気持ちでできたらいいなと。ファイナルでは去年の3本と今年の青春依存症と全部ひっくるめて見たとき最高のものにしたいですね。

倉島:いっぱいの人に来て欲しいですね。でも、あんまりいっぱい来ると緊張しちゃうんですが・・・(笑)。たぶん、毎回毎回ツアーのクオリティーとか自分達の意識が上がり始めているんで、ケタハズレに上がってきている実感があるんで、今回のツアーはその4倍ぐらいいろんなことやりたいな。いろんな思い入れもあるし、今年最初のツアーだし。今年はいろいろたくらんでることもあったりして、そういうところでオフィシャルでやるのは一番最初のツアーなんでいいものにしたいなってのがすごくあります。

──ツアーでまわってきて、いろいろな地域のお客さんをシェルターに連れてくる感じで・・・。

宮下:がんばります!!

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