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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】水野晴郎(2002年10月号)- シベ超は僕の遺言

シベ超は僕の遺言

2002.10.01

水野閣下から直電が! 「『シベリア超特急3』が来年1月2日、シアターアプルで公開されるので、ロフトプラスワンでイベントをやりたいのですが。あと1月18日にはシアターアプルにて『シベリア超特急4』を舞台で一日だけやるんです」とのこと。もちろんですっ!とばかり10月19日に組みましたシベ超イベント。なんと今回は佐伯大尉役のボンちゃんこと西田和昭さんも一緒。これを記念して水野事務所までおしかけて色々うかがってみました!(text:斉藤友里子)

シリーズ構想、現在6作。 『4』は舞台。 『5』はアクション活劇 『6』は閣下の恋(!)もう墓石代もない!?

──現在、発表されている構想だけでもシリーズ6作。壮大さはもう日本のスターウォーズと言っても過言ではないですね。

水野晴郎(以下水野):いやいや、はははは(笑)。なんかねぇ、作っているうちにこれもあれもって欲張り過ぎちゃってねぇ。『4』は今、台本を書いている最中なんですが、『5』の方は実はもう脚本ができているんです。シベリア超特急の列車の中で、山下将軍が日本の軍の陰謀を察知します。それを防ぐために、狙われている奴を助けるんです……。その狙われている奴というのが誰かと言うと……実は若い歴史家なんです。ま、インディジョーンズです、ははは(笑)。

西田和昭(以下西田):といいますか、インディジョーンズのパクリです。

水野:源義経は生き延びてモンゴルへ渡り、ジンギスカンになったという説もありますでしょう。その謎を主人公の歴史家を追っているんです。そして色々と事件が展開してくのですが、軍に雇われた馬賊が登場します。その馬賊たちに歴史家が捕まってしまう。それを山下将軍は助けに向かう。飛行機で逃げるんですけどね、またそこで大変なことが起こって、飛行機は墜落して山にぶつかり爆発してしまう。しかし、その一歩手前でパラシュートで脱出するのですが、なんと穴が空いていて万里の長城に向かって落ちていってしまうんですね。

西田:ちゃんちゃらちゃーんちゃんちゃんちゃーん♪

水野:そして落ちた先がリアカーの上で、それに乗って万里の長城を滑り落ちていくというアクション連続。しかし飛行機アクションでは終わらないんですね。一方でも列車の中で話は展開します。まだ発表できないのですが、大スター二人の競演で、一人は山下将軍を狙う男ともう一人はその男の宿敵のアクション劇。やがて最終的にはその二つの軸は約束の地・満州で一緒になっていき、真犯人がわかるという構想です。

西田:ハイ、ざっと10億の映画ですね。これをどれだけ、予算を押さえるかが問題ですね。紙芝居でやりますよ。シベ超金太郎飴もそのために作ったんですから。

──活弁シベ超。いいですねぇ。

水野:はははは、もうウソばっかりこいつは(笑)

西田:ウソばっかりって、先生どうするんですか!? もう『1』『2』『3』を作って、老人ホームへ行く金も全部使った、宣伝費で墓石代もないんですよ!

水野:ないない。

西田:どうするんですか。

水野:そうねぇ、どうしましょう(笑)  

一同:

水野:それで、『6』なんですが「閣下の恋」というテーマです。山下将軍は若い頃、オーストリアで大使館の部下をやっていたんですね。その頃に大変お世話になって、かつまた大変愛し合った婦人が実際にいたんです。それをもとにして二人が激しい恋におちるんですけども、彼は軍の命令でオーストリアを離れなければいけないことに。そして月日はたち彼は大将になってシベリア超特急に乗る。そこで再会するんですねぇ。しかしドイツに占領されてしまったオーストリアにいた彼女は肉親を人質にとられてしかたなく、山下将軍を狙う刺客に。そして対決する二人、結末は……というお話です。そのご婦人を栗原小牧さん。

閣下のキスシーン!?

西田:栗原小牧さんと水野晴郎のキスシーンなんて、考えただけで……。ファンのホモの方、申し訳ござんせんけどね。相手は男ではないというのがね。そうそうホモ疑惑。私はどうしてそうなるかわかりませんよ。こんなに女好きな人を捕まえてねぇ。

水野:銀座のクラブの女の子なんか、怒ってきますよ。 いやぁでも、この年ですからそういったシーンはやりませんよ。若い人にやらせるつもりです。

西田:さぁ、そこで我がプロデューサー陣が白羽の矢が立てたのは貴花田。おにいちゃんの方。まず太っている。健康的な笑顔。福耳。そして、セリフが棒読み。これ重要です。これができる人がほんとにいないんですよねぇ。でも棒読みなんて言ってますけどね、これは本物の山下奉文閣下の言い方に本当にそっくりなんですって。山下閣下を知る七人の将校の方々にお会いしたのですが、その方々にも似てると言って頂いたくらい。思い出されて涙ぐまれてましてねぇ。それくらいそっくり。棒読みと言われるあの演技、実はわざとだったという……。

水野ワールドの魅力

西田:しかし、世の中って本当におかしいとつくづく思います。シベ超やってると。だって『1』でケチョンケチョンに言われて、それが逆にヒットに繋がった。ある評論家の先生が言ってましたけど、「世の中には理解されるに時間がかかる作品もある」って。

水野:『2001年宇宙の旅』なんかは封切り当初はさっぱりだったのが、ジワジワと上がってきて、後に大ヒット。後世まで残る作品として世間に認知された。『俺たちに明日はない』もそうでしたねぇ。

西田:『2001年~』と『俺たち~』が『シベ超』と一緒と言ってますね、閣下は。でも僕は、やっぱり『1』が好きなんですよ。水野ワールドの最高傑作。なぜかって言うと、子供がおもちゃで遊ぶ無心さってあるでしょう。あの無心さで『1』は撮ってる。ほんと頭にカメラをぶちこんだってくらい。この人、もう70歳を超えてるんですよ。それで青年のような心で映画を撮ってる。こんな純粋で無邪気な人、いますか? 明るさとパワー、そして何かを超越したオーラ。水野晴郎しか持ち得ない魅力で、『シベ超』は撮られているんです。いないですよ。この魅力がわかった人は水野ワールドファンになっちゃうんです。だからある面 『シベリア超特急』は『2001年~』と一緒と思ってますよ。

水野:僕自身も『1』が好きなんですねぇ。ものすごく思い入れがある。全シリーズそうなんですが、特に『1』は全てのカットに僕の好きな映画のテイストを入れてます。

──特にお好きな監督にヒッチコックやブライアン・デパルマがいらっしゃると思うのですが、画面 演出以外にもなにか影響を受けた面はあるのでしょうか。

西田:それについてはエピソードがありますよ。三田佳子さんが台本をお読みになった後、「水野さん、このセリフは一貫性がなくておかしいと思うの」っておしゃって。その時、MIKE MIZNOはなんて答えかというと。「知ってる? 三田ちゃん。イングッド・バーグマンがヒッチコックにそういうふうに言ったんだって。その時、ヒッチコックは『たかが映画じゃないか、イングリッド』って言ったんだって。僕は今、三田ちゃんに言いたいよ『たかが映画じゃないか、三田ちゃん』」って言ったんですねぇ。いやぁ、MIKE MIZNOかヒッチコックしかできない演出方法といいましょうか。

『シベリア超特急』は僕の遺言

──変な話ですが、70歳を超えられて何か後世に何かを残したい。そんなお気持ちで『シベリア超特急』を撮られているのでしょうか。

水野:はい、そういった気持ちを持って撮っているところがあります。僕の全てを、撮る映画に注ぎこみたいと常に思ってますから。こんな素晴らしい映画があるんだよっていうことを若い人に知ってもらいたいんでです。CGや驚くべきSFXも素晴らしいものなのですが、あれはあまり人の心を感じられない。やはり僕が好きな映画は人の心が感じられる映画なんです。そんな映画を知ってもらって、素晴らしい体験をもっともっと色々な人にしてもらいたいんです。そんなメッセージを僕は持って映画を撮っています。ですから、『シベリア超特急』は僕の遺言と言って間違いないです。

茶化されても気にならない

──そんな愛してやまない映画をご自分でお撮りになって、並々ならない愛情を注がれていると思うのですが。テレビなんかで茶化されたり嫌ではないんですか?

水野:映画(シベ超1)を観てもいないで、非道いことを言った批評家がいましたけど、その時は腹が立ちましたね。でもテレビで茶化されたりは気にならないですよ。それで映画を観てくれればいいわけですから。

──本当に映画を愛されているんですね。これからも是非、とり続けてください。

 水野:ありがとう。力のある限りとり続けたいですね。

──では、最後に一言。

水野:いやぁ、映画ってほんとうにいいもんですねぇ。それではまた『シベリア超特急3』でお会いしましょう。

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