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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】CICADA(2002年9月号)- CICADA 菓子に例えるなら、カールのような"飽きないもの"を作りたい

CICADA 菓子に例えるなら、カールのような“飽きないもの”を作りたい

2002.09.01

"新たな音の変態形の追求"と言うと何やら難解な音楽を連想してしまうが、CICADAの生み出す音楽はどこまでもキャッチーである。ハウスやテクノといったダンス・ミュージックを生音&人力で体現するCICADAの音楽性こそ、次世代を担う新たなスタンダードなのかもしれない。「4つ打ち地獄(でもキャッチー)」な仕上がりというアルバムを目下制作中のCICADAの頭脳、小川裕史氏に"こってりしながらあっさりと"話を訊いた。(interview:椎名宗之)

生身で生きているという時点で“ロック”なんです

──9月29日にロフトで行われるイヴェントの詳細は固まってきましたか?

小川:いや。東田(慎二/新宿ロフト店長)君と一緒にやろうとしていた企画なんですけど、セカンド・アルバムのレコーディングとか引越したりとかで(微笑)、僕が今全然余裕がなくて。ややこしいことがたくさんあるんで、もう今回は「君がやって!」みたいなことになってます。

──小川さんがリミックスに携わった縁のあるバンドやミュージシャンが登場したりとかは?

小川:関係ないですね。基本的には東田君のチョイスと、後はウチのレーベル絡みかなぁ…。

──改めてCICADAのコンセプトを教えて頂けますか。

小川:簡単に言えば、楽しさと新しさとアホらしさとのバランスかな。ロックをやっていく上でのね。まぁ、いろんな味が欲しいですから。

──プログラミングされたものを一度解体して生演奏で再構築するというのは拘りですよね。

小川:そうでもないですよ。その場凌ぎだから。ライヴなんかは特にその場凌ぎです(微笑)。

──でも『GIG-GIGGER-GIGGEST』でのライヴ音源は、どのトラックもその場凌ぎとは思えない完成度を誇ってますよね。

小川:ひとえに編集の成せる技でしょう。エディットがなかったらスカスカでつまらない。生音に拘りがあるというよりは“ライヴ感”ですよね、単純に。ライヴ=ロックって繋げることができると思うし。

──ジャンル分けは不毛ですけど、CICADAの音楽はよく「ポスト・ロック的だ」と評されることが多いじゃないですか。

小川 “ポスト・ロック”っていう言葉、ジャンル自体がアホらしい。生身で生きているという時点でロックなんですよ。「オマエはロックだろ?」「ロックじゃないだろ?」っていうのはもうどうでも良くて、どういう思考でどういう表現をしてもロックになっちゃうから、ライヴをやっている限りは。だから否定もしないし、肯定もしない。ロックという範疇に入っているというのもつまんないし。そういうボーダーレスの意識はもう何年も前から僕の中で起こっていることだし、区分けなんてどうでもいいんですよね。

──そういう小川さんの雑多的な傾向は昔からなんですか?

小川:昔からこういう傾向ですね。音楽の趣向もバラバラ。ちょこっとしたところに反応したら、そこをズルズルズル…と引き出していく感じで。

──イイとこ取りみたいな感じで?

小川:うん、イイとこ取りですね、多分。だって、耳に付くってことは新しくて刺激的なことだと思うし。一回取り込んで、自分のなかでミックスして出す。

──小川さんの活動自体が雑食的傾向にありますよね。音楽以外にも映画評論や文筆業、アートワークなど実に多彩 で。

小川:でも、今は音楽が一番かな。文筆業はさして活動してないし、映画も時々ですから。何でもいいんですよ、自分のアンテナに引っ掛かったものなら。逆に間口を狭くするほうがつまんないし。というか、間口を狭くはできないって、普通 に生きてたら。「俺、それは興味ないから」って言うほうがダサイし。そういうのはあり得ない。まぁ、余りに“広く浅く”ばかりだと、密度の濃い人がいなくなっちゃうんだけどね。

──小川さんのアンテナに引っ掛かるもののなかで「これだけは深く掘り下げてる!」というのは何なんですか?

小川:…音楽。まぁでも、全体ですね、やっぱり。殆ど均等ですよ。一番近くにあるのは、服飾と料理、インテリアとかの衣食住に絡むこと。音楽は娯楽として携わっているのが念頭にあるから、そういうのは当然としてチェックしてますけど。

──映画も音楽も小説も、娯楽はセパレートではないですもんね。根底で巧みにリンクしているし。

小川:うん。結局は衣食住にリンクしていくことが人に近付ける近道だと思うし、そういうところでいろんなコラボレーションが広範囲で始まってきてるからいいことだなと思いますよ。

こってりしながらあっさりとやっていきたい

──DMBQ(リミックス・アルバム『RESONATED』に収録)やDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(オムニバス・アルバム『ISOLATED AUDIO PLAYERS 2』に収録)などとのコラボレーションも盛んですが、今リミックスを手掛けてみたいバンドはいますか?

小川:よく知らないんですよね、どんなバンドがいるかとか。特に日本は殆ど知らない。何でも面 白いんじゃないですか? 皆“リミックス”とは言ってるけど、要は自分の曲にしてるだけだから、何だろうと構わないんですよ。だって、音の切れ端をちょっと取って、後は殆ど自分で一曲作るようなものだからね。

──今みたいに、プロ・トゥールズを使えば個人で自由自在に音楽を構築できる環境のなかで、あえて第三者の力を借りて、最後は人力で再構築するCICADAのスタンスは凄く特異ですよね。

小川:今作ってるアルバムは、更に激しいミックスになってるんですよ。この間なんかカラオケでしたからね。バックトラックを作って、それに乗せてギターを弾いているだけ。まだ時間は掛かりますけど、相当オリジナリティのあるものが出来ると思ってます。いわゆる“ロックンロール”という括りから見たら何をやっているのかさっぱり意味が判らないと思うけど、やっぱりクラブのほうが判りやすいというか、クラバーのほうがもっと柔軟ですよね。

──まぁ、ロックは良くも悪くも保守的なところがありますからね。

小川:うん、やっぱり“○○節”みたいなのがあるよね。

──今制作中のアルバムはいつ頃発表になるんですか?

小川:一応、11月には出す予定です。あと10日間で仕上げないといけない。

──どんな仕上がりになりそうですか?

小川:“4つ打ち地獄”ですね(微笑)。「4つ打ちのフリして何やってんだ、オマエは!?」みたいな。と同時に凄くキャッチーというか。やっぱり、耳に残るフックとかがないとやってる意味がないと思うし。消費者(リスナー)側と作り手の関係性をいつも凄く考えてるんですよ。例えばお菓子に例えるなら、サラッと作れば期間限定のお菓子くらいにはなるかもしれないけど、僕は出来たらカールのような味のロングセラーを作りたいんですよ。それが一時の流行りものだとしても、2~3年経っても「ゲッ! これヤベェじゃん!」って消費する人には感じて欲しいし。それが一番のコンセプトであるかもしれないですね。

──いわゆるスタンダードというか…。

小川:“飽きない”ということ。僕もいろんなCDを聴いてますけど、どれも結構希薄ですからね。サラッと聴いて「ああ、こんな感じか」っていうコンビニ感覚。密度が凄く薄い。皆同じようにプロ・トゥールズを使って、コンビニ的な音楽しか生み出せていない。

──皆が皆、同じ道具を使う以上、他とどう違いを付けるかというか、問われるのはその先のセンスですよね。

小川:結局、難しいことではないんですよ。逆にダサイのが露になるし、賢い人はどんな道具を使おうがちゃんと賢いから。やっぱり目の付け所しかないでしょう。その人の持つセンス以外の何物でもない。俺的な実感としては、音楽シーンのなかで自分がどんな立場に置かれているかをよく判っていないから、「早くスタンダードにして下さい」とメディアの方々に言いたい(微笑)。日本にもクラブ・ミュージックが浸透してきたけれども、まだまだそれは流行りであるユーロやトランス、ヒップホップみたいな形での浸食でしかないから。そういう部分共々頑張っていこうかなと。

──小川さんのなかでは、今の日本のクラブ・シーンが刹那的だという印象があるんですか?

小川:うん、やっぱりそうでしょうね。単純に金儲けだけだからね、皆。いや、トランスとかは面 白いですけどね、余りに酷すぎて(微笑)。

──例えば、浜崎あゆみの一連のリミックス曲なんかはどう思いますか?

小川:結構びっくりした。よく出来てる。やっぱりお金が掛かってるからね。

──「自分ならもっとこうするぞ!」みたいなところあります?

小川:実際にその状況に置かれてやってみないと判らないな。そういう妄想はしたことなかった。でもこれからはいろんなことをやってみたいですね。

──今、音楽以外にやってみたいことは?

小川:うーん、やりたいと思ったことは結構すぐにやってるんですよね…。やっぱり今は音楽に集中したいかな。こってりしながらあっさりとやっていきたい。そこがすべての基準ですね。間口は広くしておいて、深くハマるような仕掛けをそこかしこに散りばめて。そのバランスは凄く難しいけどね。

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