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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】What's Love?(2002年8月号)- いい音楽を作りたいってのが先にあった

いい音楽を作りたいってのが先にあった

2002.08.01

いいと思ったものを独自の解釈で自分達のものに...。それがWhat's Love?  どこか懐かしくもある彼らの曲には、正真正銘の日本人の血が流れていた!!! (interview:あらきちえ、やまだともこ)

スカに対する姿勢が<スカ帝国>

──最初のころの音楽性はどんな感じだったのですか? 
 
松本:ええ。でも、それは菅野さんの影響があってこそですよ。菅野さんがドラムじゃなけれれば、メタルだったかもしれないし。阿部君はジャズとかファンクとか好きなんですけど。3人の方向が全然違ったんですね。なんにも決まってなかったし見えていなかったけど、自分達の味、それぞれの味が発揮されないとつまらん!って思う人達、で菅野さんはレゲエとかスカへのこだわりがあって、一番音楽とかスタイルにこだわりがないのが俺なんですよ。グランジみたいなことがやりたくて東京に出てきたのはいいけど迷いがあった。俺本人はギターをガリガリやって、ボエ~って吠えたいかもしれんけど、マッツの歌はみんな楽しいと思うよ、喜んでくれると思うよ、って。俺はあくまで3人が、この3人だからできることっていうふうに考えていたから。
 
──スカって、ストイックに追求する人も沢山いるじゃないですか。初めてWhat's Love?見たとき、圧倒された反面、エンターテイメントバンドなのかなっていうのも正直あった。だけど無視できなかった(笑)。
 
松本:それはあるかもしんないですね。一応What's Love?はスカベースにしてるんですけど、スカコアのところにも持ってても、オーセンティックのほうに持ってっても正真正銘ではないでしょ。でもね、自分達のスカに対する姿勢が<スカ帝国>につながっているんですよ。だから、スカの雰囲気はあるけど、呼ぶメンツが全てスカでもないんですよ。
 

What's Love? のスカっていいなと思う

──What's Love?には歌謡の部分がありますね。 
 
松本:たとえば小学校の時とかに、普通の男の子がテレビを見て「沢田研二かっこいいなあ」って思うみたいに普通 に歌謡曲が好きだった。でも、中学校高校のときにロックに目覚めるわけですよ。ヘビメタとかハードロックとか憧れちゃう。そうなるとあんまり日本の音楽聞かなくなるんだけど、自分の裏の部分ではやっぱり聴いていて(笑)。レコード屋サンとかで中古100円や、3枚1000円とかのレコードをあさって。最初は、歌謡の部分はミュージシャンとか云々離れたところの個人的な俺の楽しみだったんですよ。で、今になってWhat's Love?の歌謡スカってなっているけど、最初のオリジナル曲を作ったときに、僕は初めて日本語の歌詞の歌を作った。スカが云々とかじゃなくて、まずメロディーを歌物として作ってみよた。それでできたものが「かえりみち」。そのメロディーが歌謡テイストだったんですよ。 
 
──歌謡を裏打ちにしちゃったら結構なんでもスカにできる安易さもありますよね。まぁ、スカにカバー曲が多いのもその為だと思いますが。でもWhat's Love?ってなんでもやっちゃうのねって思われちゃう、すれすれの所を来ている。そのバランス感覚が絶妙だなと。 
 
松本:俺は意識してないです。曲を作るのって俺はメロディーだけでアレンジとか考えないのよ。よっぽど自分の強い思いがないんだったら、なるたけギターのカッティングみたいなのも入れないで、メンバーに聞かせてそれで彼らが形にして、それぞれリズムつけていくんだけども、そこらへんが俺とスカの部分との共存で、菅野さんがかなり慎重にやっているね。そういう微妙なさじ加減かもしれないよね。メジャーデビューして1年で、自分達の音源を振り返ってみて、What's Love?のスカっていいなって自分で思った(笑)。未だに俺はスカとか沢山聞くリスナーじゃないから、さじ加減とかわからないんだけど。独特でしかもちゃんとスカとしても成立してておもしろいなって。今更言うのもなんだけど(笑)。
 

あくまで日本人、基本的にはグッドミュージック 

──スカのリズムはすごく力があるじゃないですか。そのリズムに大地から沸きあがってくる根っこがある歌詞が乗っかって、成立していると思うんですよ。例えば歌謡が日本のルーツミュージックだったとしたら、強いスカのリズムに乗っかってその歌謡を歌っているWhat's Love?の音楽は強力ですよね。 
 
松本:スカとかレゲエが好きな菅野さんにしてもファッションとしてのスカ、レゲエってあんまり好きじゃないみたいなのね。どっかで誤解とかもあるんだけど、本人達の租借力の広さとか、絶対マネだけではおわらせないというか。そういう感じがWhat's Love?でだと勝手に思っているんですが(笑)。
 
──私はWhat's Love?を何で無視できないんだろうって考えてみたところ、私が日本人だからかなって思う。 
 
松本:カレーライスにしても、日本なりに味付けして作り上げちゃう様な所が、実はがみんな好きだと思う。でもファッションだけにするほど本人達がやわじゃないというか、分達のフィルターの強さというのは非常に面 白いととらえてます。むしろ、本物のジャマイカンにもなろうと思っていないというか、あくまで日本人。しかも全くスカとか意識してないですよ。いい音楽を作りたいってのが先にあった、その後でWhat's Love?なりのスカとして消化出来れば良くて。基本的にはグッドミュージックであれば。 
 
──今回発売した「ヘッドライトが唄い出す」ですが、今までとメロディーが違う感じがしました。
 
松本:ちょっとGSっぽいかな。ちょうどリリースが夏だったっていうこともあって、ロックっぽさも感じてGSとロックの微妙なつながりみたいな。夏に向けて勢いあるやつを作ろうかって。夏と言えば海で、海と言えばサーフでしょうみたいなノリで。その上でバンド感みたいのが欲しかった。3人という少人数でやるなりの。そしたらどんどん、とげとげしい音色にになってたんですよ。今までのWhat's Love?ってほんわか加減が一つの味だったと思うけど、今回はちょっと新しいコワモテ風(笑)。 
 
──バンドサウンドにこだわったWhat's Love?ですが、マッツ歌謡ショー(※菅野さんがDJでヴァージョンをかけマッツがカラオケ形式で歌う。不定期ながら大好評)って(笑)。矛盾じゃないですか!
 
松本:そうねそうね、わりとストイックになりきれないのかも。基本的に楽しんでもらいたいってのはどっかにある。ライブで演奏するときも、人前でやっている以上はこれ見よがしに喜んでもらわないと具合悪くなっちゃうというか、これでよかったのかなって悩んじゃったりして。 
 
──簡単に言えばお調子者で貧乏性(失礼)。 
 
松本:そうだよ! わ~!! とか言われないとちゃんと仕事してるのかな?! って。
 
湿度の高い感じ
──マッツさん、底抜けに明るい歌詞は書きませんね。
 
松本:わりと歌詞を物語みたいに作るのが好きなんです。で、結局俺風の捉え方というかが出て来るのが面 白いでしょ。ことさら俺の言いたいことを言うぞ!みたいな風になると、また自分で気持ち悪くなるし。話を作ってるうちに結局俺らの曲はなんの曲にしても俺風の捉え方しか出来ないんだからさ。
 
──しかも登場人物がやたらに少ない。私小説みたいな感じのと、いてももう1人。
 
松本:そうね。俺だけか俺と誰かかってが多いですね。誰かに向けてっていうのが少なくて、誰かのことを考えてる俺の事みたいな。その中でも「ヘッドライト~」は男の子、対照的に「夏の恋なら」は主人公は女の子。ちょっとプレイボーイな彼氏に翻弄される女の子。といっても俺が想像する女の子なんですけど。
 
──でも、この詩を読んだときにカップルじゃないと思った。 
 
松本:だからまだ入り口なんですよ。野球で言うなら先行を取られてる。私、この人に心を奪われてるかもいまいましいみたいなね。変なこと言ってますかね(笑)。だから逆に男女逆にしてもかまわないんですけど。女側にリードを奪われている男の心境であってもいい。曲調を考えたときに女の子っぽい曲だったんで主人公は女だって。そこをわかってもらえるようにドレスっていう言葉を使ったんですが。
 
──マッツさんの考える女の子はビッチじゃないんですよね(笑)。 
 
松本:そうですね。清純派。
 
──スカは大概が決まってビッチじゃないですか。
 
松本:男主人公で女に向けて「このあばずれめ!」って(笑)。そういう感じがスカかなとは思うんですけど、あんまりないなぁ。だからそういう意味でもあんまり、俺らスカ文化に入ってないのかなって。ルーディーとか思ったことないし。俺ら今更いい年こいてルーディーとかってねえそれだったら、ワンピースとかさわやか感をWhat's Love?がやっている気持ち悪さっていうのが(笑)。なんかそのミスマッチというか、その感じも歌謡感を思って足りする。スカやってても正真正銘のスカじゃないずれさ加減とか。わたせせいぞうを狙ったつもりなのに違うぞっていうかんじとかね。ハワイアンやっても日本臭い、全然湿度の高い感じの気持ち悪いハワイアンになってるとか。 
 
──確かにWhat's Love?は湿度高いかもしれない。割と乾いた感じがスカのイメージだなんだけど。 
 
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