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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】dip(2001年10月号) - 限定したくない。俺の作った意味と違ったとしても、いい話

限定したくない。俺の作った意味と違ったとしても、いい話

2001.10.03

 ギターケースを背に現れた男は流れるようにそれを置いた。その置き方は雑でもなく、極めて丁寧でもなく慣れた手つきの、どきっとするミュージシャンのそれだった。そのギターが身から離れ、イスに座った彼は手元にある冊子をパラパラめくりはじめた。読んでるというより、視線をそこに置くためのようだった。

答え知ったところでなんになるの?

ヤマジ:目あわせないの気になる? 気にしないで、って言ってもあれか。ただ人見知りなだけだから。気にしないで、うん。

──いや、いいですよ。そのままで。気にはなりますけど。このあと練習とかあるんですか?

ヤマジ:全然。

──ギターケース、ギター入ってるんですよね。いつも持ち歩いてるんですか?

ヤマジ:ん? あ、ギターケース? なか、はいってるよ、ギター。けっこう、いつも持ってる。

──どこでも弾けるように?

ヤマジ:そう。弾きたくなったらいつでも弾けるように。弾きたいのになかったら、ヤじゃん。

 急にこちらをチラッとみて冊子に顔を再び落としたまま、口を開く。

ヤマジ:あと、俺、歌詞とか曲の説明すんの好きじゃないンだ。質問によるケド。 

 そう言って、目の前に出されたコーヒーに口をつけた。

──説明するのは無意味ってことですかね?

ヤマジ:狭くなんない? 「こうやって聞いてくれ」ってことになっちゃうじゃない。楽しみとっちゃうでしょ。だからあんまり説明したくない。普通のコト言ってケド。他の人ってバシっとキメ台詞用意してンの? そんなの自分の好きなように受け止めるもんじゃない。ギャグ言って、それはなんで面白いのか言ってるようなモンじゃん。勉強じゃないんだから、答え知ったところでなんになるの?

──音楽の受け取り方、いや物事の受け取り方はその人個人のものであって、誰かが決めることじゃないってことですか?

ヤマジ:そう。「曲を聴いてこういうふうに思ったんですけど」って友達とか人に教えられたりして「あ、そういう聴き方あるんだ」って気づくこともあるし、それは俺の作った意味と違ったとしても、いい話じゃん。

──自由を奪うから好きじゃない。

ヤマジ:だから俺、限定したくない。歌詞も曲も説明とかさ、ハッキリ説明できるよ。言いたくないだけで。曖昧なコト、表現してないよ、俺。性格でわかりにくくなってるけど。あとインタビューとか「これはこうなんですよね?」って聞かれても、その時々で違っちゃうじゃん。だから俺「そうです」って俺は言えない。

俺、人が思ってるほど、とじてない

 冊子に飽きてしまったのか、今度はボールペンを取り出して絵を描いている。

 話してるうちにテレビの話しになって、一瞬照れ笑いをした瞬間があった。

──以外な表情を見た気がします。あんまり笑わなそうな感じがしたもんで。

ヤマジ:俺、人が思ってるほど、とじてないと思うよ。「他人なんかカンケーねーよ」って常に言ってるようにみえてんのかな。俺そんなつもりないし、人と距離をとろうとかわざとしないし。ただほんと人見知りなだけで。常に人が自分のことどう思ってるか気になって考えちゃうし。みんなに気にすんなって言われるもん。「あんまり周りのこと気にすんな、気にすぎだよって。もっとヤマジはドーンとしてた方がいいんだよ」って。

いやでも、俺、今度から人の目をみて話そうと思ってる

 「ちょっとごめんね」とカバンやポケットを何かを探りはじめた。見つかったようで、ポケットからきれいな湾曲を描いてる金属製の酒瓶を取り出した。くっとのみはじめる。

ヤマジ:そんで? あ、最初のバンドの結成? dipの前のDIP the FLAGってバンドなんだけどね。俺から誘った。友達とかに演れる人聞いたりして。ツェッペリンとドアーズが合体したようなバンドやりたいんだよねつってスタジオ入ったんだけど。演ってみたら全然違った。ハハハ。こういう時ってカッコいいこと言った方がいいの?

──仰々しいこと言われると逆にさめたりしちゃうんで、自然な方がいいと思いますけど。

ヤマジ:あ、そう。いやでも、俺、今度から人の目をみて話そうと思ってる。抱負。抱負。きっとできないけど。みると緊張するから。気になっちゃうからみないようにしているんだけど。ははは。

 と言って金属の酒瓶に一口くちをつけて、ノドをコクリと言わせた。

 ロックなんて絶滅した、と聞いたことがある。

 でもそれは嘘だろう。dipとヤマジカズヒデを体験すれば、きっとそう思う。

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