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INTERVIEW

トップインタビューゆきみ - 自分が自分だから出会えた素敵なものって本物の財産

自分が自分だから出会えた素敵なものって本物の財産

2021.06.16

 あいくれのボーカル・ゆきみが2nd DEMO『ミス・ファンタジア』を6月9日にデジタルリリース。女性らしい目線や思考で描いたという4曲の制作過程や、コロナ禍での活動、今後の目標を語っていただいた。(interview:成宮アイコ)

「女性はこうあるべき」にとらわれず自由に歩いて行く

──2nd DEMO『ミス・ファンタジア』発売おめでとうございます!  ついに配信開始となりましたが、手応えやファンの方からの反応はいかがですか?

ゆきみ:ありがとうございます! リリースをわたし以上に喜んでくださっている方がたくさんいて、そういった声は本当に嬉しいですね。それに、有線やラジオなどで新しく出会ってくださった方もいるようで、今作を通じた再会や新しい出会いに感謝しています。

──収録された4曲はどのようにして選んだのでしょうか。

ゆきみ:今回は、女性らしい目線や思考で描いた4曲を選びました。ずっと紅一点のバンドで活動していたわたしにとってソロで活動するということは、要するに女一人になるということでもあるので、ソロだからこそできるテーマで楽曲を選ぶことにしました。

──『ミス・ファンタジア』という造語のタイトルが、言葉として印象的でした。

ゆきみ:前作の『オーバーチュアと約束』もそうなのですが、わたしの音楽のルーツになっているクラシック要素を含ませたくて。ファンタジアはクラシックでは幻想曲という意味なのですが、幻想曲は比較的自由な構想で作られる形式の曲なんです。女性らしい目線や思考で描くというテーマは、ただそれだけでは偏見を生んでしまう気がしたので、誰かの偏った価値観、「女性はこうあるべき」といった時代の風潮、そういったものにとらわれず、自由に歩いて行く女性のイメージを今回のタイトルに込めました。

──さきほどソロだからこそできるテーマとおっしゃられたように、自分だからこそという意味の目線、思考ということですよね。

自分が誇りを持って選択できるなにかを選ばないと納得できない

──1曲目の「アイスクリームのように」は、呼びかけに思えた「あなた、軽薄な人よ」に続くのがあなたへの批判ではなくて、「なぜこんなに傷だらけになっても辞められないんだ止められないんだ」という自己矛盾だったので、「お別れしないと駄目になってしまう」とわかっていながら会いに行ってしまう自分自身に向けて「あなたは軽薄な人」と言っているのかなとも思いました。

ゆきみ:すごい!(笑) 確かにそういう意味もあるのかもしれません! インタビューの中で自分の曲の自分でも気付かなかった一面に触れられるのって凄く面白い(笑)。本当におっしゃる通りで、恐らくこの曲の主人公は相手の駄目な部分だけじゃなく、自分の駄目な部分をちゃんと分かっているんですよね。ただ、恋の中で溺れかけていて、冷静さを欠いている。前を向きたい、進みたいと心では願うのに流されてしまう自分にもお別れしないとって思っているんだと思う……!

──「ミス・ドレスコードの夢」での「奇抜=凄いでもない」は、今現在こういった気持ちで苦しんでいるアーティストやアイドルがたくさんいるのではと思ったのですが、他人の印象を自身に押し付けられていると感じることはありますか。

ゆきみ:うーん、アーティストとして誰かになにかを押し付けられたと感じたことはないですね。表現する側も、それを聴いたり受け取ったりする側も基本的には自由だと思っているので。でも学校とか社会とか、そういうコミュニティの中だと「周りと同じ」を求められたり、かと思えば逆に「普通から逸脱したなにか」を求められたり……ってよくあることだと思うんですよね。普通だから良いわけではないし奇抜だからすごいわけでもない。結局、自分が誇りを持って選択できるなにかを選ばないと納得できないから、その後の歌詞で「さよなら体裁」と歌っています。窮屈な現状を打破して、より自由に、より素直に生きるイメージを表現できていたら嬉しいです。

──1LDK」は、曲調のせいか声のせいか、「君もわたしじゃない誰かに愛されるんだ」とか「大抵が終わりへ向かっているみたいで」と、終わりを前にした悲しい感情を歌っているのに、でもこれも新しいスタートだよと言われた気持ちになりました。どんなときにも光は差すというイメージを受けます。

ゆきみ:光と影を両方含んでいますよね。先ほども話したように受け取ってくださる方の自由なので、光の割合はその方の感性で決まると思っています。多分この曲は、記憶とか思い出みたいなものでできていて、ストーリーのほとんどが過去形なんです。でも、もし「あの時が一番素晴らしかった」って思っていたらあの歌詞にはならない。「あの時本当は不安だった」って歌えるのは、要するに今は前向きで、過去にとらわれていないからでもあると思うんです。分かりやすい言葉で希望が表現されているわけではないので、この曲の中に光が差すイメージを持ってもらえたのはすごく嬉しいです。

──「普通の人間」は、「ミス・ドレスコードの夢」にも通じる想いを感じました。アーティスト活動をしている人を、普通じゃない特別な才能や体験があった普通の人間ではないという想像をする人もいるのかなと思いますが葛藤はなかったですか。

ゆきみ:どうだろう……! そもそも何が普通なのかって人によって違うので、「普通」って曖昧な言葉ですが、わたしは自分自身に普通だなあって思うことはよくあるので、もしわたしのことを普通じゃないと感じている方がいるなら多少のギャップはあるかもしれないですね!でも音楽家としてそれは嬉しいことなんですけど!

──出だしから「普通の人間だそれがコンプレックス」と歌っていますが、最後の「普通の人間だから僕は君に出会えた」というのはだから音楽に出会えた、普通の人生の感情を歌っているんだという強い気持ちにも思いました。

ゆきみ:ありがとうございます! この歌詞における「君」は確かに、なんでも良いんです。音楽はもちろん、本とか映画とかアニメとかお店とか特定の誰かとか。自分に嫌気が差すような瞬間があっても、たとえつまらないと感じる日があったとしても、自分が自分だから出会えた素敵なものって本物の財産ですよね。

未来のために「今日できること」と向き合っていく

──コロナ禍でのレコーディングで苦労したことはありますか。

ゆきみ:苦労したという印象はなかったんですが、今回、ほとんどの方との打ち合わせがリモートだったし、テキストでのやりとりが基本だったので、齟齬がないように、というか……より感情が見えにくい環境だったので、無意識ですが、制作に関わってくださる方たちと気持ちよくお仕事ができるようにとは心がけていたかもしれません。

──ライブがなかなかしにくい状況で気持ちを維持するのは大変かと思うのですが、活動のなかで制作面でも精神面でも変化はありましたか?

ゆきみ:変化した部分は少なからずあったと思います。月に一本もライブがないなんてあり得ないことでしたからね。家にいる時間が増えたことで自分と向き合う時間も増えました。あと、前より家をきれいにするようになったかもしれない!(笑)モチベーションを維持しようと意識することは特にないんですが、今はSNSを通じてたくさんの人と繋がれる時代ですからね、コメントや反応が力になっているのは確かです。

──ステイホームの時期に、新しい趣味が増えたりしましたか?

ゆきみ:筋トレをするようになりました。朝ラジオ体操をしたり(笑)。あとはアニメを一気に見たり、毎日のように映画を観たりもしましたね。

──健康的!  この期間で筋トレを始めた方は多いみたいですね。コロナが終息したあとにやりたいことはありますか。

ゆきみ:ツアーをしたいです。日本に限らず、できれば海外でも。シンプルな観光とか旅行もしたいですね。とにかく今はそういう未来のために「今日できること」一つ一つと向き合っていくしかないので、想像を辞めずにワクワクしながら、音楽もそれ以外も頑張ろうと思っています。
 

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ゆきみ2nd DEMO
『ミス・ファンタジア』


2021.06.09(Wed)
Digital Release

amazonで購入

01. アイスクリームのように
prod. 加藤俊一
02. ミス・ドレスコードの夢
prod. junchai / HyperVideo2
03. 1LDK
prod. クロダセイイチ(Genius P.J's)
04. 普通の人間
prod.shushu

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