Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューGO-BANG'S 森若香織(Rooftop2015年5月号)【完全版】

音楽の妖精に導かれ、20年の時間と空間を越えて、最強のガールズバンド GO-BANG'Sが本格再始動!!

2015.05.01

 ポップでキュートでパンク!ガールズ・バンドとしての魅力を最高に詰め込んだGO-BANG'S(ゴーバンズ)は、忌野清志郎の推薦で札幌から東京へ進出し、1988年にメジャーデビュー。「あいにきて I・NEED・YOU!」などのヒット曲と共に80年代を代表するバンドとして活躍した。1994年の解散後、森若香織としてソロ活動を続けてきたが、ゴーバンズ25周年となる2013年に「ひとりGO-BANG'S宣言」をしてバンドを再始動。そして今年ついに久しぶりの新作『FAIRY BRAIN』をリリースした。ロフトとも長い付き合いの森若香織に新作のこと、そして初の小説「妖精頭脳」についてなど、お話を伺った。(INTERVIEW:加藤梅造)

ゴーバンズ・パワースポット説!?

 
──ゴーバンズはキャリアが長いのでどこから聞いたらいいか難しいんですが、だいぶ端折って2013年12月4日に行われたライブ「スペシャルGO-BANG'Sショー」で「ひとりゴーバンズ宣言」をした所から聞いてみたいと思います。
森若:あの時はゴーバンズ25周年のベスト盤を出すという企画があったので、リリース記念に何かできないかとレコード会社の人達といろいろ考えてるうちに「1人でゴーバンズを名乗るのはどうか?」と(笑)。「ああ、そういうバンドってあるよね〜」みたいな。
──むしろキャリアが長いバンドだとオリジナルメンバーが1人だけって普通に多いんじゃないですか。レインボーとかキング・クリムゾンとか。
森若:ゴーバンズという名前を憶えていてくれる人は沢山いるから、まあ屋号っていうか。メンバーは毎回違う場合もあるので「本日のゴーバンズ」でいいかな(笑)。
──「スペシャルGO-BANG'Sショー」ではベスト盤の曲をすべてやりましたが、やってみてどうでした?
森若:ゴーバンズの曲をあれだけたくさん歌ったのは久しぶりだったんです。自分でも驚いたんですが、すべてキーを下げなくても歌えたので「これは、まだ行けるな!」と(笑)。
──それは大きな転機になりました?
森若:実は、あの日のライブにゴーバンズのインディーズ時代のディレクターさんが観に来てくれたんです。当時はまだ若かったからできなかったことが多かったんですが、お互いそれなりに時を経てきて「今こそ、新曲やろうよ!」って盛り上がったの。私、ある意味こわいなと思うんですが、昔からゴーバンズを名乗った時って予想外の事が次々と起きるんです。そもそもデビューのきっかけになった忌野清志郎さんとの出会いもそうなんですが、自分の想像を遥かに越えた事態になる。これはもう「ゴーバンズ・パワースポット説」と言ってもいいんじゃねえ?って(笑)。ただ、いいことも悪いことも両極端なんですけどね。
 

「青い空」より「悩める夜」の方が好き

 
──今回特徴的なのは、ニューアルバムと同時期に初の小説『妖精頭脳』を出版されますよね。この小説はアルバムと同じ世界観を持っていて、アルバムをサウンドトラックとしても聴くことができるというコンセプトでもあります。
森若:実は小説の方を先に書いていたんです。5年前に出版社からお話をいただいてたんですが、全然書けなくて。その後にアルバムに取り掛かったので、タイトルを英語の『FAIRY BRAIN』にして、小説のフレーズの一部を歌詞にしたり、ストーリーをイメージして詞を書いたり。決して分かりやすい形ではないんですが、ここはゴーバニストの感性を信じて、全部を想像力でつなげて欲しいなと。ただCDはミュージシャンも含めみんなで作るものだけど、小説は1人で書く世界だから、より私の個人的な世界観になってますね。ファンタジー要素が強いし。
──詞を作るのと小説を書くのは違うものですか?
森若:もう全然違ったの!頭の中のものを言葉だけで表現するってすごいことだなと。言葉の力ってすごくて、暗いことを書いているとどんどんそこに引きずり込まれていくんです。だから小説家に自殺する人が多いのもわかる。小説家ってこんな人生なのか〜と思った(笑)。音楽の場合はネガティブな歌詞でもメロディー次第で明るくすることもできるじゃないですか。
──確かに。でも森若さんが暗い部分にどんどん引きずり込まれたような小説も読んでみたいですけどね。
森若:ああ、でもそういう文章を書く人はいっぱいいるから、私の場合はファンタジーやポップなものにしたいな。とは言ってもやっぱり毒はあるし、私も決していい人ってわけでもないから(笑)。ゴーバンズっていい人がやってる明るい音楽ではなく、底意地の悪い人がなぜか明るくやってるような世界観…じゃないかな?
──だからいいんですけどね。「青い空」より「悩める夜」の方が好きな森若さんが。
森若:私も青空好きだよ(笑)。でもそれって普通のことじゃん。決して変わったことを狙ってるわけじゃなくて、自分が素直に「ああ、いいな!」って思ったものが、周りの誰も知らなくて「あれ…?」みたいな。私、そういう人生なんです(笑)。でもたま〜に同じものを「いいよね!」って言ってくれる人に出会うじゃないですか。その時の嬉しさっていったら! もうそれで友達だよね(笑)。特殊な友達だけど。
──まあ、ライブハウスも特殊な友達を作る場所だとは思います。
森若:そういう人生だともう覚悟を決めていくしかないでしょ。それをヘタにみんなに好かれようとすると大惨事になるから! たとえ『妖精頭脳』という言葉を見て「えっ意味わかんない」って思う人が多くても、中には「何だろう?」って興味を持ってくれる人もいると思う。『漂流教室』みたいな(笑)。
 

一番しっくりきた言葉が、自分でもまさかの「ありがとう」

 
──アルバムの曲について聞かせて下さい。まず1曲目『2winkle』と最後の曲『Fairy Dance』は対になってるイメージですよね。
森若:『2winkle』に出てくる妖精はティンカーベルみたいなものではなく、いろんなものが実は妖精だったというイメージなんです。それが2匹の動物で、過去に死んだ者と今生きてる者がリンクしている。前に私がチワワを2匹飼っていて、どちらも死んじゃったんだけど、その時に考えたのが、なんとかその者達と繋がる方法はないのかと。目には見えないけどここにいる感じ、それってどういう感じなんだろう? それが現れるとどうなるんだろう? とかいろいろ。
──『Fairy Dance』の歌詞に「悲しみの中でたった一つだけ光るものを見つけよう」とありますが、それは光として見えるもの?
森若:そうですね。悲しい時って絶望で真っ暗闇なんですが、しばらくすると光が見えてきて、そこからまた始めようとしますよね。私は今回、ゴーバンズの新しい曲を作るにあたって、もう暗い曲は作りたくなかったんです。もちろん毒はあっていいんだけど、ありのままの感情で作ると文句とか悪口とかバンバン言っちゃうから、今回はそれを越えた所で、歌ったら元気になるような曲を作ろうと。そうじゃないともうやってられないなって(笑)。
──2曲目『サンキューパンキュー』はある意味アルバムのリード曲、テーマ曲でもありますよね。
森若:20年ぶりにゴーバンズとしての新曲を出す時に、どんな感じのものがいいのか考えて。最初に曲のタイトルを決めるんですが、いろいろな言葉をノートに書きながら、その中で一番しっくりきた言葉が、自分でもまさかの「ありがとう」だったの。もうこれ以外の言葉では物足りなくて、すべての人達、すべての事柄に向けてワンワードで表そうとした時、今こそこの言葉がぴったりだなって。これだけたくさんの曲を作ってきたのに、今まで「ありがとう」をテーマにした曲はなかったんです。とはいえ、いきなり私がいい人ぶって「ありがとう!」って言っても絶対無理っと思ったので、じゃあゴーバンズ流に「ありがとう」を伝える言葉として「サンキューパンキュー」がいいかなと。
──「ありがとう」と言われれば大抵は嬉しいですし、いい言葉ですよね。
森若:なんで他では物足りないのかを考えたんですが、やっぱり「ありがとう」という言葉にはいくらでも気持ちを込めることができるなと。それで歌詞の中に「収納は無限大」と入れたんですが、この一言にすべてを入れることができるすごい言葉なんだなって。「あいにきて I・NEED・YOU!」という言葉は20代の私が言うのはいいけど、今の私が言ったら「えっ?」ってなるじゃないですか。今、私が言うべきメッセージはやっぱり「ありがとう」で、たぶん聞いた人も「ああ、それはわざわざどうも」って感じに割としっくりくるんじゃないかな(笑)。
──そういう意味では『ロックロマンス』も今だから歌える曲ですよね。
森若:この曲は、昔の『ざまぁカンカン娘』や『あいにきて I・NEED・YOU!』で歌ったことに筋を通している感じで、完全にゴーバニストに向けて書いてます。「夢は叶えるために見るものよ」と言ってから何十年もたった後のそれに対する落とし前、ですね。「あいにきて、あいにきて」ってうるさいぐらいに歌ってた私が「じゃあ、私から会いにいきまーす」って(笑)。時間を越えるとか、過去と未来が同じ場所に行く感覚を表現したかった。全く違う環境にいる接点のない人達がつながっていく感じ、これは全部妖精の仕業みたいな。でも今ライブに向けてリハをやってるんですが、今の曲と昔の曲に全然違和感がないんです。なんかすんなりつながっていく。この感じは何だろう?(笑)
──今作は「時間」が1つのキーワードだと思いますが、『Wheel of Fortune』では「同じ瞬間に生きる奇跡」という言葉に表れてます。
森若:考えてみたらすごい奇跡だと思うんです。ずっと離れていてもまた何かのタイミングで会うこととか、普段あたり前のように起きていることに対して「ちょっと待って、これは何だろう?」といちいち考えるということをここ何年かやっていて、そんな思いを曲にしました。へんな話ですが、ゴーバンズは私の中で全く過去のものだったのが、レコード会社の人や聴いてくれているファンの方の間でゴーバンズは動いていて、それが不思議な感じだったんです。しかも20年もかけて。
 
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FAIRY BRAIN
GO-BANG'S

2015年3月3日(火)発売
SCLX-2026(PPTF-8073)
1,800円(税抜)

amazonで購入

[収録曲]
1.2winkle
2.サンキューパンキュー
3.ラブリーダイナソー
4.JoyEnjoy
5.ロックロマンス
6.Wheel of Fortune
7.Fairy Dance
※Amazon、およびiTunesにて取り扱い

小説『妖精頭脳』

2015年4月23日(木)発売
森若香織(GO-BANG'S)/著
発行元:(株)学研パブリッシング
価格:1,400円(税抜)
判型・体裁:四六判・ソフトカバー・320頁

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LIVE INFOライブ情報

<FAIRY BRAIN NIGHT~『フェアリーブレイン&妖精頭脳』発売記念ライブ~>
2015年5月29日(金)@渋谷WWW
OPEN 19:00 START 19:30
前売/当日:4,500円(スタンディング/ドリンク別/税込)
・オフィシャル・ホームページ先行チケット発売中
受付期間:4月24日(金)23:59まで
ローソンチケット 0570-084-003(Lコード:77986)
※規定枚数に達し次第受付を終了致します。
[問] ローソンチケット(電話:0570-000-777/10:00~20:00)
・プレイガイド一般発売
4月25日(土)10:00~チケットぴあ(Pコード:262-767)/イープラスにて発売
 
<『妖精頭脳』発刊記念 GO-BANG'S森若香織 ミニライブ&サイン会 in TSUTAYA TOKYO ROPPONGI>
2015年5月10日(日)@TSUTAYA TOKYO ROPPONGI 2Fイベントスペース
OPEN 12:45 START 13:00
[問]TSUTAYA TOKYO ROPPONGI TEL:03-5775-1515
 
<GO-BANG’Sオリジナルアルバム&小説リリース記念ライブ>
2015年5月3日(日)香椎浜イオンモール
2015年5月6日(水)トレッサ綱島
2015年5月16日(土)ダイナシティ小田原
※全て観覧無料/会場で対象商品お買い上げの方にサイン会実施
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